「卒業アルバムの写真も盛りたい!」ターゲットインサイトをとらえたNTTドコモ×SNOWコラボの裏側

Case: NTTドコモ×SNOW『卒業“盛ルバム”』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、NTTドコモと動画コミュニケーションアプリ「SNOW」のタイアップキャンペーン「卒業“盛ルバム”」キャンペーンを取り上げます。一生残る大切な思い出のはずなのに、黒歴史になってしまいがちな卒業アルバム。学校生活を共にした最高の仲間たちと一緒に、最高の瞬間をカメラに収めてほしい。そんな想いから誕生したSNOWで撮る“盛れる”卒業アルバムです。第1弾では、2017年春に卒業を迎える高校生を対象にSNOWで撮影した写真を製本して「卒業“盛ルバム”」としてプレゼントするキャンペーンを実施。第2弾では、WEB上で誰でも“盛ルバム”がつくれる「“盛ルバム”ジェネレーター」を公開しました。

企画が立ち上がった経緯や動画制作の舞台裏、バズにつながった企画のポイントについて株式会社NTTドコモ プロモーション部 深田大介さん、株式会社東急エージェンシー 統合プランナー 酒井亮祐さん、プランナー/コピーライター 室屋慶輔さん、第1営業本部 石井絢子さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか
卒業アルバムにまつわるインサイトを的確にとらえる


―“盛ルバム”キャンペーンの全体像について教えてください。

酒井:1月30日~2月7日に実施した“盛ルバム”キャンペーン第1弾の「卒業“盛ルバム”」プレゼントキャンペーンでは、1校限定で「卒業“盛ルバム”」を制作しました。第1弾リリース時にはコンセプトムービーとして、残念な卒アル“あるある”をネタにした動画を公開し、女子高生ミスコン2015-2016グランプリの“りこぴん”こと永井理子さん、男子高生ミスターコン2016グランプリに輝いた本田響矢さんに出演していただきました。

その後、2月17日より第2弾となる「“盛ルバム”ジェネレーター」を公開し、PR告知ムービーとして「盛リコレ~JKの盛りポーズの歴史~」を制作しました。学生だけではなく、さらに広い世代に広めようという意図があったので、過去のあらゆる「盛リポーズ」をテーマにしています。

―今回の企画がスタートしたきっかけについて教えてください。

深田:例年1月から3月は、高校生や中学生が卒業してスマートフォンを持つタイミングのため、1年のうちでスマートフォンが最も多く売れる時期です。この重要な春商戦には、学生たちの注目を集めるキャンペーンが毎年必要だと考えています。
そんなとき、たまたまSNOWとコラボ企画をしようという話が持ち上がり、この2社のタイアップキャンペーンとして、学生の間で“話題になる”“ドコモに注目を集める”企画を実施したいと相談しました。

―どういったところから“盛ルバム”のアイデアが生まれたのですか。

酒井:学生時代は楽しいことがたくさんありますし、世の中はおもしろいコンテンツであふれています。そうした環境の中でターゲットの琴線に触れて話題にしてもらうには…という入口から考え始めました。今回は好意形成が目的だったので、ターゲットの人たちの困りごとや不満に思っていることをブランドが解決してあげることで好きになってもらうコミュニケーションを目指しました。

そういった考えのもと、シーズナリティを踏まえ、学生の気持ちを掘り下げていってたどり着いたのが「一生の想い出になるはずの卒業アルバムが黒歴史になってしまっている」という不満でした。このインサイトを企画に仕立てればターゲットに刺さると思い、SNOWで盛れる卒アルという企画を提案しました。

石井:卒業アルバムの実態にまつわる調査でも、卒業アルバムの写真うつりに不満を持っている人が約8割にのぼり、多くの人が不満を持っているという調査結果もあります。

ターゲットの気持ちをコピー化し「体験をのせられる」言葉をつくる

―インサイトを的確にとらえたことの他に、バズにつながったポイントをあげるとしたら何でしょうか。

室屋:レトリックに逃げたりせず、学生たちが本当にいいたかったことをコピー化できたことだと思います。学生生活は楽しいですが、校則などの制限もあります。そういった制限された環境の中、「最後くらいワガママいわせて!」という学生の気持ちをコピーで体現しました。

