もうウザいとは言わせない!世界の異彩を放つYouTube広告7選
Case: Ambient YouTube Ads
YouTubeで動画を見ていて、“広告がウザい”と感じた経験は誰にでも一度や二度あるのではないでしょうか。今回は、普通のプレロール広告などとは一線を画す、YouTube視聴者のインサイト、行動特性を踏まえて生み出されたユニークなYouTube広告の事例をまとめてご紹介します。
見るものに驚きを与える斬新なケースの数々をご覧ください。
1.YouTubeの“広告スキップ機能”を応用した短いからこそ印象に残る広告
[企業名:Volkswagen]
フォルクスワーゲンの新型ビートルが、自慢の自動変速ギアを訴求するためにYouTubeに出稿した広告。YouTubeの『広告スキップボタン』は、悩ましいことに“再生してから5秒経過後”にようやくボタンを押すことができるようになりますが、今回はそこに着目した企画です。
同社がYouTubeの映像の前に出稿した動画は、旧式のビートルが走行するそばを新型ビートルが追い抜いていくというもの。その瞬間、“YouTubeの再生スライダーのスピードがアップ”して、瞬く間に広告映像が終了していくという仕掛けが施されています。
広告映像を“ウザいな~”と感じるユーザーが、スキップボタンを押そうとマウスカーソルをスキップボタンに合わせる間もなく広告映像が終了し、自動的にお目当ての動画の再生を始めてくれるという仕様です。
旧型ビートルを新型ビートルが追い越した瞬間に、“再生バーのスピードがアップし、瞬く間に鬱陶しい広告映像を終了させてくれる”という仕掛けにより、直観的に新型ビートルの“変速ギアによる加速性の魅力”を訴求しています。
同時に、新型ビートルの『“自動”変速ギア』を、YouTubeの広告映像を『“自動”でスキップする』という点に絡めて“その素晴らしさ”(≒ユーザーのためになる機能)を表現しています。詳細はコチラの動画で。
2.それは“スキップできないほど”すぐ終わる行為です。
[企業名:Ford]
フォードが、南アフリカでドライバーの交通安全意識を高めることを目的に実施したYouTubeのプレロール広告。
シートベルトを締めることはとても簡単な作業ですが、“この命を守る行為”を面倒がって省いてしまうドライバーが大勢います。「自動車に乗ったら、面倒がらずに必ずシートベルトを締めましょう!」というメッセージを、よくある恐怖訴求ではなく、シートベルトを締めることが如何に簡単な作業なのかを思い起こしてもらうことが狙いの企画です。
今回プレロール広告として、“シートベルトの着用シーン”を描いた動画を出稿。このシーンはシートベルトを締めるだけなので1,2秒で終わり、すぐさま画面が切り替わって以下のメッセージが表示されました。
A few seconds you just can’t skip.
(あなたがスキップすらできないほどの短い時間です。)
5秒足らずの動画なので広告スキップはできないですし、その必要性も感じないほどすぐに終わるというプレロール広告。「シートベルトを着用する時間や手間ってこの程度なんですよ」と視聴者へコミュニケートしています。詳細はコチラの動画で。
3.字幕を隠し、英語に集中することを余儀なくさせるYouTube広告
[企業名:Euroidiomas]
ペルーでオンラインの語学講座を提供しているEuroidiomasが実施した、“YouTUbe動画の字幕の上”に広告を掲示してしまうという施策。
ペルーの若者の多くがYouTubeで公開されている英語の動画(欧米映画等)を視聴する際に、スペイン語字幕を読んでいるというインサイトに着目したアイディア。映画に集中し、映画をより楽しむためには、字幕を追うのではなく、英語をそのまま聞き取ることが一番のため、英語習得の必要性を最も実感するであろう英語コンテンツを視聴時に、スペイン語字幕を覆い隠してしまうように英語講座の広告を掲示したのです。
広告の内容は、「もう字幕を見るのはやめよう」「アクションは画面上部で起きています(字幕が表示される画面下部ではなく)」「字幕を読むのではなく、映画を観よう」というもの。
スペイン語字幕に頼るのではなく、英語が分かれば、もっと映画が楽しめるはず。“英語ができたらいいな!”と思うまさにその時に“英語講座の広告を掲示する”という、ターゲットとタイミングが絶妙なバナー広告でした。詳細はコチラの動画で。
4.名作映画の裏には“クラシック”の存在が!? 若者にオーケストラのチケットを売り込む凄いYouTube動画
[企業名:Brazilian Symphony Orchestra]
ブラジルの有名オーケストラ・Brazilian Symphony Orchestraによる、YouTubeを活用したユニークな広告。クラシックオーケストラに縁遠い若者を取り込むために、若者との“接点”として『名作映画で使用されているクラシック音楽』に白羽の矢を立てました。
