家族愛イメージを強化。発売55周年を迎える花王「メリット」がリブランディングを実施

花王株式会社はヘアケア事業変革の一環として、1970年から販売する同社の主力ブランド「merit(メリット)」のブランドコンセプトを刷新しました。

家族全員が安心して使えるシャンプーという既存のブランディングを「やさしさ・安心感・清潔」を届ける“家族愛”ブランドへと進化させようという取り組みです。

ヘアケア事業変革の一環としてのリブランディング

花王は「髪の生きる力を、人の生きる力へ」という事業ビジョンを掲げ、ヘアケアブランドの再編を進めています。ブランドを単なる製品提供の枠を超えて、消費者の「感情ニーズ」に応える存在へとシフトさせることを重視しており「merit」のリブランディングもその一環です。

ヘアケア市場は「ハイプレミアム(1,400円以上)」と「マス(プレミアムマス/リーズナブルマス)」に分類されており、「merit」はマス市場における主要ブランドの一つとして長年愛されてきました。

今回のリブランディングを通じて、マス市場における花王のヘアケアブランドの存在感をさらに強化し、より幅広い消費者層に訴求していくことを目指しているそうです。

人気CMはコンセプトを変えることなく続投

2024年春から放送されている「家族と愛とメリット」CMシリーズは、今回のリブランディングコンセプトを先行して表現していたようです。なかでも、昨夏放送されたエレファントカシマシ「今宵の月のように」のカバー曲を使用したCMは話題となり、SNS上でも「こんなんオンオン泣くよ」「育児ってこういうことの繰り返しだよね」といった感想が寄せられました。

2025年春のCMは、そのコンセプトを受け継ぎながら、子どもの歌声で椎名林檎「幸福論」をカバーしています。

1997年にリリースされた「今宵の月のように」は、フジテレビ系ドラマ『月の輝く夜だから』の主題歌として、「幸福論」(1998年リリース)はサントリー「ザ・カクテルバー」のCMに起用されたことから、メリットを家族のために選ぶ親世代にとっては、子どもの頃にTVから聴こえてきた「あの曲」です。

イラストで展開する感動ストーリーを、幼いころ親しんだ曲が演出することで、子どもとして、親としての「家族への愛情」が交錯する……そんなギミックに多くの人が心を動かされたようです。

パッケージデザインの刷新

リブランディングでは、パッケージデザインも大きく変更。丸みを帯びたボトルのフォルムはやさしさや安心感を象徴し、シンプルでやわらかい色合いを採用することで、親しみやすさと洗練された印象のバランスを取っています。

「merit kid’s」シリーズは、子どもたちが手に取りやすいようポップな色合いを取り入れ、遊び心のあるデザインとすることで、通常ラインとの違いを明確にしました。

このパッケージデザインの刷新は、単なる見た目の変化にとどまらず、ブランドが持つ「やさしさ」と「家族への思い」を視覚的に伝える役割も果たしていそうです。

リブランディングの意義と今後の展望

「家族愛」という感情価値をブランドの中核に据えることで、より多くの消費者の共感を得ようというこのリブランディング施策。「家族向けシャンプー」として人気を博しているからこそ、「家族の愛を支えるブランド」へと進化させようとしています。

ユーザーペルソナを「自然体で思いやりにあふれた生活をしたい」「家族とのつながりを大切にしたい」「やさしさや安心感を大切にしながら製品を選びたい」と考える人びとに規定したという「メリット」。家族の日常に欠かせないブランドであり続けようという決意が感じられる事例です。

編集部注:最新の情報にあわせて、2025年3月28日(金)記事を編集・追記しました。

その他のブランディング事例についてはこちら
https://predge.jp/search/post?genre=27
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る