【Part 3】第56回スーパーボウル広告まとめ

アメリカンフットボール(以下、アメフト)の優勝決定戦である第56回スーパーボウル(以下、スーパーボウル)が、2月13日に開催されました。スーパーボウルとは、プロアメフトリーグNFLに参加している32ものチームの内、レギュラーシーズンとプレーオフを勝ち抜いた上位2チームがその年の頂点の座を賭けて競う、規模、経済効果ともに世界最大級のスポーツイベントです。

毎年視聴率が40%を超えるスーパーボウルは、多くの企業が渾身の広告を出稿する場としても知られ、その広告枠は30秒で650万ドル(約7億5,000万円)と言われています。

今回はアメリカ全土に放映されたCMのなかから、オフィシャル素材があるものをアルファベット順に10ずつ分け、合計6記事に分けてご紹介いたします。

過去のまとめはこちらから
【Part 1】第56回スーパーボウル広告まとめ
【Part 2】第56回スーパーボウル広告まとめ

「Stuff」(Expedia)

航空券からホテル、現地空港からの交通手段まで、旅行に関するすべてをワンストップで予約できるサービスExpediaは、人生において大切なことは物質的な満足感を得ることではなく、旅先でさまざまな知見を得ることだというメッセージを込めたCMを公開しました。

CMは「スター・ウォーズ」シリーズの人気キャラクター、オビ=ワン・ケノービ役として知られる人気俳優のユアン・マグレガーが、カメラ目線でモノローグを語り続ける構成となっており、「この世には物が溢れかえっている。良い物が、本当にたくさん転がっている」と視聴者へ語りかけます。

ユアンがすぐ横に視線を向けると、そこには高級感溢れる自動車や、ハイブランドの香水を手にした女性が。

その後も歩みを進めながら「でも、物なんてそんなに大切じゃない。人生を振り返った時に”もっと薄いテレビを買っておけばよかった”や”もっとスマートなスマートフォンを買っておけばよかった”てと後悔している人を見たことがあるかい? 買っておけばよかったという後悔が人生に大きな影響を及ぼすと思うかい? それよりも、行っておけばよかったと思う場所の方が多いと、そう感じないかい?」と語るユアン。

動画は、”Save more on the things that matter(人生において本当に大切なことにもっとお金を使おう)”というキャッチフレーズで幕を下ろします。

「Don’t Miss Out on Crypto: Larry David」(FTX)

仮想通貨取引所のFTXは、仮想通貨に投資をしたいすべての人に向け、簡単かつ安全に参入できるということを訴求するため、あえて今まで人類にとって有益な発明をもたらした人々に対して否定的な意見を述べてきた主人公を中心に描きました。

コメディアンや俳優、映画監督としても活躍するラリー・デイビッドを主役にしたCMは、人類が車輪を発明した太古の時代からはじまります。

「車輪を発明したのですが……」とラリーの元を訪ねる庶民の男性に対し、ラリーは「こんなもの何の役に立つんだ。回るだけならベーグルだって回るし、しかも食べることだってできるのに、こんなもの使い物にならないじゃないか」と一蹴します。

その後もフォークを発明した男性に対して「そんなもの、俺の手に10本付いてるよ!」と揶揄したり、トイレを発明した男性に向かって「家の中で用を足せと言うのか! 下品なやつめ、動物か!」と怒鳴りつけたり、コーヒーを持ってきた女性には「こんなまずいもの飲めるわけがないだろう! なんだか身体もむずむずするし、とにかくこんなものはいらない」と一蹴。彼を見ていると、文明を前進させた偉大な発明品たちがもしかしたら大したものではないのでは……という気になってきます。

その後も電球を発明したトーマス・エジソンに「で、これが何の役に立つんだ? 正直この活動は全部時間の無駄だと思うぞ」と言い放ったり、ポータブル音楽プレイヤーの開発会議を行なっている日本企業に飛び込んだ際には「バカか!」と部屋中の人々を日本語で罵倒したり、先見の明が一切ない人物として描かれるラリー。

現代に戻ってきたラリーに向けて「仮想通貨をやるならFTXですよ」と語る若い男性も、もちろん否定されてしまいます。

しかし、最終的には”DON’T BE LIKE LARRY(ラリーのようにはなるな)”というキャッチフレーズで幕を下ろし、新しいものに対して抱く不安や否定的な意見には決して飲まれずに、果敢に踏み込んでいくことが人類をよりよい方向に前進させるというメッセージを伝えています。