YouTubeに「ET」や「ジョーズ」、「インディ・ジョーンズ」、「スター・ウォーズ」といった名作映画の誰もが一度は聞いたことのある印象深いテーマ曲が流れる場面の映像を仕込みます。そして曲のクライマックスで画面に、“Click to see what’s behind this movie”とクリックを指示します。
視聴者がクリックすると、YouTubeの画面背景全体が“そのテーマ曲”を演奏しているオーケストラの様子に一瞬にして切り替わるという仕掛けでした。(※「YouTubeの(ダミーの)再生回数やコメント等まで含まれた映像」を流しておき、クリックで切り替えるという方法だと思われます)
この仕掛けで若者に関心を持たせた後、すぐさま“オーケストラのチケット購入サイト”への導線を表示して、顕在化したニーズを刈り取るという座組みでした。この結果、若者によるチケット購入数は40%アップし、当期予定されていた全公演が完売したといいます。詳細はコチラの動画で。
5.バーガーキングによる「“プレロール広告を皮肉った”プレロール広告」
[企業名:Burger King]
YouTubeで動画を視聴する際に表示される「プレロール広告」。“5秒間はスキップすることができない”という特性から、視聴者の中にはうっとおしく感じる人も多い、そんな“嫌われ者のプレロール広告”を、ユニークなアイディアで“笑えるプレロール広告”に変えてしまったのが、バーガーキングです。
YouTubeの人気検索キーワード「animals attack」と検索し、最も上位に表示された動画に対して流した同社のプレロール広告では、二人の男性がテーブルを挟んでこんな会話をしています。
「YouTubeのプレロール広告、まじ最悪だな!」
「この人(= PCで“この”動画を視聴しているユーザー)、せっかく動物の映像を観ようと思ってるのに、つまらないバーガーキングの広告なんて見せられちゃって。」
「お得なセットメニューなんて、ぶっちゃけどうでもいいんだよ!」
つまり“プレロール広告を、自社のプレロール広告を使って皮肉っている”というわけですね。バーガーキングは同様の映像を64パターンも制作し、YouTubeの人気動画の冒頭に配信。
普段はプレロール広告をすぐにスキップしてしまう人にも、こんなウィットに富んだ映像なら最後まで観てもらえるかもしれませんね。詳細はコチラの動画で。
6.削除された“ハネムーン動画”の意図とは? 米法律事務所の斬新なYouTube広告
[企業名:Esteban Gegerly Law Offices]
YouTubeで動画を視聴する際に、静止画として表示される『サムネイル』はユーザーに動画の内容を端的に伝える役割があります。そんなサムネイルを活用し、法律事務所「Esteban Gegerly Law Offices」が実施したユニークな広告。
動画のサムネイルを見るとわかりますが、KATEとMIKEという新婚夫婦のハネムーンの様子を収めた映像のようです。ところがクリックして再生してみると、「この動画は投稿した人によって削除されました。」と画面に表示されます。
『あぁ、この動画もう削除されてしまったんだな』と思いきや、動画はさらに続き「離婚はよくあることです。」という文言が表示され、ラストに映るのは弁護士事務所の連絡先。
幸せいっぱいのはずのハネムーン映像が、投稿した当人によって削除されたという事象から、“この二人が離婚してしまった”ことを物語っています。「どんなに愛し合っている夫婦にも、離婚の可能性はあります。もしもそうなった際には、当事務所にご連絡を!」ということを、『動画のサムネイル』と視聴時に出くわす『削除済という状況』を用いることでシュールにコミュニケートしています。
7.YouTubeのプレロール広告を利用して行方不明者の情報提供を呼びかける
[団体名:Australian Federal Police]
オーストラリアでは毎年35,000件以上の失踪届けが出され、そのうち未解決の行方不明事件は1,600件を超えるといいます。警察ではここ数年「National Missing Persons Week」と題した捜査強化期間を設け、行方不明者をひとりでも多く見つけ出そうと力を尽くしていますが、新たな取り組みとしてYouTubeのプレロール広告を利用し、行方不明者の情報提供を広く呼びかけました。
YouTubeで動画を再生すると、5秒間、行方不明者の名前・顔写真・容姿・最後に目撃された場所などの情報が流れます。もし心当たりがあれば、右下に表示されている「Yes, I have」ボタンをクリックすると、詳細な目撃情報を入力する画面に移動し、捜査に役立つ情報を入力することができます。
さらに「ジオターゲティング」という位置情報を特定する技術を用い、動画を視聴している人の現在位置に近い場所で起きた事件の情報が表示されるようにすることで、効果をより高めています。わずか5日間のあいだに120万回のプレロールが表示され、そのうち238人が「Yes, I have」をクリックし、未解決事件に関する情報提供をしたそうです。詳細はコチラの動画で。
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