【速報】カンヌライオンズ2024「Classic」部門グランプリ受賞作品まとめ
2024年6月にフランス・カンヌで開催された「Cannes Lions 2024」。映像やグラフィックをはじめとした王道の広告領域において高いクラフト力やマーケティング効果を賞賛する「Classic」部門において、映像が持つ魅力を最大限引き出した作品を評価する「Film Lions」、OOHの新たな可能性を見出した作品を評価する「Outdoor Lions」、雑誌や新聞をはじめとしたプリント媒体において斬新な表現手法を生み出した作品を評価する「Print & Publishing Lions」、音声メディアを通じて多くの人の注目を得た作品を評価する「Audio & Radio Lions」の4つの賞におけるグランプリをご紹介します。
Film Lions
Play it Safe(Sydney Opera House)
2023年に竣工50周年を迎えたシドニーのランドマーク・シドニーオペラハウスが公開した記念動画が見事グランプリを受賞しました。イギリス生まれのオーストラリア人で、世界中で高い人気を誇るコメディアンであり俳優でもあるTim Minchinが作詞作曲したオリジナルの楽曲に合わせて、本人を含む大勢のパフォーマーたちが出演する映像美が評価へとつながったようです。
“Play it Safe(安全な道)”というタイトルの動画では、Tim Minchinが画面に向かって奇抜でエキサイティングな人生を送るすべての人を応援する力強いメッセージが込められた歌を歌い上げる様子が紹介されています。エンターテイメントの聖地でもありこれまで多くの才能を輩出してきたシドニーオペラハウスの魅力をすべて詰め込んだと言っても過言ではないほどにパワフルで楽しい映像で、カットインとして過去のシドニーオペラハウスの様子も差し込むことで全体にメリハリを効かせた構成となっています。
YouTube上での再生回数自体は33万回ほど(6月23日現在)で決して多くの人に見られた映像だとは言えないものの、マーケティング効果以上に映像としての完成度の高さや美しさを評価するFilm部門だからこそその高い芸術性が決定打となり受賞にいたったのではないでしょうか。
WoMen’s Football(Orange)
Entertainment Lions for Sportでもグランプリを受賞したフランスの通信会社・Orangeの事例が見事Film Lionsでもグランプリに輝き、2冠を達成しました。
2023年に開催されたFIFA女子ワールドカップのタイミングに合わせて公開された動画では、サッカー男子フランス代表の選手たちが華麗なパス回しやフィジカルを発揮して美しいゴールを決めるシーンが紹介されていた……と思いきや、実はすべて女子フランス代表選手の動きに上からVFXを重ねた合成映像だったのです。
男子サッカーに比べて著しく低い知名度と人気に悩む女子サッカーの魅力を最大限描きつつ、もはや比較対象ではなくどちらも面白いスポーツであるという見せ方をすることで、誰も傷つけることなく女子スポーツの人気を向上させることに成功しました。5,000万ものいいねを獲得した動画はフランス広告界史上最もバズった動画として、最終的には女子スポーツの変遷を教えるための教育ツールとしても活用されるに至りました。
斬新なVFXの活用方法と、1本の映像で多くの人を巻き込むことに成功したことが評価され受賞へとつながったようです。
Outdoor Lions
Find Your Summer(Magnum)
世界中の国と地域で販売されているユニリーバのアイスクリームブランド・Magnumがイギリスで公開したOOHとデジタルサイネージ施策が見事グランプリの座を手にしました。
長い冬と短い日照時間が特徴的なイギリスの気候は、多くのアイスクリームメーカーにとっては大きな逆風です。ただでさえ寒くて売上が下がる冬が長引けば長引くほど国民の心は冷たいアイスクリームから離れていってしまう……そんな状況を少しでも変えようと試みたのがMagnumでした。モノクロのシンプルな構成で街中に張り出されたOOHには“Find Your Summer(あなたの夏を見つけよう)”というキャッチコピーが書かれており、撮影に際しては人工的な照明を当てるのではなくリアルな日差しが差し込む瞬間を狙ったのです。
同時に公開されたデジタルサイネージではビッグデータを活用することで掲出場所の近くでいつ太陽光を浴びることができるのかを表示。専用アプリをダウンロードした人には限定の割引クーポンを配り、長い冬の間に一瞬だけ差し込む“夏”と一緒にMagnumを楽しむ機会を創出した施策は、ユーザーインサイトを的確に捉えたアウトプットにこだわった点が評価されグランプリの座を手にすることができたようです。
Print & Publishing Lions
Recycle Me(Coca-Cola)
缶の積極的なリサイクルを呼びかけたコカ・コーラのプリント施策が、見事グランプリに輝きました。
2025年までにすべての商品をリサイクル可能なパッケージに切り替えると宣言しているコカ・コーラですが、どれだけ企業側が努力をしようとユーザー側の協力なくしてリサイクルのループを実現することはできません。そこで1人でも多くのユーザーに飲み終わった缶をリサイクルしてもらうため、厳格なブランドガイドラインによって見せ方のルールが決まっている自社のロゴをあえて“破壊”することに踏み切ったのです。
施策の内容としては、人の手やプレス機を使って半分潰した空き缶からコカ・コーラのロゴを画像データとして抜き出し、それをそのままプリント広告として出稿したのです。潰し方によってロゴの見え方が変わってしまうため実際に公開されたビジュアルは数えきれないほどのバリエーションがあり、徹底したメッセージ訴求と、高い認知度を誇るからこそ厳しいブランドガイドラインが敷かれている自社のロゴをあえて崩した勇気が評価へとつながったようです。
Audio & Radio Lions
The Misheard Version(Specsavers)
PR Lionsでもグランプリを受賞したSpec Saversの事例が見事Audio & Radio Lionsでもグランプリに輝き、2冠を達成しました。イギリスを中心にメガネを販売する大手小売会社のSpecsaversは、商品の販売以外にも視力検査や聴力検査をはじめとしたサービスも提供しています。日本では健康診断の一環として多くの人が受けている聴力検査ですが、イギリスではあまり浸透しておらず、特に年齢層が上がるにつれて“年をとっていると感じたくないから”という理由だけで受診しない人も一定数いると言われています。そんな状況を変えるためにSpecsaversが行ったのは、イギリス中を巻き込んだ壮大な“聴力検査どっきり”でした。
英語圏で最も有名なミームになってしまったと言っても過言ではない歌手・Rick Astleyの名曲Never Gonna Give You Upは、とにかく空耳が多い曲として知られています。本来の歌詞とは違う言葉に聞こえてしまう、という特徴を聴力検査と繋げようと試みたSpecsaversは、なんとあえて正しい歌詞と間違った歌詞を置き換えたバージョンをRick Astley本人に再録してもらうことに。
聴力検査の啓発を目的としたキャンペーンであるということは一切伝えることなく、SNS上で大きな話題を生みました。結果的にYouTube上に公開された動画は瞬く間に2,000万回再生を突破し、Specsaversの聴力検査の予約数は1,220%も上昇。グーグルの検索ワードの最上位に“聴力検査”が挙がるなど、文字通り国中を巻き込んだ盛大な実験が完成したのでした。インターネットミームの文脈をしっかりと理解した上であえて書き下ろしの楽曲ではなく既存の楽曲の録り直しという手法から絶大な成果を導き出した点が評価され、見事グランプリの座を手にすることができたようです。
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