ラハティ国際ポスタートリエンナーレ2025グランプリ、ゑ藤隆弘のインタラクティブ表現
STUDY LLC.の代表であるゑ藤隆弘が手がけたポスター《Repetition and life: bud, P2424》が、フィンランド・ラハティで開催されている「ラハティ国際ポスタートリエンナーレ2025」にてグランプリを受賞しました。
このコンペティションは1975年に創設された歴史ある国際ポスターコンペティション。今回は50周年記念展として開催され、世界から約4,000点の応募がありました。受賞作品は、2025年6月6日(金)から9月7日(日)まで、ラハティ視覚芸術博物館マルヴァで展示されています。
今回グランプリに輝いた《Repetition and life: bud, P2424》は、同じ絵柄のポスターを3回繰り返して構成するという単純な仕組みながら、二次元と三次元を行き来するような視覚言語の探究、さらには静的な構成を視覚的・身体的に体験させるインタラクティブな表現が高く評価されました。
《Repetition and life: bud, P2424》2024
国際審査員団は、次のように評しています。
「二次元と三次元の視覚言語を発明的に探求している点で際立っており、折りたたみや回転が可能なフォーマットにより、静的な構成がインタラクティブな体験へと変化し、観る者に身体的・視覚的な関与を促します。空間構成は精緻で、構造は動的でありながら、奥行きや多層的な意味の開示においては繊細な表情を見せます。ネガティブスペースと隠された距離感の相互作用がリズムと動きを生み出し、テーマである“DANCE”の本質を響かせています。このポスターは単なる視覚的な主張にとどまらず、テーマに内包された生命力や流動性を体現しながら、明確なメッセージを伝えています」
How a Poster Begins to Dance ポスターの構成と運動の生成
ゑ藤さんは2022年の大会でもグランプリを受賞しており、コンペティションが隔年だったビエンナーレ形式から2014年に3年ごとのトリエンナーレ形式に移行して以降、初の2大会連続グランプリ受賞者となりました。
前回グランプリ受賞作品《Between Symbols and Illustrations_Summer morning》2018
前回のグランプリ受賞作品《Between Symbols and Illustrations_Summer morning》は、抽象化の過程で失われる細部=髪の毛を部分的に細密に描写し、記号の明快さと細部の豊かさを対比させつつ同居させることで、情報伝達の道具としての記号を自律的な存在へと解放する試み。
この作品では、人の後ろ姿という具象的なモチーフでしたが、その後はあえて具象性のわかりやすさから離れ、抽象表現や構成法を中心に研究・制作に取り組んできたといいます。今回の受賞作もその延長線上にある試作的作品であり、ポスターという形式そのものを問い直す試みでもありました。
ゑ藤さんはポスターを、グラフィックデザイン表現の探求・実験の場と捉えているとのこと。そこから得た造形的知見は、クライアントワークとしてのビジュアルアイデンティティ(VI)やサインシステムなどのデザインにも波及し、機能性を超えた独自なアプローチとして活かされています。
STUDY LLC.としての実績 【撮影】左上、右上:大谷宗平 右中央:太田拓実 左下:長谷川健太
東京工芸大学芸術学部デザイン学科の准教授でもあるゑ藤隆弘さんが、世界的なポスターコンペティションでグランプリ受賞。
今回受賞の報告とともに公開された、そのポスター制作におけるアプローチ法は、非常に興味深いものがあります。世界的に評価された作品としてのパワーを感じつつも、一見しただけでは分からない創意工夫の一端を垣間見られる貴重なものとなっています。
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