“整形メイク”ブームを生んだ「S Cawaii! Beautyムック」 PR戦略の舞台裏
Case: 主婦の友社「S Cawaii! Beautyムック」シリーズ
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は、昨年発売以来累計82万部(7月下旬時点)を発行し「整形メイク」ブームを生んだ「S Cawaii! Beautyムック」シリーズのPR展開について伺います。ムック出版に合わせて、他メディアに向けて積極的に情報発信を行っていったことで多くの反響が生まれたその過程について、株式会社 主婦の友社 販売部 広報・宣伝課 課長 長友薫さんにお話を伺いました。
テレビでも話題にしてもらえるように、まずはネットでの拡散を狙った
—このシリーズを出すことになった経緯を教えて頂けますか。
「S Cawaii!」本誌のコンテンツを再編集し、新たなコンテンツを加えて、ムック化したものです。まずは2013年春からメイク・ヘアアレンジ・ダイエットの三つのテーマごとに出版しました。メイクについては、梶恵理子さんやざわちんさんが登場したり、桃さんがブログで半顔メイクを披露したり、これまで女の子たちが(実は)やっていて男性にはひた隠しにしていたメイクのテクニックをさらけ出すようになってきて。
メイクのプロでない普通の女の子たちが努力と研究によって、すごいテクニックを持っているということに世の中が気付き始めた、というところでした。今はテレビでも「ネットで話題」として取り上げることも多いので、このムックの情報がまずはネットで拡散し、ゆくゆくはテレビまで網羅出来ればと考えていました。
「整形メイク」というワード自体は、プロであるヘアメイクアップアーティストの田村俊人さんが「整形メイクの達人」としてすでに有名でしたし、S Cawaii!では数年前からこのワードを使っていました。このムックのコンテンツもそうした過去にS Cawaii!で掲載したものの中から抜粋して掲載したものを使用しています。本誌の中でも人気企画でしたし、また雑誌だけのコンテンツで終わらせるのはもったいないということでムック化しました。
—2013年春の第1弾は早速累計25万部越えとのことですが。
発売3週間で約7万部を売り上げた段階で、さらに夏休みの終了までに15万部にしましょうという目標を設定しました。すでに用意していたYouTube動画をニュースにしていこうとネットメディアを中心にアプローチし、「モデルプレス」でご紹介いただくことになりました。その頃から新聞、テレビからの問い合わせが増えてきましたね。
「産經新聞」関西版の記者さんが手がけるWEB版の「ファッション・オタク通信」に掲載頂いたのが(新聞掲載の)きっかけでした。記者さんが「社内で男性の上司がビックリしていた。これはもっと読者モデルに取材をしたい」とあらためて取材を頂いて、5月末に大阪版の夕刊一面に掲載されました。
その後動画をもっと拡散させたいと、6月に札幌・名古屋・大阪・福岡・札幌の街頭ビジョンで流したのですがこれはあまり効果がなく。一方、読者モデルのビフォー&アフターのビジュアルを使った中吊り広告なら、インパクトがあるから絶対にバズるのではないか、という話もしていました。夏休みの時期を狙ってターゲットを、読者モデルに憧れながら少し郊外から通学し、休みの日は近場のショッピングモールに遊びに行くような、普通のギャルマインドを持っている女子高生・女子大生として、高校・大学の多い中央・総武線、京王線、小田急線、東武線で展開しました。
ちょうどその頃から「PR TIMES」にてプレスリリース制作・配信をお願いしています。ムックの発売時にはプレスリリースを出していなかったので、その時点(発売3ヶ月)でシリーズ累計38万部になったという点と、中吊りを始めたという点を訴求しました。当時すでに動画も再生回数が45万回を超えていましたし、それら説得力のある数字とインパクトのあるビジュアルを積極的に公開するようにしましたね。
中吊り展開後「サンデージャポン」からムックを紹介したいという依頼を頂きました。紹介の冒頭は「電車の中吊りでこういうものが出ている」という切り口で、中吊りがツイッターで話題になっていることや、プレスリリースも読んで頂いて興味を持たれたようです。地方局でのテレビ露出も増え、8月には地方でも中吊り展開を行いました。
—続いて、秋には第2弾が。
2013年11月にはそのシーズンのメイクのトレンドに合わせた、新たな一冊を出しました。第1弾を出した当時は、「いかにも盛っています」と主張するような派手めメイクだったのですが、昨年の秋くらいからは「パッと見はメイクで盛ってる感はないけれど、実は盛ってます」というナチュラル風メイクが主流になってきたためです。この時は、初めてのイベントを大阪で実施しました。大阪で行った理由として関西でのムックの売れ行きが非常に良かったということや、当初から大阪のテレビが取り上げてくれたりと、メイク熱が高いと感じていたことも理由でした。
—関西からトレンドに火がつくということは、多いのでしょうか。
流行は西から火がつくということが多いという印象があります。(関西以外にも)福岡でダイエット本が売れたりだとか。やはり大阪と福岡はそのような(火がつく)印象はありますね。
読者への「メッセージ」は、SNS上のリアルな声も参考に
—今年春にはさらに最新作を出版されていますね。
2013年春、2013年秋に続くメイク本の第3弾ですね。今回はヘアとメイクを一緒にした点、より春向きのメイクにした点、単にメイクだけではないコンテンツ(「読モになる方法」等)を盛り込んだ点が新たな点です。続いて6月にダイエット本を出し、これら2冊が揃ったタイミングで今年もプレスリリースを出しました。そこでは今まで「整形メイク」と言っていた点を「全身を整形できる」という形でくくり、今回もインパクトのある誌面ビジュアルを盛り込みました。
このプレスリリースを元に「マイナビウーマン」で取り上げられ、「LINE NEWS」でインパクトのあるビジュアルが出ましたね。そこで、非常に売り上げが伸びました。さらに、7月に発売した二重にするメイクテクを集めたムックでは「二重メイクに実はばんそうこうを使っている」という意外な事実をプレスリリースに盛り込み、これもLINE NEWSで取り上げられました。昨年の発売当時に比べて(LINE NEWSの)影響力がとても大きくなった印象があります。
「Newspicks」や「Gunosy」など、他のニュースアプリも注目しています。感度の高い読者達は元々チェックしていたかもしれませんが、今は幅広い年代がニュースアプリから情報収集しています。ここに情報が出ると大きいですね。
—ちなみに、SNSなどで読者の声をチェックすることもありますか。
Yahoo!リアルタイム検索をよく使いました。特に、中吊り展開など大きく話題になるタイミングでは頻繁に検索しました。ちなみにムックの最初のページにある文章は、編集部から読者へのメッセージと位置づけて書いているんですね。ここにどういう言葉を持ってくるかは、(SNS上も含めた)リアルな声を参考にしていますね。この「メッセージ」は動画の冒頭にもちゃんとつけています。誌面よりも動画の方が、より冒頭にメッセージは頭に入ってきやすいので。
—今後の展開としては。
本誌では次に「美サギ女子」というワードを出して、メイクで「サギってる」女子を「チーム美サギ女子」と展開し、入りたい女子を募るなど常にメイクのネタはやっていこうとしています。みんな「かわいい顔は作れる」ということがわかっていて、すっぴんを見せることが平気になってきていますね。読者モデルの子たちも、「他の女の子達が励みに思ってくれるなら、是非写真を出してください」と積極的に協力してくれています。また、男性目線を気にしているようで気にしていない、自分さえかわいくいられればそれが一番ハッピーと感じているという点もあるのだと思います。
【Interviewee】
株式会社 主婦の友社
販売部
広報・宣伝課 課長
長友 薫さん
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