カラフルでポップな生理用品をコミュニケーションツールに?|担当者に訊く「PLAZAらしさ」

信頼や共感を通じて自社の価値向上や他社との差別化などを目指すマーケティング戦略の1つ、ブランディング。さまざまな企業やブランドがその魅力を広く伝えようと注力しています。

ライフスタイル/バラエティーストアの元祖ともいえる雑貨店PLAZA(1966年オープン、旧・ソニープラザ)は、アメリカンスタイルのドラッグストアとしてスタートしました。近年ではコスメ類の取り扱いの多さなどから10~20代女性の人気を集めていますが、さまざまな施策で性別や世代を超えたアプローチを行っています。

あらゆる世代の女性たちの心と身体に寄り添うアイデアを共に考え、提案する社内プロジェクト「Nice to meet me!」、ブランドペルソナともいえる都内私立高の生徒と産学共同開発した日傘「rizzful parasol」(記事はこちらから)、そして子ども向けイベント「MY FIRST PLAZA」(記事はこちらから)、それぞれの担当者に「PLAZAらしさ」をたずねるインタビューを実施しました。

第3回目となるこの記事では、オリジナルパッケージの生理用ナプキン「The Week Sanitary Pad(以下、The Week)」、サニタリーショーツ「SaniBuddy」の商品企画、さらに医療現場で働く女性のためのユニフォーム(クラシコ株式会社と共同開発)など手がける「Nice to meet me!」プロジェクトリーダー、中村優希さんにお話をうかがいました。

従来のブランドイメージからすると「意外」とも感じられるソーシャルアクションを「PLAZAらしく」実施する背景に迫ります。

ーーPLAZAオリジナルパッケージの生理用品The Weekについて教えていただけますか。

中村:㐧一衛材株式会社という生理用ナプキン、ペットシーツ、医療介護用おむつなどを製造するメーカーの「シェリコット(CHÉRICOT)」というブランドを活用させていただいて、パッケージデザインをPLAZAが担当しました。

ーーパートナー企業はどのように探されましたか?

中村:生理用品の製造数量の関係で大手メーカーとの取引は難しく、「PLAZAと取り組むメリットがない」とはっきりとお断りされたこともあります。自分たちが描く理想と、実現可能な現実を1つひとつすり合わせながら進んできました。

ーーオーガニックコットンも使われていて、肌に優しそうですね。

中村:デリケートゾーンはオーガニックコットン、漏れ防止ガードにもコットン素材を使用しています。これは第一衛材さんが研究・開発したという、世界初(※シェリコット調べ)のコットンサイドガードです。薄いナプキンに慣れている方は、厚さのある形状を敬遠するかもしれません。でも、実際に使ってわかる心地よさがあります。肌ざわりが柔らかくて、ひんやりしにくい感触がいいですよ。

ーーぜひ試してみます。「Nice to meet me!」はどのように生まれたプロジェクトでしょうか。

中村:このプロジェクトは、オリジナル生理用品を作るために立ち上げたものではありません。個人的な事ですが、海外駐在の予定がコロナ禍でなくなってしまい、この先の数年間をどう過ごそうか……「日本にいてよかった」と思えるものを見出さないと、と模索していました。

同時に、私は本来、PLAZAの商品が大好きで、弊社のSNS投稿も楽しく見ていたのですが、コロナ禍では「かわいいもの、新しい商品があります」と、押し付けているようにすら感じてしまいました。不安ばかりの状況を過ごすなかで、自らの仕事のことを見直していくと、PLAZAの商品を手に取ってくださるお客様が、本当に幸せか、健康かということを考えなくてはいけないことに気がつきました。

会社全体でやる必要はないけれど、本質的なこと、“考えているパート”を誰かが担う必要がある、と考えました。「Nice to meet me!」プロジェクトを通して、健康に関心を持っていただくきっかけを作ることにしました。

ーーフェムケア領域にあたる商品を扱うために心がけたことはありますか?