「Dr.EV-il」(General Motors)

アメリカを代表する自動車メーカーGeneral Motorsは、2025年までに世界中で30種類もの電気自動車(以下EV)を展開するというメッセージを、アメリカの人気コメディ映画「オースティン・パワーズ」から、マイク・マイヤーズ扮する悪の親玉Dr.イーブルが主役に伝えました。

General Motors本社を乗っ取ることに成功したDr.イーブルは、世界征服に一歩近づいたことを祝いつつ、次の一手を部下たちと相談していると「これで自動車の排出ガス量を減らせますね」や「思う存分世界のCO2排出量削減に尽力できるぞ」と返ってきます。悪の組織の一員であるにも関わらず、なぜか人類にとって良いことをしろと言われたDr.イーブルは怒りをあらわに。

「わたしは悪の組織の長だぞ。そんな慈善団体の運営者なんかではない!」と言い放つDr.イーブルに対し、部下たちは口々に「ですが、今は温室効果ガスや二酸化炭素の排出が世界1の悪で……ボス、あなたは世界で2番目に悪い存在になってしまいました」と返事をします。

知らぬ内に世界最大の悪ではなくなってしまったDr.イーブルは、最終的に諦めて”EVerybody in(みんなで二酸化炭素排出を減らすぞ)”と、EVと”Everybody”を掛け合わせたセリフを叫びながらGeneral Motorsの車に乗り込みます。

「A Quick & Easy Shave」(Gillette)

男性用衛生ブランドGilletteは、自社のシェービングフォームとカミソリを組み合わせて使えば、洗顔をするようにスムーズな髭剃りができるということをアピールしました。

洗面所の鏡の前に立つ男性が棚からGilletteのフォームを取り出してカメラが左に動くと、あっという間に顔にフォームが塗られています。

流れるような手つきでカミソリをつかむと、またもや一瞬の間に髭剃りが終わり、まるで洗顔かのようなスピードで一連の動作をこなしているよう。

最後には、クローゼットの前を通るとシャツが自動的に飛んできて、ドアを開けただけで目的地に辿り着き、「Gilletteの髭剃りは、顔を洗うのとほぼ同じ」というキャッチコピーが画面に映し出されて動画は幕を下ろします。

「Seen on Pixel」(Google)

Googleが展開するスマートフォンGoogle Pixelは、あらゆる肌色の人であっても適切な明度調整で自然な写り方を実現する新機能「Real Tone」の登場をアピールしたCMを公開しました。

「肌の色が生まれつき暗い人は、いつの時代も写真写りが悪いことに悩まされてきました」「どの卒業アルバムを見返しても、わたしが写っている写真はすべてひどい出来です」というナレーションとともに、さまざまな黒人の写りが悪く表情が読み取りにくい写真が画面に映し出されます。

「Google Pixel 6のReal Toneが、その悩みを解決します。すべての人が、自らの美しさを誇れる世界を目指して」というキャッチフレーズが画面に映し出されると、次々と色鮮やかな写真が流れていき、そのどれもが有色人種の人を被写体にしており、自然な色合いではっきりと顔がわかるものになっており、その新機能の優位性を示しました。

「I’ll Take It」(Greenlight)

収入や支出といった家計簿の管理から、投資状況までをもワンストップで見ることができるサービスGreenlightが、自社の特長を伝えるために後先考えずに買い物をしてしまう男性の姿を描き、自分の懐事情を把握するために最適なサービスを提供していることを表現しました。

港で握手をする男性の様子を映すところからはじまる動画。「ぼくは船酔いしやすい体質なんだけど……買うよ」と満面の笑みをカメラに向かって浮かべ、続けて「大丈夫、ぼくはお金の管理が得意なんだ」と自信たっぷりの表情を見せます。

その後も恐竜の骨格標本や中世の騎士の鎧、自分の顔が大きくプリントされた気球や見た目を完全再現したアンドロイド、挙げ句の果てにはペガサスなど、ありとあらゆるものを深く考えもせずに「買うよ」の一言で取引をしていく様子が描かれます。