卒業生たちの切実な想いが爆発したようなセリフコピー「#最後くらい盛らせろ」を「卒業“盛ルバム”」というタイトルとセットで打ち出したことで共感につながり、キャンペーンの拡散が加速しました。ターゲットの人たちの「体験をのせられる」言葉をつくるというイメージです。もはや、女子高生の間では普段から使うタグに昇華しているようです。

酒井:「#最後くらい盛らせろ」は強い言葉なので、提案当初は採用されないのではないかと思っていたのですが、ダメ元で提案したら、ドコモの深田さんが即決してくれたんです。

深田:強いインパクトと学生たちの共感を得るためには、「卒業“盛ルバム”」というタイトルに付けるキャッチコピーが絶対に重要になると思いました。「#最後くらい盛らせろ」は、キャッチーで、本音を表に出している感じがよかったのだと思います。このキャッチコピーでユーザーの共感を集められたことに加え、ターゲットと同世代の永井理子さんや本田響矢君に出演してもらったことがプラス要素となり、うまく学生たちの言葉にのり、起爆してくれました。

―学生に向けた“ノリ”や“テンション”を表現するにあたって、工夫されたことはありますか。

酒井:制作メンバーが全員アラサー男性だったので、正直手探りでした。第1弾の動画では、前半には卒業式の定番『仰げば尊し』が流れ、後半はテンポアップしていく構成になっていますが、この後半部分の楽曲作りに最も苦戦しました。『仰げば尊し』をロックっぽくしてみたり、転調させたり、EDMバージョンなども作ったのですが、マッチせず、いろいろと検証した結果、アイドルグループが歌う電子音で構成された楽曲に決めました。

歌詞には「スノる」「はげる」「卍(まんじ)」などの女子高生の流行語を入れ込むなど、アラサーなりに細かなところにまでこだわった結果、映像のテンションともマッチし、かわいいと評価いただけるものに仕上がりました。

日本全国から届いた学生さんたちの熱い想い

―「卒業“盛ルバム”」について、SNSなどではどんな反応がありましたか。

石井:現役の高校生からは、「これを待っていた」という反応が多かったです。大人の方からも「私たちの時代にこれがあればよかったのに」という反応が多数ありました。キャンペーン期間中は「当選したい」というつぶやきがたくさんあり、募集要項として書いてもらった応募の意気込みについては、長文でエピソードを書いてくださった方もいて、非常に多くの方から「卒業“盛ルバム”」への熱意を感じました。

―「卒業“盛ルバム”」にはどれくらいの応募があったんですか。

深田:全国から1113件の応募がありました。私たちが学校に行って「卒業“盛ルバム”」を制作することになるので、応募して採用されるためには、学校側の許諾も必要になります。ひとりだけの意思ではなく、クラスメイトや学校の理解も必要になるキャンペーンのため、応募のハードルはかなり上がります。当初は、応募がどれだけ集まるか心配でしたが、結果的には、多くの方々に応募いただきました。

―多数の応募の中、当選校を決定した決め手は何だったのですか。

深田:長野県にある東海大学付属諏訪高等学校を当選とさせていただきました。クラスの10人以上から応募があり、一人ひとりのコメントにも熱意がこもっていたというのが選んだ理由です。
生徒同士でSNOWで写真を撮ってもらい、それを「卒業“盛ルバム”」に製本し、3月の中ごろ、完成した「卒業“盛ルバム”」を直接渡しに行きました。高校生たちがスマホで撮影している様子など「卒業“盛ルバム”」の制作過程を3つ目のムービーとして公開しています。

―生徒さんたちの反応はいかがでしたか。

深田:「やっぱりこっちの方がいいよね」といってくれて、すごく喜んでもらえました。先生方もキャンペーンに好意的で、生徒の想い出をひとつでも多く作ろうと熱意を持って協力してくださいました。

石井:スタッフよりも、現役の高校生の方がSNOWを使い慣れているのが印象的でした。それぞれのお気に入りのエフェクトがあったりして、本当に身近なツールなんだと感じました。

