スマートフォンを繋げてエレクトリカルパレード!『SYNC! ILLUMINATION』実現の舞台裏

Case: 東京ディズニーリゾート「SYNC! ILLUMINATION」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は、東京ディズニーリゾート『SYNC! ILLUMINATION(シンク!イルミネーション)』を取り上げます。

1年でまちじゅうがもっとも輝くクリスマス。きらびやかなイルミネーションに心躍らせながら、今年の予定を考えている方も多いのではないでしょうか。本格的なシーズンに先駆け、10月29日に公開された、この『SYNC! ILLUMINATION』は、多くのファンがいる「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」をスマートフォンの画面で楽しめるデジタルコンテンツ。スマホを連携して大勢で楽しむと、特別な演出やフロートが登場するなど、わくわくする仕掛けも満載です。

この幻想的なコンテンツはどのようにつくられたのでしょうか。株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ シニアリーディングスタッフ 今井淳一さん、同チーフリーディングスタッフ 中田聖良さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美
一人で使うスマホを、大勢で楽しめるスマホに。

—『SYNC! ILLUMINATION』は、東京ディズニーリゾートで11月9日から開催されているクリスマスのスペシャルイベントに連動したプロモーションということですが、過去にもデジタルコンテンツを使った施策はあったのでしょうか?

今井:直近ですと、ディズニー・イースターの時期にウェブサイト上で行えるゲーミフィケーションコンテンツを展開したことはありますが、今回のプロモーションは、それと比べると規模もレベルもはるかに大きなスケールです。

この『SYNC! ILLUMINATION』もまた、ウェブサイト上で行っているのですが、かなりインタラクティブなコンテンツになっていて、ウェブブラウザの限界に挑戦するというか、その性能をフルに使って展開しています。アプリケーションで提供することも考えましたが、ダウンロードの手間があるので、短期間のみ利用するコンテンツの為に、アプリをダウンロードさせるのはハードルが高いというデータも持っていました。その点を踏まえゲスト視点で体験のハードルが低く、プロモーション施策として好ましいウェブブラウザでの提供を選択しました。

―開発にあたり、苦労した点やこだわられた点はありましたか?

今井:まず、知的財産をどう扱うのかという全社最適視点での課題がありました。当社のように価値のある知的財産を扱う企業がコンテンツマーケティングを実施する際、どうやって、どのレベルまでそのアセットをマーケティングに活用するのかという点は熟慮し調整を重ねました。今回はリテンションを起こさないよう、基本的には1, 2度の体験で終わるよう設計しています。

加えて、アプリはダウンロードができれば基本的に楽しめるものですが、『SYNC! ILLUMINATION』は、ブラウザ上で楽しむものなので、OSのバージョン、ブラウザの種類、端末のスペックなどすべてに適合させるという部分は本当に苦労しました。テストのときも端末の組み合わせや連携する台数で不具合が起きたりと、なかなか大変でした。対応機種を狭めようという話も出たりしたのですが、そうすると技術ありきになり、出来る限り多くのゲストに楽しんでいただくという必須要件がおざなりになってしまうので、ここはどうしてもクリアしなければならないポイントでした。やはり、たくさんの方に楽しんでいただきたいので技術面は本当に力を入れました。

―スマホ上で流れるエレクトリカルパレードはすごくクオリティが高くて、とても驚いています。

今井:このプログラミング映像は今回のプロモーションのためにすべて撮り下ろし、スマートフォンで表示したときに最適となるようレタッチをしています。

また、音楽と実際のエレクトリカルパレードでおなじみのショー開始時の電子ボイスも、このコンテンツのために再録音しています。実際のエレクトリカルパレードをご存知の方は、その出来栄えと比較をされると思うので、見劣りしたり違和感があったりすると逆にネガティブになってしまうな、と考えました。ここはプレッシャーでもあったのですが、こだわりをしっかり持ちました。

―スマートフォンを10台以上つなげると特別な演出が登場することも、話題になりました。

今井:そうですね。連携するスマホが増えると何かが起きる楽しみを、みんなで集まることのインセンティブにしようと思い、メディアにもはじめからその情報をお伝えしていきました。

