ピールオフ広告が話題のBARTH「サンプルを試してもらう」までのストーリー|前編

定期的に大規模な広告/PR事例を展開するナイトウェルネスブランド「BARTH(バース)」。寝顔だらけの広告を作りたい!と寝顔写真を募った「泥睡しよう」キャンペーン(以下、泥睡/2023年10月実施)に、お風呂での「ながら美容」を24のイラストとともに提案する「実はこれ美容中」キャンペーン(以下、美容中/2025年4月実施)といったピールオフ広告や、第34回日本プロモーション企画コンテスト(2025年4月/主催・株式会社ビジネスガイド社)を受賞したサンプリングプロモーション「The New Yoku Times」(以下、NYT/2024年4月実施)が注目を集めました。

これら事例の仕掛け人は、アース製薬株式会社BARTH事業部 副事業部長の小野里賢治さんと、コミュニケーションデザインチーム リーダーの柴野莉沙さん。話題を呼んだ3つのキャンペーンをめぐるビハインドストーリーをうかがいます。

前後編の前編、後編は7月31日(木)12:00に公開します。それぞれの事例を紹介したPR EDGEの記事はこちらから。

渋谷駅にピールオフ広告登場。アース製薬のサンプリングキャンペーン施策
お風呂で読む号外新聞「The New Yoku Times」リアルとSNSの販促展開
寝顔だらけの広告をつくりたい! 担当者の個人的な想いから生まれた“泥睡”キャンペーン

――まずは、BARTHの広告チームについて教えてください。

柴野:現在は小野里、わたしともう1人のチームメンバーの計3人で担当しています。泥睡とNYTの当時はわたしたちだけでした。

――少人数でやっていらっしゃるんですね。

柴野: ほかは知らないので、なんとも言えないのですが(笑)。

小野里:僕はこの前までアース製薬本体にいたのですが、そちらも1ブランドにつき1~2人で担当して、案件ごとに代理店さんのチームと一緒に作っていくというスタイルです。

BARTHブランドのキービジュアルのテーマも「睡眠」

――案件ごとに都度オリエンテーションを催して、毎回違う広告代理店を選ばれているのでしょうか。

柴野:規模の大きいキャンペーンは、春夏・秋冬と年に2回行っていて、毎回協業してくださる代理店さんに向けてオリエンテーションを実施し、コンペ形式にさせていただくケースが多いです。

――毎回選定されるとなると、大変ですね。

柴野:大変です(笑)。だから、ある年は1つの代理店さんに絞ってみたり、企画ごとにお願いする代理店さんを分けたり、いろいろとアメーバのように変化させ、形を変えています。なので、「これ」っていうのは定めていません。

小野里:あえて特定のパートナーに定めるというよりは、コンペに参加していただいて、提案されたものがすごくよかったら春夏・秋冬と継続してお願いしようかな、というかたちで絞ってますね。

――各代理店からコンペで寄せられたアイデアを検討するのでしょうか。

柴野:コンペを行うと、1つの代理店さんから複数案をいただきます。そのなかで「この案でいく」と決まってからは、弊社からもアイデアを出して、もっと良いものにできないか、別の角度をつけることはできないか、など意見交換を進めていきます。

泥睡CPのキービジュアル

――代理店やクリエイティブチームへ任せきりにはせず、実際のプロモーションとして外に出ていくものへと耕したり育てたり、積極的に参加されるということですね。

柴野:サンプリングやピールオフ広告を展開するのは、話題化・ユーザーのトライアルを取る目的です。

そのため、サンプリングはかなり大規模に、配布の個数をかなり多めに設定しています。BARTH入浴剤のことを知っていたけど、使ったことがないという人や、存在を知らなかったという人にとって「入口」になったという手ごたえは感じています。一方でまだBARTHを使ったことがないという人へのフックをどう付けるかというところに毎回苦心しています。

ーー苦心からうまれた3つの事例は、それぞれアイデアにきらめきがあり、話題を呼びましたね。

柴野:「寝顔」を募集した泥睡は、ペットの寝顔やお子さんの寝顔……愛してやまない存在の無防備な、愛らしい姿をみんなに見てもらいたいという気持ちから関心を持っていただきました。これはまったく違う切り口のようですが「睡眠」はBARTHのテーマでもあるので、きちんと商品紹介へとつなげられます。実際に、想定より多く3,500件ほどの寝顔が集まりました。

――では、NYTについて教えてください。

柴野:これは「BARTH BEAUTY」を発売したタイミングで、新聞の号外をパロディにした企画です。サンプルと印刷物を20,000セット用意して、新製品の発売を新聞の号外のように告知しています。

――これは湯船につけると文字が浮き出たら面白いというアイデアが先行して、印刷方法や紙を探されたんですか?

