春なのに茶色?意外性で話題の「ブラウンの挑戦状‼️」企画裏側をインタビュー|後編

春といえば、ピンクなどのカラフルなカラーのビジュアルをまとった広告や商品が増える季節。そんなタイミングに、化粧品ブランド「キャンメイク」があえて仕掛けたのがブラウン一色の新作アイシャドウパレットと「ブラウンの挑戦状‼️」という茶色を全面に押し出したOOH広告施策でした。

・PR EDGE紹介記事:「ブラウンの挑戦状!!」カラフルな春カラーとは真逆のキャンメイク広告が渋谷に登場

春の新色としてブラウンを全面的に打ち出すプロモーションは、SNSなどでも大きな話題になりました。今回は同施策のプランニングからクリエイティブを手がけられた東急エージェンシーの担当者3名にインタビューを実施。これまでのブランドイメージを一新する施策の裏側には、どのような目的や企画意図があったのか、苦労した点やこだわりから実施後の手応えなども含めて、お話をうかがいました。

前後編の全2回で、前編では企画のスタートから、試行錯誤して練っていった施策の裏側まで、後編では実施後の手応えなどについてをお届けします。

インタビュー前編はこちら

<インタビュイープロフィール>
渡邊一生(わたなべ・いっせい):東急エージェンシー第5統合プランニング部所属のプランナー・コピーライター。「ブラウンの挑戦状!!」プロジェクトでは、全体のプランニングと掲出媒体ごとの言葉の企画と整理をするコピーライターを担当。
庄田有希(しょうだ・ゆき):東急エージェンシー第2統合プランニング部所属。デジタルプロモーションやアクティベーションを中心に企画する部署の在籍経験を生かし、「ブラウンの挑戦状!!」プロジェクトでは、SNS周りを中心に全体プランニングなども含めて担当。
山本江美奈(やまもと・えみな):東急エージェンシー第5統合プランニング部所属のプランナー・コピーライター。「ブラウンの挑戦状!!」プロジェクトでは、元ストラテジックプランナーの経験を生かしたインサイト起点の企画プランニングや、コピーライターとしての企画タイトル開発などを中心に担当。

今回の施策で苦労されたところは、どんなところですか?

渡邊 今回の施策は、キャンメイクの商品企画担当者の熱量をそのまま企画に落とし込んでいるので、広告の掲出文言だけでなく、SNSでの投稿もすべて担当者に書いてもらった文章をベースにしています。

XやInstagramも含めて、けっこうな数量の投稿を展開したので、たくさんの文章を書いてもらいました。そこは苦労というか、物量をこなすのが大変でした。それでも、スピーディに提出や確認の戻しがあったのも熱量あふれるエピソードです。ある程度先に決めたルール内で書いてもらったんですが、前のめりなスピード感で提出してくださっていました。


<実際に手書きで送られてきたという原稿の数々>

広告掲出以外にもSNSでの発信も140文字からはみ出るメッセージを画像で投稿するという、広告と同じく担当者の商品愛や熱量があふれる施策でしたね。そのあたりはどのようなことを意識して企画されていたのでしょうか?

庄田 キャンメイクは、SNSとの親和性がすごく高いんです。メイク商品はInstagramが強いという傾向があり、それはキャンメイクも同じです。ただ、Xも強いという特徴がキャンメイクにはあります。口コミの波及度や熱量がすごく高いブランドなんです。

そういう意味では、Xの文脈に則った企画は合うのではないかと考えました。無料版のXでは文字数制限があるのですが、あえて文字数制限を活かし自分の気持ちを伝える特有の文脈がありました。今回はそれに乗っかってみようということで「140文字に収まりきらなかったので、ぜひ読んでください」という投稿をクリエイティブに活用しています。

それは、これまでのご自身の知見から導き出されたのですか?

庄田 Xの文脈に企業が乗っかることは、良い点も悪い点もあると思います。今回は「商品開発者のアツい思いが溢れてしまった」という企画をどう生活者目線に落とし込み、発信していくべきか? の視点で乗っかるべき文脈を探しました。

SNSで展開された担当者メッセージも本当に熱量が伝わるメッセージになっていて、広告掲出との地続き感がありました。

渡邊 そうですね。あの方が担当じゃないと、今回の企画は成立しなかったですし、そもそもこういった内容での提案にはならなかったと思います。


<4媒体それぞれに特性に沿った掲出内容が盛り込まれ、相乗効果を生み出しました>

施策実施後の反応として、嬉しかったことや意外だったことがあれば教えてください。

渡邊 キャンメイクのXアカウントは60万人くらいフォロワーがいて、コスメ好きな方やキャンメイク好きな方がフォローしています。「中の人の熱量がすごい」とか「ブラウンに興味なかったけれど、作り手の思いがすごくいいよね。欲しくなった」といった投稿は印象的でした。

今回の施策を通じて、「コスメ好きな人が作ってくれたんだ」とか、小ネタにたどり着いた人から「新色のネタバレあって沸いた」といった反応もありました。あとは、「あんまりブラウンに手が伸びない私だけど、そんなに言うなら」「ブラウン好きが作っているというだけあって、わかってる感あるよね」という声も寄せられました。

