男性なら誰もが気になる“ポジション”の快適さを訴求。下着ブランド・TOOTの「ベスポジ耐久実験」舞台裏
Case: TOOT「ベスポジ耐久実験」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は男性用下着「TOOT」による、男性なら誰もが気になる”ポジション”をキープ出来ることを訴求する「ベスポジ耐久実験」を取り上げます。これまでユーザーになかなか届いていなかった商品の持つ機能性を正しく伝えるべく企画されたこの実験。その裏に込められた思いを株式会社 サーチ アンド サーチ・ファロン クリエイティブディレクター/コピーライター 武井慶茂さんに伺いました。
「どれだけズレないか」機能性を伝えるための実験
—まず、TOOTさんはどのような課題をお持ちだったのでしょうか。
TOOTは「全体はかなりタイト目に、股間の部分は余裕を持って」という独自の構造を採用しています。この構造により、下着の中でズレてしまいがちな男性器をベストなポジションでキープすることができます。ですが、その構造を実現するためのシルエットとデザインの印象が先行した結果、本来伝えるべき機能性が伝わりきっていませんでした。そこで、機能性を正しく伝えることで、シルエットやデザインに反応する人以外にも、より広くにTOOTの魅力を知ってもらいたいというお話がありました。
—今回「実験」という発想はどのように?
今回は何度かの提案を経て、この企画「ベスポジ耐久実験」という企画を採用いただいたのですが、まず、ベースのアイデアとして「どれだけズレないかをユニークなネタを用いで検証する」というものを採用いただきました。
その後、実施に向けて詰めていく際に、当初から別案としてあがっていた実験のテイストが足されていった感じです。今回の「ベストポジションをキープして、ズレない」というセールスポイントは実は多くの男性が悩み、求めているものでした。悩み、求めているものだからこそ、ただユニークなだけでなく実験というある種、真面目なエッセンスが入ったのは良かったと思っています。
—動画に登場する被験者は、どういった人物像をイメージされているのでしょうか。
「今までのTOOTのモデル」じゃない人が良いと思っていました。いわゆるファッションやアパレル的な、特定のターゲット層に強く響くタイプのモデルさんを起用するのではなく、今回は広く一般を狙っていくために、また実験もユニークなので、格好良いけれどどことなく面白さが漂うような人がいいなあ、というこだわりがありました。「次から次へと奇妙な実験をされ、釈然としないながらも受け入れてしまう悲しくも可笑しい被験者」という感じですね。
—動画の中で数々の実験が登場しますが、実際に行った実験のネタはどのように考えたのですか。
内緒にしていたのですが、実は最初に思い浮かんだのは獅子脅しでした。一枚の絵として強く、かつ股間がズレそうなものを入れないと観てくれないだろうな、と思っていたので。ですが、これ単体だとシュールすぎる(笑)。なので、反復横跳びや縄跳びなどの真面目なものを入れたり、プロレス技を選んだり、美女のキスなどちょっとHな、股間が反応するようなものを入れたりして、リアルさと面白さのバランスをとっていきました。
実験内容のバランスを考えている間に、獅子脅しのことを忘れてしまい結局獅子脅しはスピンオフになるのですが、あれは股間にヒットするまでの緊張感がポイントなので、本編の動画にいれるより結果的にはスピンオフでよかったように思っています(笑)。どんな状況にもズレないという商品特性があったので、ネタはチームや監督をまじえて、色々と楽しんで考えられましたね。
—コンテンツ特性上なかなかデリケートなカットも多いと思うのですが、どのようなバランスを意識されましたか。
ズレていないということを伝える為には寄りのカットも必要ですし、極力リアルを見せたいという反面、生々し過ぎないということは意識してやっていました。今回は男性がターゲットではあるものの、女性が見ても不快にならないという点は気をつけたつもりです。そのため、現場では股間の寄りのカットはビジコンに穴があくほどチェックしました。
—サイトでの見せ方で意識された点は。
「ユニークな実験」ということで、TOOTのポップなデザインを意識した明るく楽しいサイトを心がけました。またコピーについても、たとえば購入ボタンも「実験とかどうでもいいので購入する」というコピーにしています。これは「買う」というボタンがサイト上で目立つと、消費者の立場では萎えてしまうことを意識した上でこうしています。このように消費者目線で見た時に、ゲッ!と思うポイントを逆にクスッと笑えるポイントに置き換えようと意識しました。
ポジションのズレという男性共通の問題に、各国のユーザーが反応
—動画の反響はいかがでしょうか。
若い男性を中心に面白がってくれているようなので良かったです。実際のターゲットはもちろん若い人だけでなく、もう少し年齢が上の人も含まれますが、やはりネット上で広げてくれるのは若い人だと思うので。また、まだまだ大きくないブランドが何かやる時は、賛否を怖がらずにやりきらないとといけないと思っているのですが、思ったよりネガティブな反応がないのは良かったです。
あとは、中国や台湾、ロシア、フランス、アメリカなど海外からも反応が寄せられていることが収穫としてあります。ポジションのズレという世界の男性共通の問題に直結したアイデアなのが奏功したのだと思っています。
—この動画を起点に、WEBメディアで取り上げられたり、SNS上で話題になったり、というイメージは最初から描いていたのでしょうか。
今回は元々の予算が限られていたということもあったので、動画一発勝負くらいの気持ちでやらないといけないかなと思っていました。もちろんメディアにとりあげていただくことはありがたいことですけれども、そこに積極的にアプローチする充分な工数・予算はなかったですね。
だからこそ振り切るべきということをプレゼンの最初の段階から話をしていましたね。そのため、プレゼンは相当白熱しましたがクライアントの寛大な理解もあり、実施へとこぎ着けることができました。もっとも、そうはいってもまさか、股間を酷使する企画を提案されるとは思っていなかったかもしれませんが(笑)。
—最終的にご納得いただけたのは何故でしょう?
やはり商品の特徴に直結しているということですね。一見バカバカしいコンテンツでも、しっかり商品の機能性に落ちているという点が良かったのではと思います。テレビで取り上げられにくい内容であるにも関わらず、取り上げて頂いたりしてクライアントにも満足いただいています。
—売り上げにも繋がっていますでしょうか。
今回はあくまでも認知度向上が目的だったので、まだこれからだと思います。まずはやはり、数多ある機能性下着の中で頭の中のリストに残ってもらえたらと思っています。その中でさらに「なんか面白いから、一回買ってみよう」と思ってくださる人がいれば、いいかなと思っています。TOOTは機能性の高さからそれなりの価格ですが、その分長くお使いいただける商品なので。
—これまでの案件も含め、動画コンテンツを作る上で意識されている点はございますか。
「ひと息で観れること」というのは大事にしています。特にYouTubeのように能動的に観たいものを観にきている場所で動画を流す場合、面白くても長いものは好まれない。ですから、長さはかなり意識します。あとYouTubeで動画を広告として流す場合には、5秒でスキップ出来るので、その「5秒」でいかに掴むかや、シェアされた時に観たくなるサムネイルかどうかも意識しています。
【Interviewee】
株式会社 サーチ アンド サーチ・ファロン
クリエイティブディレクター/コピーライター
武井 慶茂さん(左から三番目)
(チームTOOT・左より)
インタラクティブプランナー 荒木 智子さん
アートディレクター 森内 憲司さん
デザイナー 原 圭佑さん
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