日本では決してお目にかかれない“世界のノンアルコールビール広告”
Case:Czech Girls
本日は「ノンアルコールビール」の広告を紹介します。
皆さんご存知の通り「ノンアルコールビール」は、日本では健康志向や飲酒運転の罰則強化などを背景に近年市場が拡大し、私たちは数多くのメディアで広告を目にする機会が増えています。それらの広告メッセージ・クリエイティブでは、「爽快感」、「健康にいい」、「妊婦でも飲める」、「飲んでも自動車の運転が可能」といった点を打ち出しているものが大半を占めています。
今日紹介する海外のノンアルコールビール(一部ローアルコールビール)の広告はこれらとは全く異質なメッセージとクリエイティブに仕上がっています。
一つ目は、チェコ大手ビールメーカー「Budweiser Budvar」のプリント広告(2012年)
とても美しい成人女性がこちらを見つめているというクリエイティブ。
広告メッセージは、『平均的なチェコ女性がこんな風に見えていて、どこの誰が一体アルコールを必要とするだろうか?』というもの。
このメッセージの意味を理解するには、チェコ人とビールにまつわる2つの通説と、そこから派生したお酒を飲む一部男性の“ちょっと変わった”インサイトを理解していることが必要です。(※広告ターゲットとなるチェコ人男性の頭には通説が認識されているはず。)
通説の1つ目は、「世界的にみてチェコ人の女性には美女が多く、女性の容姿レベルが全体的に高い」と考えられていること。2つ目は、「男性がお酒を飲んで酔っ払うと、その男性の目には女性が綺麗に見えるようになる」と考えられていること。
そしてターゲット男性のインサイトに「お酒を飲んで酔っ払う楽しみの一つに、“綺麗に見えるようになった“女性をめでること」があるということを捉えた上で、今回の広告表現が考案されたように思います。
Budweiser Budvarはこれら通説とインサイトを前提として、『あなた方チェコ人男性の周りにはいつもこんなに美しい女性たちが目の前にいるはずなのに、綺麗な女性を見て楽しむためにお酒を飲んで、わざわざ酔っ払う必要なんてないですよね』、『ノンアルコールビールっていう選択肢もありますよ!』というメッセージを発信しているようです。
ターゲットとなるチェコ人男性の『目を見開かせる』非常にユニークなメッセージです。
続いては、ドイツ「Wurzburger Hofbrau」のノンアルコールビールの広告(2005年)
こちらの広告のテーマは、「Ugly Woman」。
あまり美しくない女性の見た目(男性の目に写る見え方)が、ノンアルコールビールを『5杯飲む前』と『5杯飲んだ後』で一切変化がない、というクリエイティブです。
2005年ノンアルコールビールという概念がまだ一般的になっていない中、「ノンアルコールビールってこういうものですよ」と伝えるために、前述のビールにまつわる通説(酔うと男性の目には女性は綺麗に見える)を前提に据えた表現になっています。
フェミニストから睨まれそうな広告表現です。。
最後は、番外編としてシンガポール「Ibrew-Coopers Beer」のローアルコールビールの広告(2009年)
こちらの広告のテーマは、「THE BEER GOGGLES EFFECT 」。
『ローアルコールビールを飲んだ男性の目に写る女性の姿』を表現したクリエイティブ。
「女性の顔は美しいけど体はごつかったり」、「そばかすだらけの女性の胸の谷間だけが美しく見えたり」というもの。
普通のビールを飲んで酔っ払うと、女性自体(パーツ全部)が美しく見えるものだけど、ローアルコールビールだと女性の一部だけが美しくなるという表現。
「ローアルコールビールってこういうもの」ということを伝えるために、「Ugly Woman」を応用したクリエイティブですね。
本日紹介したノンアルコールビール(ローアルコールビール)の広告表現は日本とは全く異質なモノでしたが、海外でも日本と近しいメッセージ(妊婦も安心、運転も可能)を発信する広告も勿論あります。興味のある方は下記のイメージもご覧ください。
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