「さいたま市の香り」が市民投票で決定 参加型PJでシビックプライドを醸成

さいたま市が進める都市ブランディングの新たな試みとして、嗅覚を通じた「香りによるまちづくり」が始まりました。都市イメージの向上や地域の魅力発信を目的に、プロモツール株式会社が調香を担当し、3種類のオリジナルアロマを制作。市民投票によって“さいたま市の香り”を選ぶという、参加型のプロジェクトが進行中です。

嗅覚を使った都市の記憶づくり

この取り組みの発端は、さいたま市が「2025年大阪・関西万博」への出展時に導入した香りブランディングでした。プロモツール社が手がけたオリジナルアロマは、大宮盆栽や岩槻人形など伝統文化の要素を取り入れながら、都市と自然の調和を感じさせるものだったそうです。会場では空間演出と香りグッズを組み合わせ、来場者が“香りを持ち帰る体験”を実現しました。

視覚や聴覚では伝えきれない地域の魅力をフレグランスで表現する試みは好評を博し、その成功が今回の「さいたま市の香り」制定プロジェクトへと発展しました。

市民が選ぶ「さいたま市の香り」

このプロジェクトに際して、市が掲げたテーマは「都市と自然の調和」と「上質な生活都市」。これをもとに、A・B・Cの3案が誕生しました。

A案はシトラスや紅茶を基調とした明るく開放的な香り、B案は見沼田んぼの清々しさをイメージしたグリーンと木の香り、C案はペパーミントとラベンダーが香るスタイリッシュな調香。いずれも天然香料100%で仕上げられています。

投票ブースは市内10区の区役所や関連イベントに設置され、来場者は実際に香りを試しながらお気に入りに投票できます。選ばれた香りは2026年1月上旬に発表され、今後は市のPR活動や観光イベントで活用される予定です。

香りを通じて育む地域エンゲージメント

本施策の特徴は、香りを単なる演出ではなく「地域との関係性を深めるメディア」として活用している点にあります。プロモツール社は、専属調香師による高品質な香りづくりを基盤に、空間芳香からアロマカードまでを一貫して設計。万博ブースで培った体験設計を、市民投票として発展させました。

香りは感情や記憶に直接働きかけることから、地域の思い出と結びつく「プルースト効果」による“記憶のブランド化”が期待されます。ふと香りを感じた瞬間にさいたま市を思い出す——そんな体験を生み出す試みです。

五感に訴える都市ブランディングの可能性

視覚中心だった従来のシティープロモーションに対し、香りによるブランディングは“体験を通じた記憶形成”という新しい方向性を示しています。市民が香り選びに参加する構成は、地域への愛着を高める仕掛けとして有効で、選ばれた香りは今後の観光や文化施策にも展開が期待されます。

香りが都市の記憶を紡ぎ、人と街をつなぐさいたま市の挑戦は、感性に響く都市ブランディングの新たなモデルケースといえるでしょう。

その他のブランディング事例についてはこちら
https://predge.jp/search/post?genre=27
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る