“ギャルの聖地”から若者の夢を叶える場所へ。SHIBUYA109が新ロゴ公募を決めた背景とは

Case: SHIBUYA109エンタテイメント『SHIBUYA109 LOGO CONTEST』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、「SHIBUYA109 LOGO CONTEST」について取り上げます。東京・渋谷のランドマークであるファッションビルSHIBUYA109は1979年にオープンし、来年で40周年を迎えます。その節目を機に、「若者の夢を叶える」存在として生まれ変わろうと、ロゴの刷新を決断し、109ロゴコンテスト(公募期間:4月18日~5月20日)を開催しました。

10代から20代前半の若い世代にSHIBUYA109のメッセージを届けたいという思いから、ロゴパーツを組み合わせてロゴをつくり、Twitterでシェアすることでコンテストに応募できる「109ロゴメーカー」を制作。約109億通りあるパーツの組み合わせによってロゴを制作できます。デザインスキルがあれば、イチからロゴを制作して応募も可能。最優秀賞に選ばれた作品の受賞者には賞金109万円が贈られます。

ロゴ変更に至った経緯、109ロゴメーカー制作について、株式会社SHIBUYA109エンタテイメント 広報担当山森晶奈さん、ブランディング担当リチャードソン千尋さん、株式会社東急エージェンシー デザイナー 佐藤茉央里さん、プランナー 室田彩貴さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか
ロゴ刷新の背景に、若者の自己表現手段の多様化

―SHIBUYA109のロゴを変更する理由について教えてください。

山森:今から40年前、現在の場所にファッションコミュニティー109としてSHIBUYA109がスタートしました。去年4月には、SHIBUYA109のブランドを扱う会社として、「SHIBUYA109エンタテイメント」を設立しました。企業理念の「Making You SHINE!」には、若者の夢を叶えるという思いを込めています。
過去にSHIBUYA109は“ギャルの聖地”だといわれたことがありました。現在でもそのイメージが先行することがあり、より幅広い若者に向けたブランドにしたいという私たちの思いとのズレを感じてきました。ロゴの刷新によって、SHIBUYA109が今までも続けてきた若者の夢を叶える場所であることを改めて伝えたいと考え、「SHIBUYA109 LOGO CONTEST」を立ち上げました。

―これまでにもイベントを開催するなど、新たな取り組みをされているようですね。

山森:SHIBUYA109から世界へ向けて、若者が活躍する機会を提供したいと考え、イベントなどを開催してきました。4月には、若者の夢を叶えるひとつのかたちとして「109路上ライブ」の決勝バトルを開催しました。店頭のイベントスペースで、歌のライブバトルを開催し、優勝者には賞金とニューヨークでのボイストレーニングの権利を贈呈しました。若者が世界に羽ばたいていけるよう、これからもいろいろな方法でお手伝いしていきたいと考えています。

―SHIBUYA109はファッションカルチャーの発信地だったと思います。今後はどのように変わっていくのでしょうか。

山森:若者の自己表現として、以前はファッションに重きが置かれていましたが、現在は、音楽、ゲームなど自己表現の方法が多様化しています。大人から見るとニッチに見えるものでも、彼らの中では好きなものの世界は広く広がっています。SHIBUYA109は、彼らが好きなエンタメを一緒につくり上げていくこともできますし、発信して拡げていくこともお手伝いできます。

若い世代の画像加工の文化に着目し、109ロゴメーカーを制作

―ロゴを公募にし、109ロゴメーカーを作った理由を教えてください。

山森:いかに世の中の若い世代を巻き込むかということに焦点を当てていたので、一般の人たちから募集するというのが前提としてありました。イチからデザインを考案してもらうものと、109ロゴメーカーを使ってロゴを制作するというふたつの方法で応募できるようにしました。

室田:ニュースでロゴが変わることを知るだけでは、ロゴ刷新に込めた思いやメッセージまでは届けられません。どうすればロゴ刷新を通して若い世代との距離を縮められるかを考えました。
一般的な公募の場合、応募してくれるのは、デザインのスキルがあるクリエイターや美大生に偏ってしまいます。SHIBUYA109が思いやメッセージを届けたいのは10代や20代前半の若い世代です。彼女たちに届けるためには、“傍観者”ではなく、“参加者”として公募に関わってもらうことが大切だと考え、特別なデザインスキルがなくても若い世代に公募に参加してもらう仕組みとして、109ロゴメーカーを提案しました。


―いろいろなパターンのロゴパーツを組み合わせることでロゴが完成するので、デザインスキルがなくても簡単に応募できますね。

室田:公募への参加ハードルを下げるために、私たちが注目したのが、若い世代の画像加工の文化です。彼女たちはSNSなどにアップする画像を日常的に加工しています。イチから新しくデザインはできなくても、素材を組み合わせたり、アレンジしたりすることは得意なのではないかと考えました。
そこで、SHIBUYA109のロゴを作ることができるパーツをこちらで用意して、組み合わせたりアレンジしたりすることで、SHIBUYA109のロゴをつくってもらい公募に参加してもらおうという話になりました。「109」にちなんで約109億通りの組み合わせができるようになっています。

―ロゴパーツのデザインで工夫したことは何ですか?

佐藤:ロゴパーツの中には、かっこいいものだけではなく、つっこみどころがあったり、既視感のあるものなど、おもしろ要素を多めに盛り込みました。下手な字のパーツには「中二男子」、渋谷のモヤイ像をモチーフにしたパーツには「渋谷駅西口」など、パーツのネーミングにも遊びの要素を入れて工夫しました。

室田:中高生たちの若者文化や流行の研究もしました。人差し指と親指をクロスさせた「指ハート」が流行っていたので、指文字で109を表現しているロゴを作ったり、流行の80年代風の柄を入れたり、インスタ映えするスイーツのイラスト素材も用意したりしました。

想像を超える新たなロゴを期待

―ロゴの応募総数はどれくらいですか?

山森:最終の応募数は集計中ですが、ロゴをイチからデザインする通常の応募、109ロゴメーカーからの応募ともに、私たちが想定しておりました応募数を超える応募をいただきました。
―どういったロゴを期待していますか?

山森:これまでのSHIBUYA109のイメージを変えるような、私たちの想像を超える新しいものが生まれるといいと思います。

―SNSではどんな反応がありましたか?

室田:10代、20代の女の子からの投稿が多く、「何回もつくってみたくなる」という反応もありました。SHIBUYA109のショップ店員さんもロゴを作って発信してくれたので、そこから興味を持ち、ロゴを作ってシェアしてくれた人もいたようです。

リチャードソン:10代、20代の女の子以外にも、館内のポスターやイベントなどを通して、渋谷に来ているいろいろな人たちが興味を持ってくれて、109ロゴメーカーを使ってくれました。男性の方や、外国の方も参加してくれました。

―今後、どのような企画を予定しているのですか?

山森:現在進行中なのですが、6月にもひとつ新しい企画をスタート予定です。今後も、若者の夢を叶える新たな企画を実施し、ひとつずつ丁寧に夢を叶えていくお手伝いをしたいと考えています。

(写真左から)
株式会社東急エージェンシー プランナー 室田彩貴さん、デザイナー 佐藤茉央里さん、株式会社SHIBUYA109エンタテイメント リチャードソン千尋さん、山森晶奈さん

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