「オンライン名刺」の価値をどのように伝える?生活様式の変化の中でSansanが展開した広告施策

Case:Sansan 新聞広告&「それ、早く言ってよ〜」シリーズ TVCM

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・PR事例の裏側を、担当者へのインタビューを通し明らかにする連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、Sansan株式会社が5月末〜6月にかけて展開した事例を取り上げます。

5月29日(金)には、今年3月に発表した法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」の機能「オンライン名刺」を訴求する15段広告を、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞の中面に掲出。

6月には同じく「オンライン名刺」をテーマにした、CMシリーズの最新作を公開。2013年のCM放送開始からこれまで7作にわたって出演してきた、松重豊さん演じる営業部長と野間口徹さん演じる課長が、はじめてオンライン商談に臨む様子を描いています。

新型コロナウイルス感染拡大による生活様式の変化の中、これらのクリエイティブを通して伝えたいメッセージとは?Sansan株式会社 執行役員/CBO(Chief Brand Officer)田邉泰さんにメールインタビューを実施しました。

当初制作していたCMをペンディングし、3週間で新規制作

―コロナ禍における広告戦略は、いつごろから検討を重ねていたのでしょうか?

リモートワークの広がりを受け、以前から構想していた「オンライン名刺」の開発を前倒し、6月より機能提供することを3月に発表しました。クラウド名刺管理という市場を開拓してきた私たちとして、オンラインでも対面と変わらない出会いの体験を提供し、ユーザーのビジネスを後押しすることが必要だと考えたからです。

その後、5月に「新しい生活様式」が発表されました。その中で新しい働き方の実践例として「名刺交換はオンラインで」と言及されていたことから、お客さまからの問い合わせも急増したのです。(そんな中)オンラインでの名刺交換とはどんなものかをより多くの方々に知ってもらうことが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、なおかつ経済活動を止めないために果たすべき役割だと考え、広告展開を強化することを決めました。

元々TVCMに関しては、昨年シリーズの第7弾を放送。この春夏で続きの第8弾を制作予定でしたが、世の中の感染拡大の中で撮影が難しくなったことから、一旦制作をペンディングしていたのです。しかし、先ほどお話したような背景を受けて、今回は急遽、スピンオフの第7.5弾という形で「オンライン名刺」をテーマにしたものを差し込み、3週間という短期間で制作しました。通常、CMの制作には3か月ほど要するので、かなりの突貫スケジュールでしたね。

―「オンライン名刺」機能を訴求するにあたり、意識された点を教えてください。

「新しい生活様式」で「オンライン名刺」が推奨される中、実際にオンラインで名刺交換と言われてもどうすればいいのか、イメージがつかない人がほとんどだと思います。CMや新聞など、多くの方が目にする広告をきっかけに興味を持っていただいて、そこから詳しく「オンライン名刺」とは何かを知ることができるような流れを作ることを強く意識しました。

―新聞広告は「オンライン名刺交換、はじまる。」というとてもシンプルなメッセージでしたが、こちらの制作にあたってこだわった点を教えてください。

新聞は、広告インパクトが大きく、メッセージ性が非常に強いメディアだと思います。シンプルなクリエイティブで、オンライン名刺を提供する私たちの想いを強調しました。

―TVCMは上だけスーツだったり、先に社内メンバーで話していたりと、「あるある」が多数ちりばめられていますね。こちらの制作にあたってこだわった点を教えてください。

「それ、早く言ってよ〜」のCMシリーズは、「Sansan」というサービスをビジネスパーソンの皆さんにわかりやすく訴求するために、ビジネスのシーンでの「あるある」という場面を、演技派俳優を起用し、リアルなドラマ仕立てで展開してきました。今回も「リモートワークあるある」を通して「オンライン名刺」の必要さを伝えることができるようなシナリオにしました。

撮影自体は、三密を防ぐため、最小限の人数でのリモート撮影を敢行しました。カメラマン不在、ディレクションも別場所からリモートで行いました。俳優さんには、1人でセットに入っていただき、PCに向かって演技をしてもらいました。

出稿の成果・反響は?

―これら広告展開の反響はいかがでしょうか。また、契約件数の増加などの傾向もありますか?

CMは、7作に渡りシリーズ化してきているので、毎回楽しみにしていると言ってくださる方がとても多いです。今回は「リモートあるある」が自分ごとと感じる方が多かったのか、いつも以上にSNS上での反響を感じています。

新聞では、地方のお客様から早速お問い合わせをいただくなど、Web広告ではリーチしづらいような、幅広いお客様にご覧いただけていると感じています。新聞にここまで大々的に出稿したことはこれまでありませんでしたが、やはりメディアとしての影響力の大きさを感じています。

契約数増加という形で数字に現れるまでには、少しタイムラグがあるかと思いますが、プロダクトサイトへのアクセスは増加しています。

―これから広告展開で打ち出していきたいメッセージや、今後の展開予定をお教えください。

当面は、全社的にも「オンライン名刺」に注力していく予定です。すでに2,000社以上の企業にご利用をスタートいただいていますが、6月22日(月)に新聞広告の第二弾を掲載しました。第一弾のビジュアルを踏襲しつつ、「オンライン名刺」を2,000社以上の企業に使用いただくようになった点を前面に出しています。また、CMシリーズ続編も制作再開にむけて動き出そうと考えています。

―過去のインタビュー記事(https://adgang.jp/2016/07/128609.html)でも「クリエイティブに力を入れる理由」という側面でお話をうかがいましたが、現在、御社が考えるクリエイティブへの重要性・考え方などについてうかがえますか。

もともと代表の寺田(親弘)も、クリエイティブやブランディングを非常に重要視しています。だからこそ、無名のベンチャーだった頃からTUGBOATにCMの制作を依頼したのだと思います。より「解像度」を上げて自分たちが実現したい世界を伝えるために、クリエイティブの力で形にするということは非常に重要だと思います。

社外に対してもですが、社内に対してもそうです。私たちは「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、全員が同じ方向を向いた組織です。そのミッションの大きさや、その先に広がる世界をメンバーに改めて伝えるという役割も、クリエイティブは果たしていると思います。

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