一方で、そういった好意的な反応とは対照的なコメントも多少ありました。企業の公式アカウントで普段と違ったことをするとフォロワーが驚いてしまうということが今回もありました。中の人が人格を持ってコミュニケーションをする手法は、ギャップが生じてポジティブな反応が生まれる場合もあるのですが、普段キャンメイクはそういう運用をしていなかったので、困惑や否定のコメントもたしかにありました。そこは難しさを感じた部分でしたね。

今回の施策単体でのトータルバランスは、かなり練り込まれていましたが、これまでキャンメイクが広報してきた流れとはあまりに異質だったことで、良い反応も悪い反応も起こったんですね。

庄田 企画を考えるときに「私はこれがいちばんだ」と言われてしまうと押し付けがましくて人は受け入れ難いけれど、「私はこれが好きなんだ」と言うと人は受け入れやすいというロジックがあると言われています。今回はそのカテゴリーに当てはまっていて、「偏愛」を軸にしています。その「偏愛」はSNSでの反応を見ていると、全員が全員受け入れられるものではないんだなという気づきがありました。

正直なところ、Xに関してはそういう反応もあるだろうなと予想していたところもあるので、想定内ではありましたが、実際にやってみたことで見えてくることもありました。学びとして、温度感をどこまでナチュラルにしていくか、とはいえナチュラルにすればするほど印象に残らなくなってしまうので、どうやってちょうどいい折衷を見つけていくかを、今後は突き詰めていく必要があるという課題を感じましたね。

自然だからこそ埋もれてしまう、また尖りすぎたからこそ反発も大きくなってしまう、どちらの可能性もあるなかで、ターゲット層にきちんと届けられるちょうどよいバランスの施策にどう整えるかというのは、毎回の思案どころなんですね。

庄田 はい。毎回「これが正解だ」といえるものがあるわけではないのが、難しいところですね。

山本 ただ、「キャンメイクっぽくない」「キャンメイクらしくない」という言葉も、逆に褒め言葉になる部分もあると思っています。なぜなら、私たちは普段流れているキャンメイクのTVCMなどを担当させていただいているわけでなく、そういった通常施策と今回の施策では目的もターゲット層も異なるためです。

だからこそ、思い切って今までになかったアプローチというか、文字通り挑戦ができた広告施策だったと思います。「キャンメイクどうしちゃったの?」という良い意味でのギャップを感じてもらえたことで、新しいブランドイメージを創出できたと思っています。


<109へ向かう場所という特性を意識した小ネタ満載で見つけた人は思わず投稿も>

デジタルとOOHの掛け合わせ施策は、キャンメイクブランドにとっても挑戦施策でもあったんですね。

渡邊 キャンメイクがこれまで展開してきた店頭やTVCM、渋谷などの主要駅に展開される純広告のOOHといった既存のコミュニケーション施策で購買層への認知はすでに行き届いている印象です。そこは継続しながらも、新しい手法での施策がさらなるブランド成長のために必要でした。とくに今はデジタル主流なので、そこを絡めた施策、またXなどは広告出稿以上の効果を生み出すこともあるので、そういった領域に挑戦したいという意思がクライアント側にありました。OOHとSNSを掛け合わせた企画はどうだろうといった発想もクライアント側にはもともとあったようです。

施策実施後、SNSでの反響などは数字的な効果として確認できたところはありますか?

庄田 数字的にはそんなにインパクトのある反響というのは、残念ながらなかったです。実施後にフォロワーがものすごく増えるとか、いいね数がものすごくのびるとか、定量的な部分での結果はありませんでしたが、口コミの数については増えたなという印象がありました。

キャンメイクは、商品自体のパワーがあるので、もともと新商品発売の告知が出ると一定数、いいねやリポストなどの反応を得やすいブランドではありました。ただ今回は、商品を主語にしないコミュニケーションでコメントなどを誘発しやすい、従来とは少し異なったエンゲージが取れたのかなという実感があります。

「いいね」だけではなく、コメントをしたくなるコミュニケーション施策として、これまでの施策から一歩踏み込んだ成果が感じられたのですね。

渡邊 はい。クライアント側で精査した今回の施策の調査結果を共有いただいたのですが、渋谷では実際の商品を扱う店舗の担当者が今回の施策をおもしろがってくれて、このクリエイティブを流用した店頭のツールなどを展開したそうです。それを広く活用していただいたことで、売り上げも過去最高になったというお話がありました。

庄田 SNSで「ブラウンの挑戦状!!」を商品名にしてほしいというような投稿をされた方がいて、それも店頭で展開してもらえたことで、SNSで話題になっている商品という連携がうまくいったのかもしれません。

(後編・了) 

7月18日(木)に公開したインタビュー前編では、企画のスタートから試行錯誤して練っていった施策の裏側について教えていただきました。

インタビュー前編はこちら

・※関連リリース:【キャンメイク】ブランド初となる”真っ茶色”の広告を実施!?企画担当者の熱い想いが綴られた交通広告が4/1より渋谷に出現!カラフルな春にキャンメイクから「ブラウンの挑戦状!!」

(取材・文/見野歩)

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