そんなある日、靴屋で電話をかけながら棚の商品すべて購入しようとする男性が、突然電話に向かって「え、破産しただって? 一体どういうことだ?」と叫び慌てる様子が。

一部始終をすぐ隣で見ていた男性が、子どもたちに向かって「いいかい、ああいう風になってほしくないから父さんはGreenlightで資産を管理しているんだ」と告げ、動画は終わります。

自分のお財布事情を把握せずに買い物をしているとどういうことになってしまうかを描くことで、収入や支出といった家計簿の管理から、投資状況までをもワンストップで観れると言う自社サービスの強みを前面に打ち出しました。

「Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty」(HBO)

1980年代にアメリカのバスケットボールリーグ(以下、NBA)の頂点に君臨し続け、勝ち数だけでなく絶大な人気を誇ったロサンゼルス・レイカーズの栄華を描いたドラマ”Winning Time: The Rise of the Lakers Dynasty”のトレーラー映像を放映しました。

1980年から1991年までの間に9度の決勝戦進出を果たし、その内5度の優勝経験を誇る、当時を代表するNBAチームでもあるレイカーズ。そんな彼らの人気を後押ししたのはその圧倒的な強さだけではなく、試合の合間のショーやマジック・ジョンソンをはじめとした超一流プレイヤーたちでした。

レイカーズが一般的なチームから時代の覇者になるまでの軌跡を描いた本作の見どころを余すところなく映したトレーラーを、ターゲットである多くのスポーツファンが観るスーパーボウルで放映することで大きな注目を集めました。

「Mayo Tackles Food Waste」(Hellmann’s)

ケチャップやマヨネーズをはじめとした調味料を販売するHellmann’sが、食に携わる会社として廃棄食品を減らしたいというメッセージを込めたSDGs文脈に沿った動画を公開しました。

同社の主力商品でもある”マヨ”ネーズにちなみ、主役として抜擢されたのは元アメフトコーチのジェロッド・メイヨ(Jerod Mayo)。賞味期限が切れかかった食パンを捨てようとする男性に「グリルチーズサンドイッチのパンとして使えるだろ!」と叫びながらタックリしたり、古くなりかけているマヨネーズを手にゴミ箱に向かう女性には「ポテトサラダに使えよ!」と言い放ちます。

「Her Health is Her Wealth」(Hologic)

女性疾患に関する診断器具や診断薬を取り扱うHologicは、スーパーボウルのハーフタイムショーにも出演したR&B歌手メアリー・J.ブライジ主役のCMを公開。新型コロナウイルス感染症の影響で下降傾向にある女性疾患の定期検診を受けることの重要性を説いています。

日々のボイストレーニングやワークアウト、レコーディングや打ち合わせなど多忙な日々を送るメアリー・J。目まぐるしく進んでいく時間の中であっても、自らの健康が何物にも代えがたい資産であるということを自覚している彼女が、仕事の合間を縫って子宮がん検診に訪れる様子が。

スーパーボウルを見ている人なら誰もがスーパースターと認識している女性を起用し、自身の健康を大切にしている様子を描き、その重要性を伝えました。

「Duality Duets ft. DJ Khaled」(Intuit Quickbooks & Mailchimp)

メールを活用したマーケティング支援ツールのMailchimpと、オンライン経理ソフトを展開するIntuit Quickbooksは、あらゆる小規模ビジネスを営む経営者たちをサポートできるというサービス特長を描いたCMを共同で制作しました。

DJキャレドの有名楽曲”All I Do Is Win”に合わせてさまざまな小規模ビジネスのオーナーたちの様子を描いているこのCMは、無事グランドオープンを迎えることができたアパレル業の女性が、颯爽と店内を歩いていると未払いの請求書を見つけてしまい途端に落ち込む様子を描くところからはじまります。

常連客と思われる男性に笑顔で目配せを送るレストランシェフの経営は、一見すると順調そうに見えますが、カウンターの内側に積まれた請求書の山の上に「チラシの中身をすべて修正する」というメモを見つけてしまい、彼もまた落ち込んだ表情を浮かべてしまいます。

その後にIntuit Quickbooksを導入し余裕な表情をする女性の様子を描くことで、シンプルなUIでビジネスに必要なあらゆる情報をリアルタイムに把握できることを訴求し動画は終了。どんな業態であってもマーケティングと経理を統合して管理できるサービスを利用することで、円滑な経営状況を作り出せるということをアピールしました。

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