LINEが公開した「JK用語でJKの1日を再現」動画 制作の狙いとは

Case: ワンチャンワンドキ!JK用語でJKの1日を再現してみた
Interview & Text : 市來 孝人

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、LINEが公開した動画コンテンツ「ワンチャンワンドキ!JK用語でJKの1日を再現してみた」を取り上げます。動画の中には制作前にはJKへのヒアリングを実施し「ワンチャン」「スタレン」などといった「38のJK流行語」と「5つのJKトレンド」が詰め込まれ、キャストもJK世代。再生回数は約1,040,000回にのぼっています。

この動画制作の狙いについて、LINE株式会社 コンテンツマーケティングチームの谷口マサトさん、香取万葉さんにお話を伺いました。(画像は「【JK用語】ワンドキ動画のオフショット」より)

ネットでバズるものは、基本的にオムニバス

—まずは、この動画を制作することとなったきっかけについて伺えますか?

谷口:LINEは電話のように「普通のサービス」になっているので、改めて「そういう使い方があるんだ」と知っていただき、新たな利用シーンを訴求していこうという狙いです。

香取:今年の夏から「LINE みんなのものがたり」という動画シリーズをスタートしていて、今回の動画は第2弾となります。今回の「ワンチャンワンドキ!JK用語でJKの1日を再現してみた」では、世代別の利用シーンに加え、LINEではユーザー自身が新たな文化や使い方を生み出してくれているという事実を発信したい狙いがありました。

—様々な「JK言葉」が出て来ます。どういう形でヒアリングをしていったのでしょうか?

谷口:事前にネットで50個程度下調べをした上で、実際にJKにヒアリングをしました。すると、その50個のうちすでに半分は「使っていない」という反応でした。リアルの場で聞くことでさらに新しい言葉や使い方を聞くことができて、我々も本当に勉強になりました。
限られた中で使い方を発展させていくのはやはりJKの長けている点ですよね。言葉についても、表現をどんどんずらしていって楽しんでいる。使われる言葉も、常にずらしながら変化しているんですね。

香取:一言でJK言葉と言っても、学校やグループによって使い方が違ったりもするので、撮影で起用した現役JKや(撮影時も現場に来てもらった)ヒアリングをしたJKの中でも使い方やイントネーションが様々だった点が興味深かったですね。本当に、毎日変化しているんですよね。

—今回制作で大変だった点はどのようなものですか。

谷口:脚本を作るときには混乱しました。「ありよりのなし」ですとか…また、見ていて意味がわからない、という状態にならぬように、字幕をどうつけるかは最後まで迷った点です。最初はJK言葉をCGで表現するような形も試してみましたが、視点がばらけてしまうので、色々試行錯誤した結果二重字幕のような形にしました。

—ストーリーをどのように構成していったかについても教えてください。

谷口:ネットでバズるものというのは、基本的にオムニバス形式なんですね。一つのテーマに沿った5秒で完結する映像を連続で見せる。ユーザーが好きなところを切り取ってシェアしやすい、一本釣りではなく網をかけていくようなイメージです。
時間については今回3分あるのですが、もともと動画は1分程度しか見られないものですから、最初になぞかけをして最後に謎が解けるという仕掛けにもしています。
また、アホらしいほどポップに作ることを意識しました。マジメな感動系が炎上しやすくなってしまうのは「マジレスで突っ込みやすい」からです。笑いにすると「笑いに真剣に突っ込むのは野暮」なので、炎上は少なくなります。

毎月こういったコンテンツを出していきたい クリエイター募集中

—公開前に想定していた視聴者層はどういった層ですか?

香取:まずは被写体と同世代の層ですね。共感だけではなく「私の地域ではこれは言わない」などと、議論のきっかけになれば良いなと思っていました。一方で、世代が上の方にも「LINEがそういう風に使われているんだ」という点を知ってもらえたらと。プロフィール画像を真っ黒にして「病み」の表現をする、なんて思いつかないですよね。

—公開後の反応はいかがでしたでしょうか?

谷口:データではJK世代の年齢層の女性が最も見ていますね。

香取:若い子がよくチェックしているLINEのタイムラインに掲載したことも大きいです。

谷口:予想外だったのはネットユーザーが盛り上がってくれているところです。JK用語とネット用語は同じ画面で打つものなので近いんですよね。「これはネット用語じゃないか。俺たちの言葉が取られている」「JKが使ってもいいじゃないか」と議論が巻き起こっていました。

—フジテレビ「とくダネ!」をはじめ、テレビでもよく話題になりました。

谷口:思った以上にLINEというサービスと、今回のようなコンテンツマーケティングは相性良いなと思いました。飲料や食品などの商品を題材にするといかにも広告になってしまいますが、LINEというサービスは日常にあるものなのでコンテンツと広告が調和するんですね。するとテレビ(情報番組)でも一般のニュースやトレンド情報として使いやすいのではないかと思います。
また、動画は記事と違って映像コンテンツなのでテレビにも流用しやすいですからね。

—今後はどのような展開を予定しているのでしょうか?

香取:「LINE みんなのものがたり」にて継続的にコンテンツを出していきます。今回はJKでしたが、ターゲット・被写体をどんどん変えていったり、例えばクリスマスなどといったモーメントに合わせて、コンテンツを出していったりということを想定しています。

谷口:様々なLINEの使い方を取材していまして、例えば芸妓さんならではのLINEの使い方をヒアリングしているんですよ。「いろんな人がいろんな使い方をしている」という点を見せていこうかなと思っています。
また、弊社とパートナーとして、一緒にこういったコンテンツを作ってくれるようなクリエイターを探しているところです。

ネットでも「ここまでできるんだ」というコンテンツを作りたい

—様々なコンテンツを手がけられてきた谷口さんですが、動画コンテンツと他のフォーマットの違いについてはどのように感じられていますか?

谷口:コンテンツと広告を両立させるという意味では、全く変わらないですね。動画はCMの延長線上で絵コンテから作る方法と、ドラマの延長線上で、脚本で作る方法と二つのアプローチがあると思っています。今回は迷いましたがドラマの延長上=脚本から作っていきました。Web動画はCMとドラマの中間。ドラマとして作るとCMとしての視点から見たら演出が凝っていないように見えますし、CMとして作るとドラマとしての視点から見たらストーリーがないように見えますし、作り方もまだまだ試行錯誤の段階だと思います。

—動画コンテンツの今後については、どのように考えられていますか?

谷口:今の動画はまだまだ単発のものが多いですが、今後間違いなくオリジナルドラマが始まりますね。単発だとリーチが弱く世の中の空気を変えるまでは至っていません。これが連続配信してリーチさせるとなったらまた変わってきて、行動変容まで行くと思います。テレビドラマ自体も広告から生まれてきたものも多いので、歴史は繰り返すのではないでしょうか。ただスマホ世代だと、数ヶ月続くと長く感じる人もいるので、一週間で完結するようなものを用意しても良いと思います。

—2018年、チャレンジしてみたいコンテンツがありましたら教えてください。

谷口:時代劇をやりたいですね。最近NHKの「どーも、マンガです。」という漫画サイトで「私のために合戦しないで!」という漫画を作ったのですが、これは大河ドラマのパロディなんですね。大河ドラマはテレビが映画にバカにされていた時代に「テレビでもここまでできるんだ」ということを証明しました。ネットでも今後「ここまでできるんだ」というコンテンツができれば良いなと思っています。

LINE株式会社 谷口マサトさん

LINE株式会社 香取万葉さん

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