もしも“木”がなかったら… 悲しい結末の童話で訴えるマレーシアの森林保護啓発キャンペーン
Case: Unfortunate Tales of a Treeless World
豊かな熱帯雨林を有するマレーシア。ところが1980年代頃から始まった大規模な森林伐採によって、現在ではその半分以上が消失してしまい、生態系にも深刻な影響を与えているのだそうです。
この現状を国民に広く知ってもらい、“森を守るためのアクションを共に起こそう”と呼びかけるため、同国最大規模の自然環境保全団体・Malaysian Nature Society(MNS)が実施した啓発キャンペーンをご紹介します。
MNSが目を付けたのは、老若男女誰もが知る、ピノキオ、赤ずきん、トロイの木馬、ターザンといった、“木”が重要な役割を果たす童話。この4つの物語を、“もしも木がなくなったら”という仮定に基づいて作り変えて、HP上で公開したのです。
『Tinoccio』(ピノキオより)
木がなかったため、ブリキでできた“ティノキオ”。うそをついたため伸びた鼻が、自分を作ってくれたゼペットじいさんの心臓を突きさして殺してしまいました。
『A Red Bloody Meal』(赤ずきんより)
森の向こう側に住むおばあさんにケーキを届ける途中、悪いオオカミに見つかってしまった赤ずきん。必死で逃げますが、木がほとんどなくなった森には、身を隠す場所がなく、とうとうオオカミの鋭い牙の餌食になってしまったのでした。
『The Trojan Oven』(トロイの木馬より)
トロイア軍を攻略するため、ギリシャ軍は人が隠れることのできる巨大な木馬を作ろうとするも、木材がありません。仕方なく銅を使ったところ、照り付ける太陽の熱で内部は地獄のような暑さに。耐えきれなくなった兵士たちは表に飛び出し、全員トロイア軍に捕らえられて、処刑されてしまいました。
『The King Of The Concrete Jungle And His Electrifying Tale』(ターザンより)
森林伐採により、森を失ったジャングルの王・ターザン。冷たいコンクリートの世界で、蔦だと思って握ったのは、電線だったのです。ターザンが立ち上がることは、二度とありませんでした。
何ともシュールな内容ですが、これらの物語を通じてMNSが訴えているのは、木の無い世界のおとぎ話がハッピーエンドにならなかったように、このまま環境破壊が続けば、私たちの未来も悲惨なものになってしまうだろう、ということ。
本キャンペーンは、オンライン上のコンテンツのほか、ポスターを制作してショッピングモールに掲示したり、オリジナルノートやサウンドトラックを販売するなど、多角的に展開。
その結果、わずか数日で22,000人にリーチしたほか、45,000リンギット(約116万円)が寄せられ、大きな注目を集めることに成功しました。MNSでは、“緑を育て、この悲しいストーリーの結末をあなたが変えて下さい”と呼びかけています。
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