医療従事者へのサラダの無償提供「CRISP CONNECT」実施に込めた思いとは?

Case:クリスプ「CRISP SALAD WORKS」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・PR事例の裏側を、担当者へのインタビューを通し明らかにする連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、株式会社クリスプが運営するカスタムサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS」の医療従事者への支援を取り上げます。

「CRISP SALAD WORKS」はまず、3月25日より全14店にて「新型コロナウイルスと闘う全ての医療従事者と病院勤務者」向けのサラダの無償提供を開始しました。これは公式モバイルオーダーアプリ「クリスプAPP」から事前に店舗とメニューを選択、特定のプロモーションコードを入力すると無料となり、店舗でサラダをピックアップする際にID確認を行った形。

結果、6日間で2,296食(同社が運営する 「R PIZZA」での無償提供を含む)を提供。さらに、4月6日から「新型コロナウイルスと闘う医療従事者・病院勤務者を支援する活動」である「CRISP CONNECT」を立ち上げました。

「CRISP CONNECT」コミュニティメンバーによるSlackの立ち上げや、CAMPFIREを通した寄付を通して「CRISP CONNECT」への支援募集などを展開するとともに、東京都および神奈川県東部における前線の医療現場にサラダを無償提供・配達を実施。5月6日現在、提供したサラダは13,445食にのぼります。

これらの取り組みに込めた思いについて、株式会社クリスプ 代表取締役 宮野浩史さんに、メールインタビューを実施しました。

店頭での提供からプロジェクト立ち上げへ 医療従事者への支援を拡大

―まず、医療従事者の支援という発想はどのように生まれたのでしょうか?

欧米では、災害時などに医療従事者や警察官などに市民が感謝の気持ちを表す文化があります。私自身アメリカで生活していたこともあり、自然と最前線で闘っている医療従事者への支援をする考えに至りました。

―店舗での無償提供時、御社に寄せられた声や店頭でかけられた声などで、印象的なものはありましたか?また、この時の実施の成果はどのようなものでしたか。

「応援してくれている人がいると思うと本当に嬉しい」と医療従事者の方に非常に喜んでくださいました。また、ある医療従事者の方からは「クリスプのサラダが食べられたから毎日忙しくてぴりぴりしたムードが職場にあったけど、自分も誰かに優しくしたいと思い、スタッフルームにいい匂いのするソープをおいたらみんな笑顔になったんですよ」というエピソードを教えてくださいました。さらに、この活動を始めて1週間くらいで、ボランティアや寄付のお申し出の問い合わせが30件ほどありました。

―その後、「CRISP CONNECT」の設立に続いた経緯を教えてください。

社会的に店舗に人が集まることを避けた方がいいフェーズになり、私たちも3月31日から「CRISP SALAD WORKS」全店をテイクアウトとデリバリーのみのGRAB-AND-GO店舗へ移行させました。その後、4月7日に緊急事態宣言が発令され、私たちも9日から「CRISP SALAD WORKS」全店を臨時休業することにしました。

一方で、医療関係者の人も状況が深刻になるにつれ、店舗に来られなくなっている状況にありました。「自分が感染させてしまうリスクがあるのでお店に行けない」という声も大きくなる中で「もし可能なら、届けてもらえたら嬉しい」というご要望もいただいていました。

どうやったらそれが実現できるだろうか。そう考えていたとき「私も何か力になれませんか」「ぜひ寄付させてください」と30人くらいの人からメールが届くなど、人がどんどんと集まっているということに気がついたのです。

最初は、クリスプだけでできることをやっていこうと考えていました。もちろん寄付を受け付けるつもりもありませんでした。しかし、それでは活動に限界があるのも事実です。また、その頃には100件近い医療機関から問い合わせも来ていました。片や、手伝いたいという人も増えていました。ならば、私たちだけでなくいろいろな人の力を借りてもっと大きな活動にしていこうと。そちらの方が医療機関で働く人をもっと大規模に支援できると思い、「CRISP CONNECT」を立ち上げました。

SlackやCAMPFIREを活用

―「CRISP CONNECT」ではSlackやCAMPFIREといったサービスも活用されていますが、これらのサービスを活用するメリットについて教えてください。

私だけではできることに限りがありますので、できるだけ多くの方の協力を頂きたい、活動を知っていただきたいと思い、無料で始められるSlackにクリスプスタッフとボランティアの方のコミュティスペースを作りました。また、コロナ対策として無料でプロジェクトを掲載していただけるというCAMPFIREでは気軽に寄付ができるように750円からのリターンを用意しました。

―現在、ボランティアメンバーの方からのアイデアなども集まってきていますでしょうか?

はい、活動をより多くの方に知っていただくためにプロモーション動画を撮影したり、サラダを召し上がった医療従事者の方からのコメントが支援者たちに伝わるように、SNSを活用した仕組みなど様々なアイデアをいただき、順次形にしていっています。

―届ける先の医療機関はどのように開拓されているのでしょうか。また、現場で寄せられる印象的な声などがありましたらお教えください。

元々はクリスプの顧客である医療従事者の方からリクエストを受け、その中から可能な限り順次対応しています。サラダを受け取った方からは「現場は常に緊張感があり逼迫した雰囲気だがサラダを食べるとホッとした気持ちになれる」「店舗で無償提供をしていた時も利用したかったが、仕事が忙しくなかなかお店までいけなかったのでうれしい」「ニュースでクリスプコネクトの活動を知って、うちの病院にもこないかなと思っていたら翌日からサラダが届くようになりすごく嬉しかった」などの声が寄せられています。

―一連の取り組みがテレビでも多く取り上げられていますが、メディア側からはどのような点に関心を持たれている印象でしょうか?

なぜ、医療従事者への支援にしたのか?決断と行動がかなりスピーディだが、なぜそれが可能なのか?働いているスタッフはどんな想いで働いているの?など、といった点です。

―また、今回の取り組みに限らず企業全体について、宮野さま自らnoteを活用し発信されていますが、こちらはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

元々、noteやSNSで、PRとは別に発信をしようと思ってやっていました。「CRISP SALAD WORKS」は今でも尖ったブランドではあるのですが、自分のイメージや世界観をうまく言葉にできずブランドとして整合性がなくなってきてしまったと実はここ最近感じていたのです。そこで、リブランディングするにあたって、まずは自分の考え・ブランドの本質的な部分を言葉にして社内外へ積極的に発信しようと取り組んでいます。

―最後に、今後の展開予定について教えていただけますか?

まずは、一人でも多くの医療従事者へサラダを届けたいです。一週間後、一カ月後ではなく、今日、少しでも明るいニュースを届けられるように取り組んでいきたいと考えています。クリスプのサラダを通して、最前線で働く医療従事者の方が少しでもポジティブな気持ちになってくれたらうれしいです。

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