1日限定!Uberがアイスクリームをデリバリーした狙いとは
Case: Uber「アイスクリームオンデマンド」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は、スマートフォンを活用したハイヤー・タクシーの即時手配サービス「Uber」が7月18日の一日限りで実施した「アイスクリームオンデマンド」を取り上げます。Uberアプリを開き車種を選ぶところで、「アイスクリーム」を選ぶと指定の場所に届けられる仕組みです。実施の狙いや舞台裏を、UBER JAPAN 株式会社 執行役員社長 髙橋正巳さんに伺いました。
”Riding is Believing” Uberの体験をより多くの方に
—まずは、アイスクリームオンデマンド実施までの経緯をお教え頂けますか。
アイスクリームオンデマンドについては、まず”プロモーション”としての捉え方は特別しておらず、Uberを「体験頂きたい」という点がコアとしてあります。車が来るだけではなく細かい部分での気遣いを含めて、「数タップすると何かが起こる」というのがUberの体験です。”Seeing is Believing”とよく言われますが、Uberには”Riding is Believing”という言葉が当てはまるのではと思っています。ハイヤーやタクシーを配車するということがコアビジネスとしてある一方、我々のプラットフォームを使うと何かを届けたり、そして我々が大切にしている”Fun”「楽しさ」を組み合わせて、色んなことが出来るという点を伝えていきたいなと思っています。
このアイスクリームをオンデマンドでお届けするという仕掛けは、2年前にアメリカからスタートしました。アメリカですと「アイスクリームトラック」といって、トラックにアイスクリームを乗せて売りにくるのですが、トラックが近くに来るとワクワクした昔の思い出をUberで再現したいなと考えました。昨年は複数の都市で、そして今年は全世界でやっちゃおうということで、(当時Uberが利用出来る全都市、9月18日時点では207都市)144都市で同日の7月18日に一斉に行いました。
今年3月の東京での正式ローンチ以来オンデマンド系の企画は初めてでしたが、私も実際にアイスクリームトラックに乗ってお届けにあがりました。通常パートナー企業さんのドライバーさんが我々のユーザーを目的地までお届けしますから、普段はなかなかない直接ユーザーさんに会えたり、声を聞けたりしないので、直接触れ合うことができたのも嬉しかったですね。「来た来た!」と喜んでくれたり、写真を撮ってSNSにアップしたり、そういった光景を見て我々もとても楽しかったですし、「こうやって喜んで頂けるんだな」と実感することが出来ました。
—デリバリーのオペレーションはどのように。
我々スタッフはもちろん、スタッフやインターンの知人など日頃からUberを応援してくださるサポーターの方々にも手伝って頂きました。また、(渋谷エリアで日替わり弁当をデリバリーしている)渋弁さんにも協力頂きました。当初コアとなる各エリアに極力車を配置してすぐデリバリー出来るようにする予定でしたが、サービス開始後すぐにお客様のリクエストが殺到して渋谷オフィスの周りから出られないほどでした。午後の時間帯からは、渋弁さんが入ってくださって渋谷エリアを集中的に回りました。自転車の方が裏道も行けて効率が良かったという点は興味深かったですね。
—デリバリーされたアイスクリームは「GROM」ブランドでしたが、こちらはどのように決まったのでしょうか。
とても美味しくアイスクリーム好きの中では知られている存在でありながらも、販売している店舗も限られていて簡単には買えないようなアイスクリームという価値があり、我々のサービスにも良いフィットだなと。実際に「GROMなんだ!」という反応もありました。今回全世界で実施した中で、都市によってはそれぞれ提携先が異なっていて、ハーゲンダッツを配っている都市もあれば、他のブランドを配っている都市もありました。このように実際のオペレーションにおいてどこと組んで、どうデリバリーするかという点はローカルで考えています。
—ステッカーなどのツールや、特製で配られたサングラスなどは。
こちらは本社から各都市へ供給されたものです。ステッカーは裏にマグネットを付けて車に貼付けたりといったカスタマイズも行いました。
—ユーザーからの反応はいかがでしたか。