背景として、一人でも完結するスマホ上の体験を、いかに周りの人に波及させていくかを課題として抱えていました。スマートフォンは、現在テレビに次いで多くの方にリーチできる端末ですが、基本一人で使うものという認識を誰もが持っているのではないでしょうか。ディズニー・イースターのプロモーションのときも、コンテンツで遊んだ方のデータを分析すると、他のコミュニケーションで既にリーチできているであろう同じデモグラフィックの東京ディズニーリゾート高関与層がほとんどでしたので、いかに低関与層にリーチさせるのかは今回のチャレンジでした。

その点で、『SYNC! ILLUMINATION』は、一人で楽しむこともできますが、大勢で体験するとさらに楽しめるように設計したので、私たちが大切にしている“生の体験”や”人とのふれあい”につながるだけでなく、東京ディズニーリゾートの情報に普段触れていない低関与層へのリーチというターゲット戦略にもはまりました。

―動画の反響もかなりありますよね。どういうシチュエーションを設定したのでしょうか?

中田:『SYNC! ILLUMINATION』はスマートフォン上の施策なので、10~30代の一日のほとんどの情報接取をスマホ上でおこなっているユーザー層が観たときに体験欲求が掻き立てられることを念頭に、キャストもそういった年代の方に出演いただきました。

ドキュメンタリータッチに仕上げたのは、コンティングマーケティングの位置づけを強化する戦略に基づいています。そのため広告色をできるだけ排除しようとクレジットなども必要最小限にし、自然な感じを意識しました。おかげさまで再生回数も100万回を超え、当社の動画コンテンツのなかでも群を抜いています。

メディア戦略は話題化の絶対条件。設計段階から要件として意識した

―話題づくりという点での取り組みをお聞かせください。

今井:本コンテンツのコミュニケーションデザインをする中で、今までリーチできなかったターゲットにも届けるためにも、マスメディアにのせることは絶対条件だと考え、設計の段階から一つの要素として盛り込んでいました。しかしスマホを使った施策は画として映しづらいこともあり、ときにTVからは敬遠されてしまいます。

今回は、スマホをつなげて一枚絵に見えるようにすることでこの部分が解消できました。結果としてTVでも多く取り上げていただき、SNSやウェブに火をつける起爆剤にもなり、大きなバズを生みだしました。

―SNS上の反応はいかがでしたか?

今井:キャンペーン終了後に効果分析の為の調査を予定していますが、ここまで見ている限り思った以上に「パークに行きたくなった」という声が多い印象を持っています。

私たちとしては『SYNC! ILLUMINATION』の体験だけで満足されてしまうと、マーケティングとしての最終的なゴールは達成できなかったことになるので、そのような声がたくさん見られることには、強い手ごたえを感じています。

『SYNC! ILLUMINATION』を体験したその場で、「今度みんなで行こうよ」のような会話のやり取りがされていると思うので、コンテンツを発端にしたゲスト間でのパーク来園への誘い・誘われも発生していると考えています。

中田:ソーシャルメディアでは、今回はインスタグラムが盛り上がっていましたね。短い動画が投稿されていたり独自のハッシュタグが生まれていたり、ユーザーの自発的な取り組みが印象的でした。

―今回のプロモーションを振り返っていかがでしょうか。

今井:東京ディズニーリゾートは、常に質の高いカスタマーエクスペリエンスをゲストの皆さまに提供し続けるべく邁進していますが、その魅力を一人でも多くの方にお伝えできるようマーケティングにも日々注力しています。

その中でも今回は、東京ディズニーリゾートが得意とする『アート』と『テクノロジー』の掛け合わせによる、新しいデジタルコミュニケーション施策の成功事例となりました。ぜひ東京ディズニーリゾートからのクリスマスプレゼント『SYNC! ILLUMINATION』をお楽しみください!

株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ シニアリーディングスタッフ 今井淳一さん(左)
株式会社オリエンタルランド マーケティングコミュニケーション部 WEBコミュニケーショングループ チーフリーディングスタッフ 中田聖良さん(右)

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