中村:実は「生理を楽しんでほしい」とはあまり考えていないんです(笑)。どんなときでもお気に入りのアイテムは、自分の身体や心を整えて、人生を豊かにしてくれます。私たちのターゲットペルソナは、あらゆる世代の女性です。

PLAZAはかわいい雑貨を扱うお店なので、突然お客様に健康を説くことが押し付けになりかねません。意識を啓もうするというよりも、みなさんのコミュニケーションを活性化させるような部分を私たちの領域ととらえています。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Nice to meet me!(@plaza_nicetomeetme)がシェアした投稿

ーーたしかに、SaniBuddyには普段でも励まされそうなメッセージを忍ばせていますね。

中村:他のサニタリーショーツとは異なる仕掛けをしたいという想いから、当初はクロッチ部分にナプキンのポジションガイドをプリントするというアイデアがありました。最終的には、気分がゆらぎやすくなる生理期間中にも、ナプキンを交換するたびに「ポジティブな言葉を目にしてほしい」という想いを込めて、それぞれに異なるメッセージをデザインすることとしました。

The Week、SaniBuddyどちらもお菓子や雑貨、化粧品と同じように、お友だちと会話をしながら「私、これ使ってすごくよかったよ」「かわいいね」と手に取っていただきたいです。

ーーThe Weekの海外のお菓子っぽいパッケージにはPLAZAオリジナル感があるし、多感な時期に、お友だちや異性に見られても恥ずかしくない、見てしまった側も後ろめたい気持ちにならないデザインですね。

中村:PLAZAの店頭で「お菓子なの?」とお子さんと会話が生まれた、必要になったときの備えとして、ロッカーやバッグに入れるように渡したというエピソードもいただきました。

ーーほかにはどのような反応が生まれましたか?

中村:「パッケージが海外っぽいから、品質は期待していなかったけれど、とても良かった」「月に1回、ご褒美として買っています」というお声もいただきました。それから、お客様からの「作り続けてほしい」というお言葉は新鮮で、とても嬉しいものでした。

ーーでは、ポケモンデザインのThe Weekについて教えてください(PR EDGEの記事はこちら)。

中村:ポケモンデザインのThe Weekを教育機関や団体へ無償配布することは、たとえば宿泊行事や、初経教育の授業で活用していただきたいという発想から生まれました。

(C)2025 Pokémon. (C)1995-2025 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

ーーソーシャルアクションにリーチしたことで、どのような反響が生まれましたか?

中村:二次募集まで受け付けることを当初は予定していましたが、想定よりも多くお申し込みを頂戴したため、一次募集で締め切ることになりました。また、学校だけでなく、お子さんの学習や居場所を支援する団体や、助産院・産婦人科など医療機関からもご連絡をいただきました。

ーーデザイン面では、アニメではないドット絵のポケモンに「PLAZAらしさ」を感じました。また、それぞれのポケモンが理由を持って選ばれたことが想像できました。

中村:ありがとうございます。頭痛に悩んでいるコダックや、いっぱい食べて眠ってしまうカビゴンなど、「さまざまな生理の在り方のなかで、自分にぴったりの相棒を見つけてほしい」という想いで、さまざまな特徴を持つ計12匹のポケモンがデザインされています。

出典:特別パッケージのThe Weekとあわせて配布する「Nice to meet me! BOOK」(C)2025 Pokémon. (C)1995-2025 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

ーー今後、他のIPとのコラボレーションはお考えですか?

中村:今回は、ポケモンのキャラクターの特徴を大切にしながら企画できた特別なコラボレーションだったと感じています。また、新しいご縁に恵まれた場合には、そのキャラクターの個性にあわせてまた何か新しいアイデアで進められたらいいですね。

ーー「PLAZAらしさ」とはどんなものなのでしょうか。言葉にして教えていただけますか?

中村:「PLAZAらしさ」の言語化は、私たちが長い間挑戦していることです。来年(2026年)で創業から60周年を迎えますが、この問いには歴代のメンバーも常に向き合い続けてきました。ただ、一貫して言えるのは、「PLAZAらしさ」はスタッフ1人ひとりにしっかりと息づいている、ということです。

たとえば「ピンク」という色ひとつ取っても、PLAZAに合うかどうかは、明度や彩度、時代の空気感、使われるシーンによって判断が分かれます。すべてのピンクが「PLAZAらしい」わけではないんです。

そうしたなかで、私たちスタッフは、その“違い”を直感的に見極められる「感性」と「選び抜く力」を持っています。PLAZAというブランドを愛し、その世界観を尊重している。だからこそ、誰に指示されなくても、自然と「PLAZAらしさ」を体現できます。

言葉にするのは難しくても、スタッフ1人ひとりの判断や提案、日々の選択のなかに「PLAZAらしさ」がにじみ出ています。これは、単なるルールやマニュアルではなく、企業文化としての「美意識」や「共通の価値観」に根ざしたものだと思っています。Kさん(※編集部注:取材に同席していた同社PR広報担当で「Nice to meet me!」メンバーの1人、中村Kさん)はどうですか?

