カンヌライオンズ2021「Entertainment」グランプリ受賞作品まとめ

6月21日〜25日にオンラインにて開催された「Cannes Lions 2021」。卓越したエンタメ性を持った作品に贈られる「Entertainment」部門において、純粋なコンテンツとしての作品性を評価する「Entertainment Lions」、音楽業界における優れたコラボ事例や独創性を評価する「Entertainment Lions for Music」、さまざまなスポーツやeスポーツのファンとブランドを繋ぐ架け橋となった事例を評価する「Entertainment Lions for Sports」の3つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Entertainment

「IN LOVE WE TRUST」(Sinyi Realty)

台湾の不動産会社Sinyi Realtyが公開した「In Love We Trust(愛に誓う)」は、とある役所の戸籍課で働く女性の姿を描いていた短編動画。日々婚姻届や離婚届の受理を行う彼女は、窓口にくる人々が見せるさまざまな表情を観察することが趣味で、結婚するのにどこか不安げな面持ちの人や、離婚するのになぜか笑顔の人などを見るうちに「離婚とはお互いのことを知りすぎてしまったときに起こるイベント」なのではないかと結論づけます。

多くの人の結婚や離婚の瞬間を見届けた主人公の自身の恋模様と、彼女が遭遇するさまざまな形の愛を生きる人びとのようすを映した短編動画は、わずか7分ながらも映画に匹敵するほどの見応え。なお、ブランデッドコンテンツのため、サービス自体の登場シーンは少ないものになっています。

「SWIPE NIGHT」(Tinder)

世界の終焉が迫り来る中で、生き残るための選択肢をスワイプ機能で選んでいくTinderのインタラクティブドラマ「Swipe Night」。内容は「彼女の車を奪うか? それとも乗せてもらうか?」や、「助けを求める男に手を貸すか? それとも無視するか?」などの判断をしていきながら物語を進め、最終的には自分と同じような選択をした相手とマッチするという仕組みになっています。

マッチング自体ににエンタメ性を付与することで400億ものインプレッションを獲得し、Twitterでのアクティビティを1,640%も上昇させることに成功しました。

Entertainment Lions for Music

「Lil Nas X – Old Town Road (Official Movie) ft. Billy Ray Cyrus」(Columbia)

ミュージックビデオにストーリー性を足し合わせたラッパーLil Nas Xの「Old Town Road」のオフィシャル動画。西部劇さながらの舞台で、銀行強盗として追っ手から逃げるLil Nas Xがひょんなことから現代のアメリカにタイムリープしてしまう様子を描いています。

楽曲内で実際に歌唱を行うLil Nas XとBilly Ray Cyrusだけでなく、Chris Rock、Haha Davis、Rico Nasty、Diplo、Jozzy、Young KioやVince Staplesなどのスターたちがカメオ出演している動画は、2021年6月時点で約6億再生と1,200万もの高評価を獲得しました。

「FEED PARADE」(Mercado Livre)

新型コロナウイルス感染症の影響で中止となってしまったLGBTQの祭典・Pride Paradeをバーチャル上で行った南米の大手通販会社Mercado Livre。例年Pride Paradeが行われる大通りを空中から撮影し、公式Instagramにその様子を投稿。ユーザーに任意の写真に自らをタグ付けしてもらうことで、まるで多くの人が実際に参加したかのようなフィードが完成しました。

さらに、そのInstagramアカウントのフィードは、ブラジルで最も有名なLGBTQアーティストGloria Grooveの新作ミュージックビデオの舞台となり、Gloriaのファンを中心に多くのLGBTQや一般参加者が登場するという演出も。

パンデミックに負けることなくInstagram上で実施されたPride Paradeは、6万人もの参加者を集め、通常時の1,200%ものエンゲージメントを獲得しました。

Entertainment Lions for Sports

「ETERNAL RUN」(Asics)

総合スポーツウェアブランドAsicsが新作のランニングシューズの発売に合わせて実施した「ETERNAL  RUN(永遠のレース)」。「ゴールがあるから限界が生まれるということは、ゴールラインを排除することによって全アスリートの限界を超えることができる」というコンセプトのもと、アメリカ・ユタ州にある塩類平原で文字どおりゴールのないレースが開催されました。

このレース、自らの最適ペースを計測された22人ものランナーたちが、走れなくなるまで走り続けるというものでしたが、結果的には71%ものランナーが事前に予想されていた距離を大幅に上回る記録を叩き出し、コンセプトである「ゴールラインを排除することによって全アスリートの限界を超えることができる」を実証しました。

疲労軽減に特化した新型ソールGUIDESOLEを搭載したAsicsの最新ランニングシューズの効果を示すとともに、アスリートの活動限界を超えていくというテーマに多くのメディアが着目しました。

「SALLA 2032」(House of Lapland)

フィンランドの最北端に位置するラップランドの「SALLA 2032」は、北極圏に位置し、年間の最低気温が-45.3度にもなる同国の小さな自治体・Sallaを舞台に地球温暖化の抑止を訴えました。

このSallaは、このまま温暖化が進めば2032年には夏の平均気温が15度になってしまうとの予測がされていますが、この15度という気温は夏季オリンピックを主催するための理想的な気候とされており、Sallaはこれをアピールポイントにし2032年のオリンピック開催都市として立候補しました。

しかしこの立候補、実際はオリンピックの開催が目的ではなく、本当に伝えたいメッセージは「2032年に平均気温が15度になってしまうことを避けたい。地球温暖化を阻止したい」というもので、このまま気温が上昇しつづけてしまえば、寒さと共存してきた自分たちの国がオリンピックにとってちょうどいい気候になってしまうという皮肉を含んだ悲痛な叫びだったのです。

この”立候補”のために、グッズやノベルティから専用のWebサイト、ロゴやマスコットキャラクターまでをも作りオリンピック開催都市としての魅力をアピールしたSallaですが、この裏には大きな想いが込められた施策は、世界中からの注目を集めました。

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