「『カルピス』フルーツパーラー」Vineを活用したPVコンテスト その真の狙いとは
Case:「『カルピス』フルーツパーラー」厳選マンゴー プロモーションビデオコンテスト
話題になった(=「バズった」)日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は「『カルピス』フルーツパーラー」厳選マンゴーの発売にあたり2014年3月10日〜4月10日まで実施された、この商品を使ってのVine動画をユーザーから募集した「プロモーションビデオコンテスト」。実施の真の狙いを、アサヒ飲料株式会社 カルピス営業本部 飲料事業部 販売戦略グループ 課長 加藤寛之さんに伺います。
Vineの「6秒」 限られた時間だからこそ気軽に投稿出来る
—まずは、今回のキャンペーンの実施に至った経緯をお教え頂けますか。
キャンペーン対象商品である「『カルピス』フルーツパーラー」は、元々あった「フルーツカルピス」が2013年3月にリニューアルしたものです。私もちょうどこのブランドリニューアルにあたって商品の担当になり、店頭での販促やWEB周りのキャンペーンの策定、調整など幅広くやっていく中で、マスメディアを通してだけではなくSNSも活用してお客様と接点を作っていけないかと考えていました。そこで、Twitterアカウントを所有して、ブランディングに活用することとしました。
そんな中、昨年(2013年)の秋頃にVine活用というアイデアが出てきました。2014年は動画を使ったコミュニケーションがより楽しくなっていくのではないか、動画を使ったキャンペーンも増えていくだろう、そこで目をつけようと。
コンテスト形式にしたのは、こちらから商品に関する一方的な情報を流すのではなく、商品に触れてもらい、“どんな映像を作れるのかな?”・“どんな味がするのかな?”と考えて頂ける機会に出来ないかという狙いです。
—様々な動画サービスの中からVineを選んだ理由は何ですか。
お客様が「6秒という限られた時間の中で何を表現するか」という点に注目したいと思った点と、(限られた時間である分)「気軽に投稿出来る」という魅力を活用したいと思った点です。
社内では、Vineをダウンロードしている人が全然いないという状況だったのですが(笑)だからこそ、新しいことをやるという実感もあったようです。また、今はアプリを簡単にダウンロードすることは出来ますし「アプリ」はあくまで条件設定のひとつ、例えばキャンペーン応募の際にあて先やお名前などを入れて頂くことと同じような手順と捉えれば良いのではという考えがありました。
—成果や、投稿された動画の傾向はいかがでしたでしょうか。
応募ユーザーのTwitterアカウントのフォロワー数を合算すると4万人を超える人たちに「『カルピス』フルーツパーラー」の情報伝達ができたと見ています。初めにサイト上にお手本としていくつか動画を載せていましたが、お客様が作ったものの方が面白かったです。スマートデバイスやITサービスが普及している中で、最初に反応してくれる人たちは、このサービスをどう使ったら楽しいか「さすがによくわかってらっしゃるな」と思いましたね。ちょうど今受賞作品を選考中です。
—受賞作品の選定はどのような基準ですか。
この撮影を通して、「『カルピス』フルーツパーラー」と自分との接点を見つけて親しんで頂いたなと感じる作品は「受賞」という形で弊社も共感を示したいと考えています。
コンテストを通して、商品に触れる「場作り」
—今回は、渋谷ヒカリエ(Creative Lounge MOV「aiiima」)に特設スタジオを設置されましたね。
気軽にダウンロード出来るとはいえ、そもそもVine自体の普及もこれからという中で、気軽にその場で動画を作れる「場」を用意しました。特にこのスタジオのある渋谷ヒカリエの8階は「情報を受け取りたい」と思っている方が回遊する場なので、ふらっと入って動画を作って頂くにはもってこいでした。
スタジオには様々な道具も用意して、どういう風に撮って頂けるだろうと興味津々でしたが…正直、実施するまではどこまでやって頂けるかな?と思っていました。
ところが、ご友人・カップル・ご夫妻など二人組で入って頂いたりすると「上手く撮りたい」という欲が出てきて会話が活発になり、結果、結構な時間を費やしてムービーを作っていく方が多かったですね。何十分も滞在した帰りに「面白かったね」「家でやってみようかな」と言って帰って頂けるところも、何度も目にしました。
また、映像クリエイター「カツヲ」さんによるワークショップも開催しましたが、ここでも知らない人同士が一緒に楽しんでくれたりする。こういった光景を目の当たりにして、動画は決して一人で作るとは限らない、さらに作った先にも見る人がいることから「みんなで楽しめる」ものなのだと実感しました。
—今後の動画コンテンツの可能性について、どのようにお考えでしょうか。
本当は商品を主役にしたいところですけれど、お客様にとって自分ごとになっている情報であるかどうかがより大事ですし、あくまで商品の情報は脇役です。「美味しい」とか「何で出来ている」といった商品自体の情報よりは「こういう気分になる」「面白そう」といった、商品のその先にある感情を伝えることが出来たら良いなと思っています。
今回のようなキャンペーンがすぐに“売り”に直結するかというと、決してそうではありません。ただ地道にこのような施策を行い、お客様との接点を作っていくことが大事です。
—お客様との「接点を作っていく」にあたり、大事にされている考えをお聞かせ下さい。
今は情報や新商品が溢れている分、情報を「選ぶ」より「捨てる」ことへの意識の方が強いかもしれません。自社が伝えたい情報がお客様の自分ごととして伝わるかどうかという点にはとても努力しなければいけないなと感じています。そんな中、今回のキャンペーンで一番大きかった要素は「場作り」でしたね。
どうしても動画を募集するだけでは、バーチャル上で実感の薄い話に終わってしまう可能性も有りますが、足を伸ばしてもらえる場所があればそこでコミュニケーションが生まれたり、楽しんでもらえたりするという可能性を感じました。今後もリアルな場で経験を生み出せることを意識していきたいですね。
—その場でクリックして買ってもらえる商品では決してないだけに、リアルな場での体験とも相性が良いのでしょうか。
そうです、主にお店や自販機で売っているだけに「買いに行って」「手に取ってもらう」という行動をして頂かなくてはいけない。ならばまずは、場作りを通して商品に触れてもらい、体験してもらう。そうして関与度が高まった先に、買って飲んで頂くという行動に行き着くのではないかと思っています。
【Interviewee】
アサヒ飲料株式会社
カルピス営業本部 飲料事業部 販売戦略グループ 課長
加藤 寛之さん
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