IMJとアクセンチュアが手を組み生まれた フォルクスワーゲン「up!」ブランドムービー 協業の成果とは

Case: UP! ALL NIGHT
Interview & Text : 市來 孝人

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、IMJとアクセンチュア インタラクティブが手がけた、フォルクスワーゲンの新車種「up!」のブランドムービー「UP! ALL NIGHT」を取り上げます。
スペックの訴求ではなく、ドライブの道中で起こる体験にフォーカスし、ドライブ体験者の表情や行動を切り取ったこのムービー。Vol.1はモデルの遠藤政子さんとその友人による真夜中のドライブ、Vol.2はカナダ出身で日本在住のYouTuber テイラーさんが来日する友人を空港に迎えにいき、東京をドライブ。

最良の顧客体験=エクスペリエンスを創造すべく協業体制を構築したという、創業21年、国内最大規模のデジタルマーケティング支援企業であるIMJとデジタルエージェンシーとして世界的に定評のあるアクセンチュア インタラクティブ。両社が組むことによって生まれたコンテンツの舞台裏やムービーに込められた狙いについて、株式会社アイ・エム・ジェイ アカウント統括第5本部 アカウントマネジメント第2部 部長 プロデューサー 村上洋希さん、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 シニア・マネジャー 清水武穂さん、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 マネジャー 野田慎太郎さん、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 コンサルタント 柳太漢さんにお話を伺いました。

車自体ではなく、みんなが笑っているようなシーンを重視

—まずはそれぞれの方のご担当と、今回の動画制作のきっかけについて伺えますか?

村上:案件の統括は私、ブランドストラテジーとクリエイティブストラテジーを清水、野田、柳が担当しました。

清水:最近、弊社では、ブランドストラテジーおよびクリエイティブストラテジーの専門チームを立ち上げました。このチームでは、今まで「Brand Story Telling」と言われていたものが、「People Story Doing」に変わろうとしており、その時代変化の中におけるブランドとクリエイティブのあり方や、ビジネスインパクトを創出するブランドとクリエイティブのあり方を日々考えています。今回のプロジェクトでは、フォルクスワーゲンというブランドが顧客とどのような関係性を作っていくか、という視点でブランド戦略立案から実制作までを手がけました。

野田:フォルクスワーゲン史上最小であるup!のブランド構築では、日常使いもできるし、高速も走るという観点で、「近所の拡大化」を体験の一つとして定義しています。自転車を持つ感覚に近いですね。もう一つが「時間の自由」。この車があれば公共交通機関が走っていない時間でも自由に近所を拡大できる。そういう視点から、今回の動画コンテンツでは「車がないとできないこと」を描いています。

柳:コミュニケーションのターゲットは、車を所有していない20代から30代前半の若者です。「近い将来の購買層」を意識して、彼らにとって「車=フォルクスワーゲン」という図式をつくりたいと考えました。きっと今は必要ないと思っているかもしれませんが、車があればこそ出来る体験と魅力を最大限に見せるべく、夜中の旅をテーマにしています。

野田:大学時代などに、夜な夜なみんなでドライブに行ったりしますよね。今は社会人でも「あ、あの時こんなことあったな」と思ってもらえるようなシーンを描いています。

清水:表現については「とにかく金属臭をなくす」ことを意識しています。車を宣伝する時、通常は製品そのものの質感が全面に出ますが、今回は限りなくその部分を排除し、その車を通して得られる体験の方を重視しています。

柳:車単体のシーンをあまり多く入れないようにして、体験の中でみんなが笑っているシーンや、普段の生活が車によって上質に見えるシーンを重視しています。

—そういう中でキャスティングや、ロケーションについてはどのように決めていったのでしょうか?

野田:Vol.1はインスタグラマー・モデルの遠藤政子さんをメインに据えています。実は一緒に登場する3人は実際の友達なんです。ストーリーも決め込まず、とことんターゲットの若者に寄り添うようにしました。Vol.2は外国人のYouTuber テイラーさん。こちらは日本のよくある光景を外国人の目を通して切り取るとどうなるのかがテーマでして、ある程度ストーリーを作って、Vol.1と少し色を変えています。

清水:ダイバーシティ感も重視しています。現代人はさまざまな人種や価値観の方がいるボーダレスな世界を生きていると思うので、その側面も見せています。

柳:ロケーションについては「近所の拡大」をリアルに感じさせることを重視しています。都心のドライブであれば「横浜まで出る?」「海まで行っちゃう?」ということもあると思うので、大桟橋や、千葉の海を題材にしています。
今後もさまざまなテーマやシチュエーションで企画を継続・発展させていきたいと考えています。

—制作時、ディテールでこだわられた点がありましたら教えていただけますか?

柳:色味にはすごくこだわりました。夜のドライブだと暗くなりがちですが、ワクワク感を表現するために発色の良い方向に振っています。Instagramのフィルターのようなイメージですね。また、Vol.1は女性を中心にしたターゲットでしたが、やみくもにピンクを使ったり可愛いイメージをつくるのではなく、性別を意識しないニュートラルなトーンで制作しました。

両社の強みであるストラテジーとエクゼキューションを組み合わせる

—ソーシャル上での反応はいかがでしたか?

野田:定性的なソーシャルボイスはかなりウォッチしていて、「この場所はどこですか?」「この場所、実際に行ってみました」などといった声が印象に残りました。今回は動画をアップするだけで終わらず、「行ってみたい深夜のドライブスポットはどこですか」など、ソーシャル上でのユーザーとのコミュニケーションも頻繁に行っています。

村上:IMJとして元々ソーシャルチームという専門のチームを抱え、定性・定量両面のデータを元にソーシャルを運用してきた実績があります。そこに今回のようなインパクトのあるコンテンツを出した時に、どのように見てもらえるかを検証して地道に運用しています。段階的に投稿して広がりを強くしたり、Facebook、Twitterなどサービスによってコピーを使い分けたり、細かい部分を調整していきました。

—両社でタッグを組んで行っている中で感じられる変化についても、ぜひ教えてください。

村上:
アクセンチュアは主に企業の事業戦略の立案や実行を手掛けていますが、その中でもアクセンチュア インタラクティブは顧客体験の戦略立案や実行を手掛けています。IMJはエンドユーザーに寄ったコミュニケーション戦略や実行を手掛けてきました。その両社が「最良の顧客体験を提供する」という共通のスローガンを持って協業していることが上手くいっている要因だと思います。「これだったらユーザーにどう向いてもらえるか」「ユーザーにこう見られたいよね」「ユーザーとこういう関係性を構築してもらいたいよね」という同じ目線で常に話ができています。今後もアクセンチュアの得意領域と、弊社の得意領域を融合していけたらと思っています。

株式会社アイ・エム・ジェイ アカウント統括第5本部 アカウントマネジメント第2部 部長 プロデューサー 村上洋希さん(左から1番目)、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 シニア・マネジャー 清水武穂さん(左から2番目)、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 マネジャー 野田慎太郎さん(左から4番目)、アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 コンサルタント 柳太漢さん(左から3番目)

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る