猫×ショートドラマ! アデコがTikTok運用で目指す派遣の働き方イメージ刷新|前編

総合人財サービスを展開するAdecco(アデコ株式会社/以下、アデコ)では、2023年10月末よりTikTokアカウントの運用支援を行うLeading Communication(以下、LC)とともに「派遣先の社員が全員猫だった」という設定で、猫×ドラマを主軸としたTikTokの運用をしています。それにより、平均の11倍にも及ぶ高いエンゲージメント率の獲得や、僅か開設1年で2.7万人ものフォロワーを獲得したといいます。

派遣社員のアデ子さんが入社したおニャンコ商事は、猫社長、猫次郎さん、ネコ美さんという猫しかいない会社だった……というところから実際のお仕事現場でも起こりそうなさまざまなシーンがコミカルに、ていねいに描かれていきます。

開設から1年を超え、「こんな会社で働きたい」など投稿動画には、たくさんの愛あるコメントが寄せられるほど、多くの人の心に響く施策となりました。そんな施策の発端にはどんな背景があったのか、そして動画投稿を重ねるなかで、どのような知見が得られたのか、今後の展望も含めてアデコの菊井直人さん、LCの藤井久志さんの担当者お二人にお話を伺いました。

企画の始動から試行錯誤の変遷を伺った前編とともに、後編では実際に感じられた手応えやコンテンツの成長と今後の展望をお届けします。

※こちらは前後編の前編です。後編はこちらから(2025年3月12日12:00公開)

まずは、自己紹介と今回のプロジェクトでのお立場や役割をお聞かせください。

菊井 アデコ株式会社マーケティング部の菊井です。アデコのブランドマーケティング全般の責任者という立場にあります。TikTokは2023年10月30日に動画を初投稿し、運用開始しました。その頃、弊社の「派遣サービス」の課題として捉えていたのは、これから先、派遣社員が減少することになるのではという危惧でした。

日本国内での就労人数はどんどん増えていますが、今は正社員採用が増え、派遣社員の数はピークを越えてしまった状況にあります。人材派遣は団塊から氷河期といわれる世代が支えてきたビジネスのため、今後若年層の方々に対して、働き方の1つとして派遣雇用を検討し、選択をしていただくことが課題となっています。

そこで、そんな若年層に向けて派遣についての正しい情報を発信しようとなったんです。そして、リーチ力やブランド認知を高めて選ばれるようになるにはどんな発信方法が適切かを議論して、TikTokというプラットフォームは外せないということでスタートしました。

藤井 私は株式会社Leading Communiationのクリエイティブ担当をしています。主にアデコさんはじめ大手企業のアカウント運用を担当しています。メインとしては、お客様のニーズや企業課題に寄り添いながらTikTokなど、いわゆる縦型ショート動画を使って、課題を解決していくといった業務に従事しています。 アデコさんのTikTokアカウントに関しては、派遣社員という働き方の認知向上やイメージ向上でお手伝いしています。

実際にTikTokをやってみようとなってから、どのくらいの期間でオープンできたのでしょうか?

菊井 TikTok運用企画については、スタートの時から担当しました。どんな動画内容にするか、どんなパートナーとご一緒するかという検討にも時間をかけ、スタートにつなげていきました。

なるほど! そんななかで、今回の企画は猫とドラマを主軸、フックにする仕掛けとなっているところが肝かと思うのですが、企画段階では、いろいろな試行錯誤がおありになったのでしょうか?

菊井 猫に決まった経緯は、動物テーマはリーチを取れる、伸びるというところで、選択したことも1つの要因です。ただ、それと派遣のビジネスをどう繋げていけるかは、LCさんからアイデアをいろいろと出していただいて、藤井さんが入ってこられてからは、コンテンツやトレンドを意識したものを、さらに派遣のビジネスとうまく掛け合わせて進めていただきました。


LCの藤井さん(左)とアデコの菊井さん(右)<写真:筆者撮影>

 

LCさんからすると、そういった手法はもともとさまざまな案件で実践済みかと思います。そのなかで、今回の組み合わせは、アデコさんが目指しているところに合うということでご提案をされたのでしょうか?

