ネットで噂の“レオパレス伝説”に言及。ダンスユニット・エグスプロージョンを起用した自虐コンテンツ

Case: 動画『レオパレス伝説 エグスプロージョンVer.』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、株式会社レオパレス21によるウェブ動画『レオパレス伝説 エグスプロージョンVer.』を取り上げます。本動画は、『踊る授業シリーズ』で話題のダンスユニット、エグスプロージョンが、実際のレオパレスの物件を舞台に、部屋の壁にまつわる数々の噂をダンスとリズミカルな掛け合いでコミカルに解明していくというもの。
「“レオパレス伝説”に対する、当社からのメッセージです」と話す、株式会社レオパレス21 広告宣伝部 課長 中村景一さん、主任 大門一将さんに、制作の意図や撮影秘話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美
ネットで噂の”レオパレス伝説”をあえてコミカルに表現

―まず御社のウェブ動画の取り組みは、どのようにスタートしたのでしょうか。

中村:2014年1月、ユーチューバーを起用し、当社のサービスを紹介するコンテンツからスタートしました。当時いろいろな会社さんから「これからは動画ですよ」という声が聞こえてきていたこともあり、その年の4月からは年間計画を立て、本格的な運用を開始しました。

―今回のような、いわゆる“自虐コンテンツ”は、初めてではないとのことですが。

中村:そうですね。運用当初は、キャンペーンの告知やお部屋の特徴の紹介、ご利用者向けの情報など、比較的オーソドックスなコンテンツで展開していましたが、いつかはネット上の”レオパレス伝説”に対する当社からの返事を発信したいと思っていました。

この発想から生まれたのが、2014年12月に公開した『壁ドン女子』という動画です。当時、モデルのマギーさんが男性を壁ドンする写真をネット上にアップしたことが話題になったのですが、それをヒントに女子大学生の壁ドンを視聴者が疑似的に体験できる動画を制作しました。ちょうど、『レオパレス』=『壁ドン』みたいな揶揄をネットでされていたこともあり、回りくどいながらも気付いて反応してくれるユーザーがいるんじゃないかと考えました。

結果として、『Yahoo!映像トピックス』や、キュレーションメディア『ViRATES』などで取り上げられ、おもしろく受け取っていただいたという感触がありました。社内でも、「自虐コンテンツもいいね」と概ね好評で、「『壁ドン女子』の次は何するの?」と期待の声をかけられたりもしまして。そんな手ごたえもあり、この延長線上で、女優さんやユーチューバーを起用した動画を制作していくなか、YouTube上での再生回数が話題になっているエグスプロージョンのダンスで、”レオパレス伝説”を踊ってもらうという企画が立ちあがり、今回のクリエイティブへとつながっていきました。

まずは、“レオパレス伝説”の内容を精査。楽曲は人気シリーズの中からセレクト

―コンテンツは、どのようにつくりこんでいったのでしょうか。

中村:まずは、歌詞のベースにするために“レオパレス伝説”の中身を一つずつ確認し、フィーチャーする要素を決めていきました。曲は、「オリジナルでつくりたい」というお話を先方からいただいたのですが、「『本能寺の変』のように、ネットでバズっている曲をベースにしたほうがユーザーにも分かりやすくて良いのでは」と、お返事したところ、「だったら『ペリー来航』の曲を」とご提案いただき、楽曲の方向が固まりました。

その後しばらくしてエグスプロージョンさんの歌う音源が届いたのですが、それを聞いたときは正直少し心配になってしまいまして(笑)。「当初想定していたところに着地できるんだろうか」みたいな気持ちが一瞬よぎったんですけれど、キレの良いダンスと一緒になった映像を見た瞬間、かっこいいものになったと感じました。

―撮影秘話を聞かせてください。

大門:振り付けは、もちろんエグスプロージョンさんによるもので、『ペリー来航』がベースになっているのですが、“レオパレス伝説”が出てくる部分は、ほぼアドリブです。しかも2回しか踊っていないんですよ。お二人がお互いにリクエストを出しあうなど、細かい部分は現場で決められていました。現場は和やかでしたが、お二人の真剣な様子がひしひしと伝わってきました。