「本当に来るんだ!」という驚きの言葉を頂くことが多かったです。ちょっとタップするだけで、数分後に来るという驚きはまさに我々もお届けしたかったポイントでしたから、驚いて頂いた反応は印象に残っています。純粋な統計は取っていないですが、私が乗車したトラックでは男女問わず、20代後半から40代前半の方、特にオフィスなどで数名あるいは団体で待っているというシチュエーションが多かった印象です。
—成果はいかがでしたか。
宣伝広告目的という趣旨とは少し異なり、単純に「体験頂きたい」という趣旨の中で、新規のサインアップにはもちろん寄与しました。また、既存のユーザーにもUberのサービスについてもっと身近に感じてもらえた機会だったと思います。いつも使っていて、いきなり選択肢にアイスクリームが出てきて驚いたという方もいらっしゃいました。
Uberの仕組みを使った社会貢献も実施
—8月には、アイスバケツのデリバリーも行いました。こちらはどのような経緯で実施となったのでしょうか。
これは全都市ではなく、一部の都市での実施でした。最初に香港が実施して、我々東京は香港から指名を受けたという形で本当に急きょ決まりました。ちょうど私は出張でサンフランシスコに行っていたのですが、日本から急に「まずはアイス・バケツ・チャレンジをやってください」と連絡があって私もまずはチャレンジしました。
これはまたアイスクリームの時とは目的が異なるものです。アイスクリームはより多くのユーザーにUberを体験して頂きたいというお祭り的な要素がありましたが、アイスバケツに関してはUberの認知を上げるということよりも、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の認知向上に対して我々として何が出来るか、少しでも貢献出来ればという目的で実施しました。
アイス・バケツ・チャレンジ自体は賛否両論あった中ですが、出来ることはやった方がいい、ALSについてひとりでも多くの方に知ってもらえることに少しでも貢献したい、という思いでした。我々のプラットフォームでこういうことが出来るんだ、というのは私も発見でしたね。
他の都市の事例も常時共有している
—アイスクリームのお話に戻ると、アイスクリームは全都市で実施。それ以外にも各都市で様々な事例があると思いますが、他の都市の事例を共有することもありますか。
常時、共有しています。例えばニューヨークでは、元々シェルターに入っていた子猫を呼んで遊んでみて、気に入ったら新たな飼い主になれるという試みがありました。私は元々社会貢献に強い関心があるので、Uberのプラットフォームが、こういう貢献に繋がるということは興味深かったです。
—サービスを展開している都市の中で、東京に近しいなと感じる都市はありますか。
台湾は近いなと思います。例えば、以前、台湾系アメリカ人のNBA選手 ジェレミー・リンが台湾に来た際にUberで彼を呼べるということをやっていましたが、こういった有名人に絡めた施策は、日本でやっても盛り上がりそうですよね。
—日本、東京でも今後様々な「体験をしてもらう」計画はありますか。
もちろん、普通じゃ考えられないような面白いことを考えながら、日本、東京でも独自のものをやっていきたいですね。
—日本、東京でこういうことをやったら盛り上がりそう…というように、日本らしさ・東京らしさについて何か念頭にある点はございますか。
アイスクリームのような機会だけではなく日本でサービスを提供するにあたり日頃から気を遣っているのは、日本はサービスのレベルが概して高いので、我々のサービスに対する期待値が高いことです。通常の業務でも、我々の組んでいるハイヤー会社は世界の中でもトップレベルであるにも関わらず、乗車したお客さんから細かいご指摘を受けることもあって我々としては勉強になります。パーフェクトを期待しているお客様が多いので、細かいところまで気を遣っていかないといけません。
また、他都市と比べると特徴的なのは女性ユーザーが多いことですね。レーティングシステムがあることでドライバーの評価や車種がすべて分かる点や、社内が清潔だったり、むやみに話しかけられないといったサービスの面で、安心して乗れるということで喜んで頂いている印象です。仕事や家庭の環境によって、一口に女性といっても様々なシチュエーションがありますが、女性の方に特化した施策も面白いかなと思っています。
【Interviewee】
UBER JAPAN 株式会社
執行役員社長
髙橋 正巳さん
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