デジタル全盛の時代にリアルで物語を届ける 天狼院書店の本気の演劇戦略

書店の数が減り続けるなか、天狼院書店が新たな取り組みとして演劇プロジェクト『劇場版 百秘本物語』を発表しました。

これは同店がYouTubeなどで展開してきたショートムービー『百秘本物語』の“解決編”にあたるもので、2025年7月17日(木)から渋谷・天狼院カフェSHIBUYAにて上演。長年人気の「秘本」シリーズを軸に「映画×演劇」の形式で物語をリアルに体験できる構成となっています。

書店が演劇を上演する理由とは?

「天狼院書店」といえば本の販売だけでなく、ライティングやビジネススキル、AI活用に関する講座など“知の体験”を通じて人生に変化を与える、というミッションを掲げてきました。近年では特に「AI系講座」に注力し、初級者から上級者まで幅広い層に対応するプログラムを展開。オンラインやアーカイブ受講も可能なスタイルで、全国から多くの参加者を集めています。

一方で代表の三浦氏はこう語ります。「AIやデジタル優位の時代だからこそ、“アナログ”な体験が再び価値を持つ」。この言葉こそが、今回の演劇プロジェクトの根底にある思想です。

演劇とは、俳優の熱量、観客の息遣い、会場の空気すべてが混ざり合って生まれる一回性の強いアート体験。あえて非デジタルの手法を選ぶことで、今の時代におけリアルの尊さを再確認してもらいたい……その強い意志が、このプロジェクトには込められているのではないでしょうか。

「秘本」から「百秘本物語」へ。物語の拡張がブランド体験を変える

「秘本」とはタイトルや内容を一切明かさず3つのルールを守れる人だけが購入できる、天狼院書店独自の書籍シリーズ。選書はすべて店主の三浦氏によるもので、黒いカバーに包まれた“謎の本”は多くの読者に愛されてきました。

その拡張として登場したのが「百秘本」。100冊の選書にインスパイアされたショートムービーが制作され、それが『百秘本物語』としてYouTubeで展開。演劇はその最終章ともいえる位置づけであり、物語の完結編が観客の前で語られる瞬間になります。

しかも今回は「映画×演劇」の融合。ショートムービーと演劇を合わせて観ることで、より深く物語世界に没入できるよう構成されています。この試みは書店が単なる本の販売場所ではなく、「物語を届ける拠点」であることをより鮮明に印象づけてくれそうです。

「AIに強い書店」だからこそ挑む逆張り戦略

注目したいのは、天狼院書店がAIやデジタルの最前線を知る存在であるというところ。ChatGPTを用いたライティング講座や複数のAIを組み合わせたクリエイティブ講座など、最新技術を積極的に取り入れる姿勢を持ちながら、今回は真逆とも言える“演劇”という領域に踏み込んでいます。

この「デジタルとアナログの両軸戦略」は、単なる逆張りではありません。リアルな体験の価値が再評価されている今だからこそ、書店に足を運ぶ意味や本を読むことの本質的な面白さを改めて伝えたい。その想いが今回のプロジェクト全体を貫いています。

書店の未来を拓く、体験の設計力

今回の演劇上演は、書店という枠を超えた挑戦でありながら書店という存在の本質を改めて問うような、強いメッセージを内包している施策。リアルにしか得られないものが、確かにある。そのことを思い出させてくれるプロジェクトと言えるのではないでしょうか。

その他のブランディング事例についてはこちら
https://predge.jp/search/post?genre=27
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る