中村K:「ワクワクする」ですね。ユーザー、スタッフのどちらも経験して、これが「PLAZAらしさ」だと思っています。優希さんとは別軸で抽象的かもしれませんが、お客さんも作り手もワクワクしていることが「PLAZAらしさ」だと思います。

ーーファンとして「ワクワクする」という言葉はPLAZAそのものだとうなづけます。スタッフに「PLAZAらしさ」が浸透しているからこそ、具体的な言葉にする必要はないということでしょうか?

中村:外部の方とのコミュニケーションのために、言語化できるといいなと思うときはあります。

ーーどのようにご説明されるのでしょうか?

中村:デザイナーさんとの場合であれば、言葉での説明だけでなく、ひたすらイメージやパターンをお見せしたり、よりPLAZAらしいデザインができるように何度も打合せを重ねています。

ーーたしかに、このThe Weekをよく見ると裏面の商品説明に使われている日本語フォントの抜け感が「PLAZAらしい」と多くのファンが感じるかもしれません。


中村:裏面印刷のフォントのような細部にも「PLAZAらしい」こだわりが詰まっています。パッケージロゴも、打ち合わせを何度も重ねて出来上がったオリジナルデザインです。

取材後記

ブランドの特長を「PLAZAらしさ」として、担当者にたずねた全3回のインタビュー。それぞれの取材では、異口同音に「ワクワク」というキーワードが登場しました。

「ワクワク」を発展させた「HEARTS UP!」というタグラインに秘める顧客体験を語ってくださったのは、ロイヤルユーザーにあたるティーンエイジャーと商品を開発した大塚さん(記事はこちらから)。年齢を重ねた今でも、筆者がPLAZAで過ごす時間は‟放課後のムード”にあふれています。

そして、私の「MY FIRST PLAZA」は、壁に設置されたミセスグロスマンのステッカーロールを切り取った記憶。……店頭販促の仕事を「空間や見せ方を考え、PLAZAらしさ(ワクワク)を伝える」ことだととらえ、イベントでブラッシュアップしているという橋本さん。ワクワクする気持ちに加えて、「知らなかったモノを見つけたときの驚き、喜び」も大切にしたいという向原さんは、ファミリーや男性へのアプローチも課題だといいます(記事はこちら)。

本記事では、PR担当の中村Kさんは「お客さんも作り手もワクワクしている」ことに言及。中村優希さんは「PLAZAらしさ」とソーシャルアクションのバランスについて話してくださいました。お2人が尽力したThe Weekのふかふかした付け心地と、カサカサした音を立てることのないSaniBuddyのタッグは、筆者の憂鬱に寄り添ってくれました。

言葉巧みに企業フィロソフィーを掲げるのではなく、「ワクワク」という言葉をアンカー(錨)として、取り巻く感情をひも解きながらアイデアを実現していくみなさんの姿こそが、PLAZAのブランディングなのかもしれません。

(取材・文 服部真由子)

インタビュイープロフィール

中村優希(なかむら・ゆき)

株式会社スタイリングライフ・ホールディングス
プラザスタイル カンパニー
事業戦略室 担当課長 新規事業担当
Nice to meet me! プロジェクトリーダー

2010年4月プラザスタイル カンパニーに入社。7年間の店舗勤務を経て2017年よりHealth&Beauty課 バイヤーとして従事。その後、NYオフィス担当、MDディレクター、販促課課長を経て現職。2022年よりNice to meet me!プロジェクトをローンチ。新規事業担当とプロジェクトリーダーを兼任しています。

(C)2025 Pokémon. (C)1995-2025 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

その他のインタビュー記事についてはこちら
https://predge.jp/search/post?othres=31
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/ 

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る