また撮影場所は、当社の実際にある物件を使用しています。もちろんスタジオのような広さがあるわけではなく、エグスプロージョンさんとカメラの距離は3メートルほど。全体を映せる距離を確保するため、三脚の一部がベランダにはみ出るなど、スペース的にはかなりギリギリでした。なのに、カメラに映らないところにスタッフがたくさんいるから気持ちが落ち着かないようで、エグスプロージョンさんから「撮影場所にはなるべく人がいないでほしい」というオーダーが出て、スタッフの多くは隣の部屋のモニターで様子を見ていました。

―ユーザーの反応はいかがでしたか。

大門:普段キャンペーン広告として動画をつくってもコメントは付きづらいのですが、今回はエグスプロージョンさんをフックに、たくさんのコメントをいただきました。ユーザーのリアルな反応を知れたのは良かったです。内容は、ダンスや歌詞に関するものが多く、なかには、「スニーカーを脱いで踊ってる」というファンならではの視点のものもありました。

数字を見ても、『壁ドン女子』が1年以上かけて16万再生回数に達したことに対し、今回は公開から約1か月半で23万回にのぼりました。さらにいうと、前回はTrueViewも活用しましたが、今回はすべてオーガニックによるものなので、良い結果になったと思っています。今回も『Yahoo!映像トピックス』に取り上げていただき、拡散に拍車がかかりました。

検索ページからネガティブな記事が減少。社内から喜びの声が

―動画による効果を感じている部分はありますか。

中村:ネットで、『レオパレス』と検索すると、予測検索に『伝説』と出てくるのですが、この組み合わせで検索すると、これまでは当社に対するネガティブな内容が表示されていたんですね。でも、今回のクリエイティブに関する記事がバイラルメディアから波及していくことで、“レオパレス伝説”がホットワードになり、結果として関連記事が検索の上位に出現するようになりました。

そうなると、ネガティブなものが必然的に下がり、閲覧者の目に留まりにくくなるんです。このため、風評による機会損失が減るんじゃないかと社内で喜ばれています。やはり検索1ページ目の強さというものがありますから。この例をとっても、ユニークな動画をコンスタンスに制作する意味はあると思っています。

―ネットで書かれている噂に対し、当事者がアクションを起こすこと自体が珍しいと思うのですが、コミュニケーションで意識されたところはありますか。

中村:今回のクリエイティブに関しては、レオパレスに興味を持ってくださる方が増えることを前提に、表現をおもしろくしつつも、「レオパレスの壁は薄くないです」「良い部屋をご提供しています」というメッセージに落とし込めるよう意識しました。なかには“レオパレス伝説”をご存知でない方もいるので、当社自らが言及することへの懸念もありましたが、それよりも『エグスプロージョンとタイアップをしておもしろいことをやっている企業』と認識いただけるほうが、価値のあることだと思っています。

―今後の動画施策として、どのようなことをお考えでしょうか。

中村:おもしろい動画が話題になることは、当社の認知度向上や理解にもつながっていくため、今後も大事にしていきたいと思っていますが、そればかりではなく社員の顔が見えるものをはじめ、入居者向けのイベントの模様、DIYの情報や料理のレシピといった、ご利用者の生活に役立つことも引き続き発信していきたいと思っています。レオパレスには、ただ住むだけではなく、いろいろな体験ができるという付加価値がありますので、『住んでからも住みよいレオパレス』と感じていただけるコンテンツをこれからもお届けしていきたいです。

動画もそうですが、やってみないとわからないことは多くありますので、今後も既成概念にとらわれず、さまざまなチャレンジを続けていきたいですね。また、今回のような事例を増やしていくことで、ユーザーにポジティブな印象を持っていただける企業を目指したいと思っています。

株式会社レオパレス21 広告宣伝部 課長 中村景一さん
株式会社レオパレス21 広告宣伝部 主任 大門一将さん

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