柴野:新商品発売を新聞の号外として知らせる、その新聞は湯船につけると文字が出てくる仕組みというかたちで、印刷方法などのフィジビリティーを含めて提案していただきました。

――実際に配布されたものを拝見すると、本当に文章などがわからないつくりになっているんですね、楽しいです。

柴野:楽しいんです(笑)。新聞と製品を受け取った人が、実際にBARTH BEAUTYを入れた湯船で、印刷物に浮かびあがってくる商品特徴を読んでいただけるというもの。サンプル品を実際に試していただくための動線がきちんと設けられた素晴らしいアイデアでした。

実際にサンプルノベルティーを使って効果を体験すると同時に、この新聞で商品を理解してもらうことがセットになった素晴らしいアイデアでした。このコアアイデアを活かしつつ、「配って終わり」にならないよう、さらに何ができるかディスカッションを深めていきました。

小野里:試供品サンプリングを実施するときに、どうやって配布品を使ってもらうかという課題が僕たちにはあります。

ボディケア製品のサンプルは、みなさんに受け取ってくださるんですが、捨てられてしまったり、旅行の時に使おうと保管されてしまったり、実際に試してもらえない場合が多いのです。

――たしかに身に覚えがあります。NYTには、受け取った側が実際にお風呂で試すという動線が用意されていました。ほかの事例の「実際に試してもらう」ためのアイデアはどのようなものですか。


小野里:美容中では、お風呂での過ごし方をイメージした全24種類の「実はこれ、美容中。」イラストカードを用意しました。街頭サンプリングは、10,000個を東京都内10カ所で配布したのですが、ランダムでキャンペーンイラストをひとつ封入しました。

柴野:「これわたし!」と、観た人に共感してもらえるイラストにしています。あとは、小さいお子さんを育てているお母さんをターゲットにして、保育園で配布されているフリーマガジン『ぎゅって』を用いてサンプリングを行っています。

――「ちゃんと肩までつかりなさ~い」はまさに子育て中のママがターゲットですね。

小野里:街頭分も、そのイラストに響きそうな人が集まるというテーマで、サンプリングエリアを選んでいます。

柴野:感度の高い、働く女性が多そうだとして表参道、仕事でお疲れ気味の方が少なくなさそうな田町・品川、カルチャー的に反応してくださる人が多そうな渋谷、新宿など実施場所に選んでいます。

――投稿したハガキが「読まれなかった」と落胆するラジオリスナーがいたり……

小野里:それ、柴野さんです。

柴野:あるお笑い芸人さんのラジオ番組リスナーでハガキ職人なんです、わたし。

――広告担当者がきちんとペルソナに反映されていたとは!……このイラストはコピーがゆれたデザインになっているところがかわいいですね。

柴野:お風呂の湯気という感じもありつつ、ちょっと脱力系でゆるっとした感じにしています。

――ピールオフ広告では、どれくらいのノベルティーを用意されるんですか?

柴野:美容中の渋谷駅の事例では、960個貼り付けました。

――何度か貼り替えてのトータル個数ですか?

柴野:掲出した道玄坂ハッピーボードAは、かなり大きな媒体で、960個すべてを広告掲出と同時に貼りだしました。

――ピールオフ広告はノベルティーの貼り替えは行えるんですか?

柴野:今回は、ピールオフ広告のサンプル品をあえて補充せずに、街頭でのサンプリングを増やしました。

小野里:受け取ってくださる人が、1,000人と2,000人程度の違いなら、広告効果にそこまで大きな違いがあるわけではないんですよね。

――どれくらいの時間でピールオフサンプルの配布は終了したのでしょうか。

柴野:今回は、3時間弱ですね。一瞬で配布が終わったというよりも平日日中の実施だったので、まばらに絶え間なく人の往来がありました。12時頃に掲出して、夕方までには終わってしまいました。

小野里:ちょうどよかったですね。あんまり人が集まり過ぎても広告自体のイメージを観てもらえないし、全体感が伝わらないので。

――そう考えると配布終了後のために大きなスペースを活用したメッセージ性のあるクリエイティブであることも大切ですね。掲出に立ち会われて、どんな反響が聞こえてきましたか?

柴野:販売している製品と同じモノ(1回分3錠入り税込462円)を配布するので「これ高いやつだ!もらえるの?」と喜んでくださる声が1番聞こえました。ピールオフ広告だけでなく街頭サンプリングでも同じように、製品をご存じの方がお連れ様に「これいいやつだから、もらった方がいいよ」と声をかけてくださることがよくあります。

――図らずとも紹介してくださることになるんですね。

柴野:ありがたいことですし、もっと認知度を高めていきたいです。そのためにもきちんとストーリー、文脈を意識して、メッセージのある広告施策を行っていきます。

――泥睡中でのノベルティー数を教えてください。

柴野:泥睡中は、242個でした。新宿駅(メトロプロムナード)は始発から掲出しました。このときはノベルティーの補充も行ってトータルで484個配布しました。

(前編・了)

続く後編では、BARTHが銭湯コラボを行わない理由や、ブランドM&Aをめぐる舞台裏、ターゲットペルソナの変遷について深く掘り下げたお話をうかがいます。

(取材・文 服部真由子)

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