藤井 そうですね。たとえば、なぜ猫で、犬じゃなかったのか。提案したとき、調査するなかで、派遣という働き方にはいろいろな選択肢があって、より自由に働きやすいというメリットがあるんだと気付かされました。その自由でのびのびとしたイメージは犬よりも猫のような気がして……それが猫を提案した理由の1つでもありました。

菊井 ああ、そうだったんですか。でも、言われてみると確かにそんなイメージですね。

藤井 そういう背景があったうえで、猫のコンテンツはTikTokをはじめ、どのSNS媒体でもジャンル的には大きい市場です。加えて、1年前にご提案した際には、今まさにトレンドのショートドラマ要素も、まだ目新しくてこれから流行っていくと思っていたんです。それで、猫とドラマっていうのを掛け合わせて、TikTokの市場でも新しさや人気のある作りになることを意識してご提案しました。


社長はじめ猫キャラクターには性格設定としてMBTIも<写真:筆者撮影>

ちなみに、動画に出てくる女性は、アデコさんが訴求したいターゲット層を意識してキャスティングされたのでしょうか?

藤井 はい。もともとターゲットが20代から30代、そしてオフィス系のお仕事で就業される派遣社員の場合は、女性が多いとお聞きしていたので、その方々が親近感を持っていただける人というキャスティングでした。

菊井 具体的には、だいたい27歳くらいの方をイメージしていました。実際にキャスティングターゲットのイメージに合う方が起用されているなと思っています。


コメント数やいいね数など、数値結果も安定しています

 

あとは、猫がちゃんと画面に収まるってことがすごいと思いました。撮影の現場はどのような工夫をされているのでしょうか?

菊井 初めて撮影したときに、出演の猫を含めて、良いチームワークで撮影を進めていただきました。素晴らしかったです。雰囲気とかもすごく出ていますよね。やっぱりLCの皆さんが楽しんで作っていただいていることも、動画の引きにつながっているのだと思います。あとは、猫の声、アフレコもやっていただいているんですよ。プロの方じゃない、親しみやすさみたいなものがより良さとして出ていると思います。

藤井 あの声は、LCの社員が担当しているんです。そして、同じ人が一人三役で今も引き続きやってもらっているんです。

なんと! お一人の方が社長も猫次郎もネコ美も担当されているんですね。

藤井 SNSの媒体なので、距離感をすごく大事にしたいなと思っています。 これは、どのアカウントでもそうですが、ユーザーとどれだけ距離を縮められるかが大切だと考えているんです。それで、どれくらいアカウントを好きになってくれる? というこちらからのアプローチに、余計なフィルターがないように、あんまりプロっぽくしないというか、日常感が出るところを意識しています。

それはすごく動画から伝わってきました。そして、実際にスタートされてから、どんなところから効いているなといった手応えを感じられたのでしょうか?

菊井  やっぱり猫を飼う方は、多いですね。アデコ社内にも多くて、そういう人たちは確実に視聴してくれるところが、TikTokへの入り口としてもやっぱりよかったと思います。社内からの反応もそうですが、競合他社のみなさんからも「動画見たよ」「あれ、おもしろいよね」という声をいただきました。それで、これは成功につながっているのかなと思うようになりました。

@adecco_official これからもよろしくお願いします!😻 #仕事 #アデコ#ショートドラマ #ドラマ ♬ オリジナル楽曲 – 派遣先の社員が全員猫だった件

派遣社員アデ子 契約更新するのか!?

視聴数が伸びていますが、コメントもたくさん寄せられていて、なかなかその企業の公式アカウントにコメントが寄せられるのは珍しいのかと思いますが、そのあたりはいかがですか?

