【イベントレポート – イノフェス2017】堀江貴文・山崎直子が語る、今まさに身近になる宇宙開発

6月3日(土)ラジオ局・J-WAVEと筑波大学の共催で行われた「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2017 Supported by CHINTAI」(通称:イノフェス)。「テクノロジーと音楽の祭典」をテーマに、様々なアーティスト・クリエイター・企業が揃い、ライブパフォーマンスやトークセッション、展示などを行った。

当サイトではテクノロジーやクリエイティブを生業とするビジネスパーソンにとって、新たなビジネスのヒントになるセッションを一部レポートする。[AdGangの運営会社であるPR TIMESはJ-WAVEのイノベーター発掘プログラム「INNOVATION WORLD」との連動を先日発表している]

今回は本イベントの中から、民間での開発も盛り上がりを見せつつある「宇宙」をテーマにしたセッション「宇宙に行こう!〜宇宙のテクノロジーが世界を変える〜」の模様だ。このセッションにはスペースシャトル「ディスカバリー号」でのミッション(2010年)にて宇宙へ、現在は民間の立場から宇宙に関する様々な活動を行う山崎直子氏と、インターステラテクノロジズ株式会社 ファウンダーとして、ロケット開発事業に携わる堀江貴文氏、モデレーターとして津田大介氏が登壇した。

日本で民間の宇宙開発が進まなかった理由

まず堀江氏が語ったのは、宇宙開発の歴史と、自らロケット開発に携わるようになったきっかけについてだ。堀江氏は「ドイツのV2ロケットが生まれた1940年代くらいから基本の設計は変わっていません。ドイツが第一次世界大戦が終わった後のヴェルサイユ条約によって航空機の開発を禁止された、その代わりに何かできないかというところで、人口ミサイルなら出来るじゃないかと。それから進化していないんですよ」と語り、さらにドイツからアメリカに亡命しアポロ計画を主導した立役者(ヴェルナー・フォン・ブラウン)の存在や、ジョン・F・ケネディが1960年代に10年以内に人を月に送ると宣言したこと、1969年にアポロ計画でそれが実現したことなどに触れ、そこから宇宙開発が進歩していないことに疑問を持ち、イノベーションが止まっていることの問題解決のためにロケット開発に乗り出したと語った。

「宇宙活動法」が成立した日本で期待されること

その後「官」主導だったアメリカの宇宙開発が「民」に広がることになったきっかけとして、堀江氏は「北朝鮮がノドンやテポドンを飛ばした。それで方針転換したんです。北朝鮮すらつくれるじゃないか、なら民間にどんどんやらせてアメリカの主要産業にしようと」という点を挙げた。その後SpaceXやBlue Originなどの宇宙ベンチャーも台頭してきたが、日本でもようやく2016年に民間の宇宙開発を促進すべく「宇宙活動法」が成立。

山崎氏は「日本の宇宙開発予算はアメリカの大体1/10、年間3,000億円、これは畳市場やパンスト市場とほぼ同じと言われています。その中で、国内でシステムを持っているというのはすごい」と、元々限られた予算の中でも自国でロケットを飛ばせるほどの技術を持っている日本の宇宙開発の裾野が広がることを期待する。

堀江氏も「ロケット開発は電子工学、素材、制御、技術の十種競技みたいなものです。ロケットを飛ばす時には30-40箇所くらい定期的に連絡しなければいけないので、それをワンストップでできるようになるのは大きいですね。さらにこれだけの産業が立地している。例えば炭素繊維を持っている複合材の世界最大のシェアを持っていたりするような企業が山のようにあって、日本で調達出来る。これだけあるのは日本とアメリカぐらい」と語る。さらに、堀江氏は日本の有利な点として立地の部分でのメリットを挙げた。ロケットは地球の自転方向である東側に向けて打ち上げを行うが、東側に海のある日本はその点が有利になるという点だ。

宇宙ビジネスを目指すなら

セッションの後半では山崎氏、堀江氏、それぞれの立場から、これからどのように宇宙ビジネスに関わっていって欲しいかという点が語られた。

「”宇宙じゃない人”にむしろ入ってきてほしいですね。この衛星を使ったら面白いことできるんじゃないかとか、今やっている仕事の中で新規事業のチャンスがあれば宇宙に絡み付けて欲しいなと思いますし、コンテストもこれからたくさん出ると思いますし。法整備が昨年整って、産業の支援をしたいということで、内閣府と様々な企業とでS Boosterというビジネスコンテストも立ち上がりました。小さなアイデアから壮大なアイデアまで、大歓迎ですので、ぜひたくさんの方応募してください」と、現在は民間の立場から宇宙に関するメディア出演や講演、宇宙旅行用ドレスのプロトタイプ開発に関わるなど、幅広い活動を行う山崎氏。ちなみに自身が宇宙に行き地球に帰ってきた時には「宇宙に行くことで地球を見つめ直す、見捨てるではなくものすごくわかる」という感覚を得たそうだ。

堀江氏は「(インターステラテクノロジズに)インターンの子もいっぱいいるんですけど、みんな三菱重工とかJAXAに行っちゃうんですよ(笑)。ITベンチャーも昔はそうで。うちは(ロケット開発を手がけるという特性上)工作機械を使える人とかが基本。理工系の学生は大歓迎です。何十人も泊まれる合宿所もあるので」と語った。インターステラテクノロジズで手がけるロケットの開発状況は「タンクの製造で手こずっていますけど、最終局面まで来ているので。一号機を打ち上げたらバンバン二号機、三号機打ち上げます」ということだ。

また「今のインターネットを作って来た世代は、なぜこれだけネットに魅了されたかというと”ネットは世界を変える”という感動があったわけです。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクもみんなそうなんですよ。やっぱり世界のITベンチャーって宇宙を目指すんだ、俺と同じ考え方だなと思っていたんですが、日本のベンチャーの人って興味がなくて。SpaceXの本社を見学したら感動しますよ。カフェテリアの横でところてんのようにエンジンが出来ていますから。2Fも駐車場だったのが全部オフィスにして車止めるところがないんだよ…という位だそうです。是非機会があったら。”あ、やべえ”という感覚になると思います。」と語り、世界的な宇宙ベンチャーの盛り上がりと、20年ほど前のITベンチャーの盛り上がりの共通する部分を語った堀江氏。

法整備が行われ、これから日本でも盛り上がってくるであろうこの波。小さいころ「宇宙に行きたい」と思っていた人も、宇宙にそこまで関心がなかった人も、これから”宇宙”を視野に入れてみる良いタイミングではないだろうか。

写真提供:J-WAVE

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