航空機内を舞台にしたワクワクするマーケティング9選
Case: Creative in-flight marketing
通常、航空機内での広告といえば機内誌や前方スクリーンなどを思い浮かべますが、今回ご紹介するのはそんな常識を覆す、ユニークで斬新なものばかり。
はるか上空で展開される、工夫を凝らしたプロモーションや、他社との差別化を図るためのマーケティング施策の数々をご覧ください。
1.コカ・コーラが手掛ける、飛行機の中に訪れた幸せなひと時
[国名:メキシコ/企業名:Coca Cola]
コカ・コーラがメキシコで手掛けたサプライズプロモーション。機内の全ての座席の天井に“Despierta La Magia”(マジックタイムが始まるぞ!)と記された赤いボタンを設置しました。
乗客の一人がこのボタンを思い切って押すと、キャビンアテンダントがコーラのボトルやTシャツなどのグッズが入ったクリスマスプレゼントボックスを本人の座席まで持ってきてくれます。
ボタンを押すとプレゼントが貰えるとわかった乗客達はこぞってボタンを押し始め、CA達は全ての乗客にプレゼントを配ります。全員にプレゼントが配り終わると機内が暗くなり、突然コカ・コーラのCMでお馴染みのサンタクロースが登場。機内の盛り上がりは最高潮に達します。
現地に到着するとコカ・コーラのキャラクターである「シロクマ」君がタラップまでお出迎えしてくれます。コックピットからは、サンタが手を振って乗客をお見送り。最後の最後、荷物受取所では乗客が預けたバッゲージにコカ・コーラのタグがつけられていたという、徹底した演出ぶりでした。
2.英高級百貨店ハロッズ、上空1万メートルでファッションショーを開催
[国名:UK/企業名:Harrods]
ロンドンの高級百貨店・ハロッズが、大手航空会社のブリティッシュエアウェイズと提携して、機内でファッションショーを開催し大きな話題となりました。
上空1万メートルでファッションショーが見られたのは、ロンドン発ヨハネスブルグ行のA380便。乗客は高級シャンパンやオードブルを嗜みながら、ロンドンの人気ファッションブランド・ステラ・マッカートニー、テンパリー ロンドンなどのサマーコレクションを楽しむことができます。
ハロッズとブリティッシュエアウェイズは年間でパートナーシップ契約を締結しており、このファッションショーが合同企画の第一弾。ショーの舞台裏やライブ映像をSNSで積極的に公開するなどして、ソーシャルメディア上で大旋風を巻き起こすことに成功したそうです。
3.機内で楽しむ生ライブ!Virgin Atlantic航空が手掛けるサプライズパフォーマンス
[国名:UK/企業名:Virgin Atlantic]
ヴァージン アトランティック航空が2013年4月に初の自社国内線サービス「リトル・レッド」をロンドン-エジンバラ線で開始したことを記念し、機内で“ライブパフォーマンス”を行いました。
世界最大の芸術祭「エディンバラ・フリンジ・フェスティバル」に出演したコメディアンによるコメディーショーや、マンチェスターやスコットランドのミュージックシーンを彩る曲を、機内にいながら生演奏で楽しめるというものです。
パフォーマンスの内容やラインナップは、同社のFacebookやTwitterから確認できたものの、“ちょっとしたサプライズ感”を演出するために、ライブを行うアーティスト名や、便名などの詳細な情報はあえて公表しなかった模様。
飛行機内でのエンターテインメントといえば、映画・音楽・ゲーム等が常識でしたが、生のコメディーショーやライブ演奏を企画するとは斬新なアイディアですね。
4.テーブルを出すと眼下に広がる絶景!絶対に旅行に行きたくなる機内PR
[国名:マレーシア/企業名:Golden Holidays]
マレーシア航空傘下の旅行会社「Golden Holidays」による、アンビエント広告。飛行機の座席に座り、目の前のテーブルを出すと、そにはスキューバダイビング、スノーボード、ロッククライミングなどをする“足元”の様子を写した写真が貼ってあります。
テーブルを出したときにちょうど腿のあたりから下が隠れることを利用して、青く透明な海や真っ白なゲレンデが足元に広がるように見せたものです。「次の旅行はこんなことをしてみたい!」と思わずにはいらない、ナイスなデザインですね。
5.離陸前に『別の意味での安全』をレクチャーするDurexのドッキリプロモーション
[国名:ポーランド/企業名:Durex]
コンドーム世界最大手ブランド「Durex」が航空機内で実施したアンビエントプロモーション。普通飛行機に乗ると、離陸前にキャビンアテンダントが緊急時の対処法など「安全のための説明」を行ってくれますが…
ここでは突然CAの女性が、おもむろにコンドームを手にして使用方法について説明を始めます。乗客は予想外の出来事に困惑の表情を浮かべますが、コンドームが座席の前のポケットに入っているというアナウンスを聞き、一斉に取り出して手にします。
