女子大生と共同開発「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」発売までの舞台裏
Case: キッコーマン飲料「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はキッコーマン飲料より7月末までの「デルモンテ 花つぼみ ローズウォーター」を取り上げます。
高校生・大学生を対象に募集した「こんな飲料あったらいいな」というアイデアから、「花つぼみ ローズウォーター」の原案を提案した東京都市大学 知識工学部 自然科学科の女子大学生5名のグループの提案を採用。味・商品名・パッケージデザインなどに関して何度も打合せを行い、5名のこだわりを細部に取り入れ商品化しました。この商品開発の狙いについて、キッコーマン飲料株式会社 プロダクト・マネジャー室 中川葵さんにお話を伺いました。
学校に地道にコンタクト。直接プレゼンの機会も
—この商品開発がスタートした経緯は。
まず2014年の4月の終わり頃に、社内にはない発想を元に商品開発をしようというアイデアが持ち上がりました。当社の主な顧客層は30代以上の主婦の方なのですが、将来その世代になる(20代の)いわば未来の顧客層の考えをどうすれば知る事が出来るかなと考えていた事もあり、高校生・大学生の柔軟な発想を募集してみようと。募集は、50校くらいの学校等に私から直接電話やメールでお願いをして、コツコツ応募を集めていきました。最終的には参加が11校。応募アイデアの総数が145点です。
—単に応募を受け付けるだけではなく、学校に地道にコンタクトされたんですね!
今回の狙いとしては、既存の枠をはみでたアイデアを持っている学生さんと出会いたいと思い、事前に学校も決めないようにしました。ただ、学生さんと普段直接繋がる接点はないですから、まずは学校に連絡させて頂きました。(連絡後)学校によって、授業で取り上げて頂いたところや、メールで情報を回して頂いたところもありました。
—やりとりにも相当時間をかけられたんじゃないですか?
電話に一ヶ月くらい付きっきりでした(笑)。学校も突然の依頼に驚かれていましたし、学校内での調整をしていただくなど、たくさんの方にご協力をいただきました。興味を持って頂いている学校には私が伺ってプレゼンさせて頂いたりもしました。
—今回選出された、東京都市大学の学生さんのチーム。その選出理由は?
集まったアイデアは面白い・美味しそうなのが多かったので、選考は困難を極めましたね。とても悩みましたが、「社内の人間からは絶対に出てこない」アイデアという基準を元に判断しました。最終的に10アイデア程残って、その中で一個に決めなきゃねというときに、彼女達の個性(東京都市大学知識工学部自然科学科所属)がアイデアに現れていましたし、アイデアを見た時にストーリーが浮かんでくるものでした。
大学生達の意見はまさに消費者の意見。実現に向けて「なんとかしよう」となる
—そのアイデアが「花つぼみ ローズウォーター」の原案になったんですね。
原案が「花の蜜をドリンクにしたい」というものだったのです。この規模で生産する飲料としては花の蜜そのものを原料にするのは難しかったのですが、アイデアは面白いな、当社の商品ラインナップの中で花を表現する商品というのは、全く新しいジャンルになるなと思いました。
その原案をコンセプトにして実際の商品開発に進むのですが、そこで学生ならではの視点や、自分たちがどんなものを飲みたいかという純粋な意見を出してもらったんですね。実現性が高くないアイデアは自社内で言うと却下されがちですが、まさに消費者の意見ですから、彼女達が言ったアイデアであれば、実現に向けてなんとかしよう、となるわけです。10-20代の嗜好・世界を知る事が出来た事はやはり良かったです。
—実現にあたって最も難しかったのは、どのような点ですか。
味をつくることですね。あくまで既存の例がない商品ということは、味も「こういうものが売れている」などといったベンチマークがない中での開発になるので。しかも、ちょうど味については5人のメンバーそれぞれも好みが違いますから、全員が納得してくれるように「このコンセプトだからこの味だね」という話をしながら、決めていきました。
—実際商品として発売になって、反応はいかがですか。
SNSを見ていると「デルモンテ」や「キッコーマン飲料」という、ブランド名や社名を知らない若い人に知って頂けたのかなと。また、今回印象に残った事は画像付きのツイートが結構あったことです。既存の商品って、商品を買ってもあまり画像付きのツイートをされないものですが、今回は「こんなの買った!すごくバラの香りがする」というつぶやきと一緒に写真があったり…いつもと違った反応が自然発生的に出てきました。また「リケジョ」が開発という面も、メディアでの話題になりました。
—商品は7月末までの期間限定とのことですが。
今回は夏向きのフレーバーなので、7月末まで出荷するとおおよそ8月いっぱいまで店頭に並んでいるかなという見込みです。また、東京都市大学さんともまた何かやろうという話にもなりまして、今後話し合っていく予定です。新商品開発だけではなく、若い人へ向けたプロモーションや、野菜飲料のような既存商品を若い人へ向けて需要を喚起していくようなプランを考えていくなどしていきたいと考えています。
キッコーマン飲料株式会社
プロダクト・マネジャー室
中川 葵さん
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