“愛の力”で飲酒運転の抑止を…アルコール検出機能付き自転車ロック「ALCOHO-LOCK」開発の狙いとは
Case: KOOWHO「ALCOHO-LOCK」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はバイクショップKOOWHOが開発・製品化を発表した、世界初のアルコール検出機能付き自転車ロック「ALCOHO-LOCK」(アルコホロック)を取り上げます。
この製品は、ロック本体にアルコール検知センサーとBluetoothを搭載。本体の検知センサーに息を吹きかけ、アルコールが検出された場合は、スマートフォンアプリの画面にアルコールの濃度やアラートが表示されるという仕組みです。また、家族・恋人・友人など登録したパートナーのスマートフォンにも、検出されたアルコール濃度数値と検出場所がアラートとして送信され、パートナーは飲酒自転車運転をしないよう”説得”することが出来ます。現在はALCOHO-LOCK公式サイトにて予約受付中。この製品開発の狙いについて、株式会社 グレイワールドワイド Senior Copywriter 佐藤 秀昭さんに伺いました。
大切な人を思い出してもらうことが飲酒運転の抑止につながる
—元々このプロダクトが生まれたきっかけは何ですか?
Executive Creative Directorの尾形がKOOWHO代表の永井さんと知り合いだったこともあり、何かKOOWHOさんとコラボして社会的意義のあるプロジェクトをできないか、というところから企画がスタートしました。最初の大きな気づきは、海外を含め自動車の飲酒運転防止キャンペーンはたくさんあるのに、自転車では見たことがないなということでした。そこから「DON’T DRINK & RIDE」というコピーが生まれ、それを元にしたいくつかの企画の中から実現に至ったのが、今回のALCOHO-LOCKでした。
—6月に道路交通法が改正され、自転車の危険行為を厳しく取り締まるようになったという社会的背景もあってということでしょうか?
実はその前、昨年の12月頃にすでにKOOWHOさんにご提案はしていたんです。そこからプロトタイプができたのが今年の3月頃です。KOOWHO代表の永井さんは自転車業界では有名な方で、自転車に関する本の監修もされています。自転車に乗る人に対するマナーの教育や啓蒙等もしっかり考えていこうという方なので、自転車のプロの目から様々なアドバイスを頂きながら完成させていきました。
そんな中、完成に至ったタイミングでちょうど道交法の改正があって、社会的にホットなテーマだったので多くのメディアで取り上げて頂けました。実際、自分の周りにも、飲酒自転車運転が刑事罰の対象になるということを初めて知ったという人もたくさんいました。
—アプリの仕組みについて教えてください。
ロックとアプリ(Android版はリリース済み/iOS版は申請中)はBluetoothで接続されていて、ロックに息を吹き込んでアルコール検査をし、アプリの画面上の「解錠」をタップするとロックが開く仕組みになっています。アルコールが検出された場合に鍵が開かないと放置自転車になってしまうので、アプリの方では鍵が開く代わりに自転車を押して帰るよう注意を促すメッセージを表示するようにしています。
アプリには「友達機能」があって、奥さんだったり恋人だったり大切な人をあらかじめ登録できます。そうして登録した相手方のアプリにも、アルコールが検知されると「◯◯の息からアルコールが検知されました」と検知された数値と場所がアラートとして届きます。相手方には「愛の力で説得しよう!」という表示が出ますが、これをタップすると電話かメールが出来るようになっています。
こういった仕組みなので、ズルをしようと思えばいくらでも出来るんです。例えば、一緒にいる飲んでいない友達の息を吹きかけたりとか。また、検知された後に自転車を押して帰るか乗って帰るかはその人次第です。ただそこは、大切な人を思い出してもらうことが飲酒運転の抑止につながるのではないかと思っています。
—制作にあたって苦労された点はありますか?
プロボノプロジェクトとして実施したので、莫大な予算があったわけではありません。ロックとアプリの制作は、自社の海外ネットワークを活かして、グレイ・シンガポールの人からインドの制作会社さんを紹介してもらうことでコストを抑えました。アプリはADの坂本がデザインしたのですが、坂本の指示とは異なるデザインでテスト版アプリが送られてきたり(笑)。日本とインドでクオリティに対する考え方が全く違ったので、その差を埋めていったりといった点も大変でした。
プロモーションムービーの制作を担当してくれたアマナさんも、限られた予算とスケジュールの中で良いものができるよう、いろいろと手を尽くしてくれました。
ヨーロッパから多くの引き合いも
—様々なメディアで取り上げられ話題になった印象がありますが、メディアを通しての話題化はやはり意識されていたのでしょうか。
飲酒自転車運転について考えてもらうきっかけになればいいなと思っていたので、そういう意味では話題化させることはかなり意識していました。多くのメディアで取り上げていただけたのは、社会の注目が集まっているタイミングはもちろん、いわゆる「街の自転車屋さん」がなぜこういった商品を?という意外性もあったかもしれません。
—今後の発売に向けての予定を教えてください。
年末と考えていましたが、まだ正式には決まっていません。実際に販売するには、雨などを防ぐ防水対策や、センサーの精度を高めるなどといった多くのハードルがあります。ある程度の販売数が見込める状況にならないと、販売開始は難しいかなと考えています。一方で、日本以上に自転車文化が発展しているヨーロッパなどからは多くの引き合いが来ていて、ライセンスを供与してくれないかという話や自社のショッピングサイトで販売させて欲しいという話も来ています。
—海外からの反応が良かった理由は?
海外のジャーナリストの方からの問い合わせでわかったのですが、我々が思っていた以上に、海外でも自転車の危険運転は大きな問題になっているようでした。それと、やはり日本は面白い商品をつくるというイメージがあると思うので、「また日本から変な商品が出たぞ!」と興味をもってもらえたみたいです。海外のWIREDやGIZMODE、Engadgetといった著名サイトで紹介されて、ものすごい数のシェアをされたことも大きかったです。
株式会社 グレイワールドワイド
Executive Creative Director
尾形 靖さん(中)
Senior Copywriter
佐藤 秀昭さん(左)
Senior Art Director
坂本 尊徳さん(右)
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