菊井 確かにアクションの多いコンテンツだなと思います。そして、やはり猫をテーマにして良かったところは派遣社員の「契約更新と給与」を動画にしたときの親和性の高さです。どうしても日本人ってお金や給料の話題に抵抗があると思うんです。

それを猫社長だったり、猫次郎さんだったり、猫がフィルターになってくれているのを感じました。この動画は好評で、「社長素晴らしい」「アデ子さんおめでとう」といった、すごくポジティブなコメントもあって、猫を通じて訴求したことの良さだったと思っています。


投稿後のデータを分析しながら、運用の微調整も<写真:筆者撮影>

たしかに、雑念なく視聴できるのは猫のおかげかもしれません。ほかにも、身だしなみや電話応対など、リアルな社会人としてのハウトゥーも織り込まれていますよね。ショートドラマで、毎回違う面を見せていくバランスがすごく秀逸です。そのあたりはどのような工夫や意図がありますか?

菊井 我々としては、より派遣の仕事を身近に考えていただきたいという思いがありました。どういうプロセスを踏んで契約更新があって、給料が上がるかなど派遣の働き方と弊社の役割を伝えたかったんですね。当初、なかなかうまく表現できなかったんですが、動画投稿を継続するなかで徐々に受け入れてもらえそうなムードが醸成されてきたと思います。

最初はどうしても猫好きな人たちのフォローが外れていくんじゃないかって、すごく心配したんですよね。様子を見ながら長くやってきて、ある程度ベースができたから今、より派遣の働き方みたいなことを動画に盛り込んでも、皆さんに違和感なく見てもらえるようになったのかなと思います。


リーチしたいターゲット層の反応をしっかり掴む結果に!

では、そういったテーマの動画を上げる時は、ちょっと反応や反響にドキドキしながら投稿されていましたか?

藤井 たしかに、仕事の要素を入れることで、フォローが外れる可能性も大いにありました。それで、エンタメ要素を冒頭の方にしっかりと持ってくる、といった工夫を心がけました。仕事の話に重きが置かれるので、その前の導入部分に気を遣って全体のバランスを取るといったところです。

なるほど。ちなみに更新の頻度や投稿時間帯なども、視聴する方々の特性に合わせて工夫されたりしているのでしょうか?

藤井 そうですね、基本的には過去のデータを見て、決めています。当初は、20代後半から30代前半を狙っていたんですが、40代や50代の方も見てくれるなど徐々に広がってきたんです。

投稿のタイミングは、投稿後すぐ視聴されるというよりは、投稿後に1〜2時間経って視聴される傾向があります。それで、ちょっと早めの時間で18時に投稿しています。仕事を終えて家に帰宅されるタイミングを狙っていて、19時や20時に動画が視聴されやすいようにしています。もちろん、他の時間帯に公開することも試していますが、基本的にはこの形式にしていますね。

いろいろやった上で、いちばん効果的なパターンが見えてきた、と。

藤井 そうですね。やはりお仕事終わりに動画を見て、癒やされたいっていう需要があるように思います。

(前編・了)

2025年3月12日(水)12:00に公開する後編では、さらに実際に感じた手応えやコンテンツの成長と今後の展望とともにお届けします。※後編はこちら

<インタビュイープロフィール>
菊井 直人(きくい・なおと):アデコ株式会社のブランディング・マーケティング責任者。

藤井 久志(ふじい・ひさし):株式会社LeadingCommunicationのクリエイティブDiv.ディレクターとして実際の動画制作からアカウント運用に従事。

・※関連リリース:Adeccoの「ハケンに夢を。」プロジェクト、『交通広告グランプリ2024』で「メディアプロモーション部門 優秀作品賞」を受賞

・※関連リリース:(配布は既に終了しています)Adecco、期間限定LINEスタンプの配布を開始

(取材・文/見野歩)

その他のインタビュー記事についてはこちら
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