天文台浴!? 天体観察が体験者に与える癒し効果を実証実験、新たな体験価値を地方から

公開天文台の天体観察を通して利用者のウェルビーイングを高める効果が期待できる「天文台浴」。その科学的な日本初の実証実験が熊本県の南阿蘇ルナ天文台で2024年9月10日(火)に実施されると発表がありました。

これは、博物館見学を通して博物館の持つ癒やし効果を人々の健康増進・疾病予防に活用する「博物館浴」研究の一環として、九州産業大学と南阿蘇ルナ天文台が取り組む連携事業です。

博物館浴とは、「森林浴」のように博物館の⾒学を通して癒しを感じ、⼼⾝の健康増進につなげる試みのこと。現在、ヨーロッパなどで研究が進められています。たとえば、キングス・カレッジ・ロンドンでは、ウェルカム・トラストの助成⾦による、⼤規模な国家研究プロジェクト「シャーパー」の取り組みが⾏われています。この取り組みは、サウス/イースト・ロンドンエリアを対象として、⼼の健康のための芸術に基づいた介⼊効果と拡張性を探ることが⽬的です。

このプロジェクトは、臨床医・研究者・慈善団体・芸術家・⼤学の保健医療専⾨家などのチームによって実施され、産後うつや産前産後の⼼の健康、パーキンソン病、脳卒中をテーマに、3つの芸術介⼊プログラムが組まれており、800⼈の市⺠の参加を⾒込んでいます。

また、国⺠保健サービスの組織と、臨床責任者を触発し、「社会的処⽅箋」の範囲を拡⼤して、エビデンスに基づいた芸術の介⼊を定期的に「処⽅」できるようにすることを⽬標としており、まさに国家レベルで取り組まれている活動といえます。

⽇本では、九州産業⼤学 緒⽅泉 特任教授が「博物館浴」の第⼀⼈者として全国各地で実証実験を⾏っています。博物館⾒学前後の⾎圧と⼼拍数を測ったり、⼼理テストを実施したりと、⼼⾝の状態の変化を調査。これまでに全国75館で開催し、1094人のデータが収集されています。

日本には、一般の方を対象に、誰もが覗ける望遠鏡を使って解説員が天文を解説するサービスを行う天文台が300施設以上あり(※1)、世界有数の規模を誇ります。そのような望遠鏡を使った公開活動を中心に行う施設は「公開天文台」と呼ばれています。公開天文台は研究活動そのものよりも、星空や天体を通した生涯学習の機会を提供し、その利用者の豊かな人生に資すること、つまりウェルビーイングの向上などが主な目的とされています。

南阿蘇ルナ天文台では、公開天文台は博物館の一種であるという観点から、天文台で星を観察したり、宇宙や星空について学んだりすることによって得られる癒やし効果や活力に着目。博物館浴の一種である「天文台浴」を提唱し、「天文台浴」のウェルビーイングを高める効果を最大限に享受できる「Luna天文台浴プログラム」を宿泊体験型施設で提供しています。

日本国内に多数ある既存の公開天文台とヨーロッパで研究の進む博物館浴を結びつけ、新たなウェルビーイングを高める選択肢としての効果を科学的に実証しようという今回の取り組み。天文台をよりいっそう活用していく選択肢が広がり、その価値が認知拡大していくことで、新たな地方創生の施策の入り口としての広がりが期待できます。

新しいもの、珍しいものに目を奪われがちですが、すでにあるものの価値を見つめ直し、より時代に合わせた活用方法を探ることは、企画・施策の原点として大切だという気持ちにさせてくれる取り組みがありました。

・※1参照元:日本の公開天文台の分布・望遠鏡の口径. 公開天文台白書. 日本公開天文台協会. 2006(一部加筆)2024年9月2日参照

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