酒井:友達と撮ったり、好きな場所で撮ったりするので、撮っている時間そのものがいい想い出になったのではないかと思います。

共感とつっこみどころを意図的につくり上げる

―第2弾として「“盛ルバム”ジェネレーター」を制作したねらいは何だったのですか。

酒井:“盛ルバム”を手軽に、より多くの人に体験してもらうためです。クラスで、仲のいい友達同士で、恋人同士で、WEB上で気軽に想い出をつくってもらいたく、制作しました。学生はもちろんのこと、社会人や家族など、あらゆる人たちに使ってもらえたらという想いを込めました。なので、第2弾の告知動画では、幅広い世代に広がっていくよう、いろいろな年代の人が共感し、語れる文脈を用意して拡散を狙いました。

―第2弾のムービーの内容はどういったものだったのですか。

室屋:「“盛ルバム”ジェネレーター」のリリースに伴い公開した第2弾の動画では、若い女性たちの間で流行った盛りポーズの歴史をテーマにしています。現在女子高生たちの間で流行中の「指ハートスタイル」から、懐かしい「エッグポーズスタイル」、さらに江戸時代にまでさかのぼった「見返り美人スタイル」など、盛りポーズの歴史を一挙に振り返る内容となっています。

「盛る」という行為の根底には「かわいく写りたい」という心理があります。その行為は、今の若い子たちだけがやっていると思いがちですが、「MAXかわいく写りたい」という心理はいつの時代も普遍だと思い、原点はどこなのだろうかと歴史をさかのぼってみようと思ったのがきっかけです。もちろんSNOWはその行為の“最高到達点”だという位置づけになります。

いろんなポーズをさかのぼることで、「こんなのあったなぁ」とか「これ今でもカワイイかも」など、世代間を超えた会話が生まれるのでは?と考え、話題化が見込めると判断し、映像を企画しました。出演と音楽は、ノンストップパフォーマンスグループの「東京パフォーマンスドール」にお願いしました。

深田:江戸時代にまでさかのぼっていることへのつっこみ、「これ懐かしい」「他にもこういうのあったよね」というポーズへの共感を引き出し、東京パフォーマンスドールのキレッキレのダンスとキュートさなど、話題化のポイントをいくつもつくることで話題化に成功し、SNSでも盛り上がりを見せ、地上波をはじめ多くのテレビ番組やその他のメディアでも取り上げていただきました。

室屋:このムービーの撮影はワンカットのノンストップパフォーマンスとして撮ったため、OKが出るまでに30テイク以上撮りました。ポーズがうまく決まらなかったり、後ろに他のメンバーが見切れてしまったり、映像がぶれてしまったり、ワンカット撮影は予想以上に大変でした。その時代の雰囲気を出すことを意識し、動きや衣装、小物など細かなところにまでこだわりました。

酒井:「盛リポーズ」はSNS上でも話題になり、再生回数は30万回を超えました。いろいろなメディアにも取り上げていただき、「めざましテレビ」や「あさチャン」、「ZIP!」などでも紹介されました。めざましテレビの「ココ調」のコーナーでは、盛リポーズについて街頭インタビューも交えて詳しく取り上げてくれました。

ツイート数はキャンペーン全体で2万を超え、WEBでは200媒体以上、テレビ番組でも多数取り上げられ、世の中に浸透した手ごたえがありました。

深田:今回のキャンペーンを通して、やはりプロモーションで重要なのは向き合う相手に寄り添うこと、相手が置かれている環境・状況をとらえた上でプロモーションを展開することが成功へのカギだと改めて実感しました。このことは今後のプロモーションでさらに追求していきたいと考えています。

(写真左から)株式会社東急エージェンシー 第1営業本部 熊澤真一さん、株式会社東急エージェンシー 統合プランナー 酒井亮祐さん、株式会社NTTドコモ プロモーション部 深田大介さん、株式会社東急エージェンシー プランナー/コピーライター 室屋慶輔さん、株式会社東急エージェンシー 第1営業本部 石井 絢子さん

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