CAによるコンドーム使用法に関するレクチャーは更に続き、コンドーム本体をパッケージから取り出し、突起状のモノに装着していきます。その様子を唖然とした表情で眺める乗客。はしたない!という感じで目を覆う人も。
最後に「これ、Durexのドッキリプロモーションだったんだよ」、とアナウンスで打ち明けたところで、乗客の皆さんにようやく笑みがもれてフィナーレ。航空機内での『安全』と、別の意味での『安全』(望まない妊娠や性病から身を守る)をかけるという突拍子もない発想でした。
6.クールなダンスでおくるヴァージンアメリカ航空の機内安全ビデオ
[国名:USA/企業名:Virgin America]
ヴァージングループによって設立されたアメリカの格安航空会社・ヴァージンアメリカ航空が、まるでミュージックビデオさながらの機内安全ビデオを公開しました。
飛行機が離陸する直前に必ず見せられるセーフティビデオ。流れる内容と言えば、シートベルトの着用、酸素マスクや救命胴衣の扱い方など、毎度同じ内容でなかなか最後までまともに見ている人は少ないはず。
しかしこのビデオは5分間画面にくぎ付けになること間違いなし。CAが見事な歌声とノリノリのダンスパフォーマンスで機内の安全を説明します。子供ラッパーや、ロボットダンスパフォーマーも登場して愉快に機内安全を紹介し、飽きることなく最後までしっかり見入ってしまう秀逸なビデオです。
7.エミレーツ航空、“水タバコが吸えるラウンジ”を機内に設置
[国名:UAE/企業名:Emirates Airlines]
航空会社の満足度調査で常に上位にランクインする、ドバイのエミレーツ航空が、2014年6月からビジネスクラスとファーストクラスの搭乗客向けに、“機内で水煙草が吸えるラウンジ”を設置すると発表しました。
同社によると今回のサービスは中東の顧客向けに、“機内にいながらも自宅で寛いでいるかのような感覚”を体験してもらうとともに、初めて中東を訪れる搭乗客向けに、“機内で中東の生の文化に触れてもらう機会”を提供することが狙いだといいます。
ビジネスクラスとファーストクラスの搭乗客は、自由に水煙草をCAにオーダーして、それを手に専用ラウンジで思う存分リラックスすることができるそうです。
“航空機内での禁煙”という世界的な常識を覆す、驚きのサービス。他社との差別化、同社の強みである“ラグジュアリーな航空体験”を強化する1施策として、『水煙草が吸える航空機』という点に見出した点に文化の違いを感じます。
8.トルコ航空、“スタートアップと投資家を結ぶ”機内サービスを開始
[国名:トルコ/企業名:Turkish Airlines]
トルコ航空がスタートアップ企業と投資家のマッチングサービス「Invest on Board」を開始しました。日々忙しい投資家は、じっくり次の投資先を検討する時間が取れないのが現状ですが、そんな投資家も、“空の上ならまとまった時間をとれるのでは?”という視点から考案された企画です。
こちらはビジネスクラスの乗客を対象とした機内サービスで、スタートアップ&ベンチャーキャピタリストのためのサイト・eTohumに掲載されている、厳選されたスタートアップのピッチ映像を座先にある液晶画面で視聴できるというもの。
いずれもトルコを拠点としているスタートアップのものですが、今後は世界中を拠点とするスタートアップの紹介も視野にいれる予定だといいます。目の付け所が非常に鋭い機内サービス。ビッグビジネスにつながりそうな新しいアイデアに、雲の上で出会うことはできるでしょうか?
9.KLM航空、ディズニー映画とタイアップして『機内』でスペシャルな試写会を開催
[国名:オランダ/企業名:KLM Royal Dutch Airlines]
ユニークなプロモーションに定評のあるKLMオランダ航空が、同社のモットーである「Journeys of inspiration(インスピレーションに溢れる旅を!)」を体現する、子供向けのキャンペーンを実施しました。
300人の子供たちを招き、空港内の飛行機整備場にあるKLMの機内で新作アニメ「Planes」の試写会を行ったのです。子供たちが機内に乗り込むと、ポップコーンとジュースのサービスの後、いよいよ試写会がスタート。これだけでも十分素敵な企画ですが、実はここからさらに、子供たちを喜ばせる仕掛けが用意されていました。
映画が始まると、ストーリーの展開やシーンに合わせて飛行機格納庫内の照明が変化するのです。ダスティーが嵐の中、荒れた海の上を飛行するシーンでは実際に庫内で豪雨を再現するなど、まるで映画の中に入り込んだような気分を演出する仕掛けに、子供たちも大喜び。
イベントに参加した子供たちにとって一生忘れられないような、素敵な体験を飛行機の中でしてもらう。そしてそれにより、その背後にいる親の心までをも掴んでしまおうという、同社の思惑がチラリとのぞく巧みな企画でした。
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