インフルエンサーとのコラボも視野に、日本郵政グループ #NEXTJP プロジェクトのPR戦略|後編
日本郵政株式会社は、日本郵政グループが次の時代をリードするブランドとなることを目指し、日本郵政グループの進化・成長、新価値創出を象徴する新たなアクションマークを策定。その新マークを起点とした「#NEXTJP(ネクストジェイピー)」を始動しました。(PR EDGEの記事はこちら)
#NEXTJP Official Site:https://www.jpcast.japanpost.jp/nextjp.html
#NEXTJP Official Instagram:https://www.instagram.com/nextjp_action/
日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のブランドカラーが重なりながら眩しく光り、疾走感を持って未来を照らすことをイメージし、#NEXTJPの世界観を表現したブランドムービーも公開。
さらに、これまでの日本郵政グループのイメージとは一線を画す、スタイリッシュなアパレルやステッカー、スケートボードなどにも新マークが使用されていることなども話題となりました。そこで、Instagramでの発信やインフルエンサーによる各種グッズの活用を模索するなど、意外性のある施策を始動する背景にはどのような事情があるのか、今後の展望も含めて直撃インタビューを実施。
日本郵政の広報宣伝部マネジャーの高松さん、HAKUHODO DESIGNからは、ブランド戦略を描くコンサルタントとして参加された山口さん、アートディレクターとクリエイティブディレクターとして参加された柿﨑さんにお話をお伺いしました。
企画の始動から試行錯誤の変遷を伺った前編に続いて、この後編では実際に感じられた手応えや今後の展望をお届けします。
※前後編の後編。プロジェクトに至る背景や課題をうかがった前編はこちらから。
Tシャツ、パーカー、キャップに靴下、と。アパレルのアイテムたちは一番目立つというか、発信性やメッセージ性が込められていて、アクションマーク起点での派生物として美しくまとまっているのをすごく感じます。こういったアイテムの今後の展開は?
高松 今、何名かのインフルエンサーの方にプレゼントし、お客様の反応や社内の反応などを見ながら今後の展開について検討しているところです。今のところかなり好意的な意見や要望がきているので、それを踏まえて少しずつでも広げていきたいなと思っています。
インフルエンサーへのプレゼント用のパッケージにはロットナンバーも! <写真:筆者撮影>
まずはインフルエンサー、影響力がある方にこれらのアイテムを使ってもらうことで発信をしていく。それによって、何かが動き出していることをたくさんの人に認知してもらおうということなのですね。ちなみに、このアクションマークの発表は、社内と社外は同じタイミングだったのでしょうか?
高松 そうですね。社内、社外ともに同じタイミングでした。
ということは発表をもとに、プロジェクトの存在を知った方々からの反応が返ってきているかと思いますが、いかがでしたか?
高松 140年近くの歴史があるマークということもあり、赤い〒マークに愛着や誇りを持っている社員は多くいます。そのマークを「いじる」今回の施策に対し、「なんでこんなことやっているんだ」といった批判的な意見も社内から一定程度来るだろうなと思っていたのですが、蓋を開けてみると、ほとんどなく、圧倒的に好意的な反応ばかりでした。
例えば、「ステッカーはどこで配っているんですか」とか「このデザイン、めちゃくちゃかっこいいですね」とか「グッズの販売の予定はあるんでしょうか」といったものです。あとは、特に若い社員が「デザインかっこいい」「応援しています」って言ってくれるなど、とても好評でした。
HAKUHODO DESIGNさんはいかがですか。
山口 ブランディング業務を数多く取り組んでいる博報堂社内でも、良い意味で、意外性を感じたという声が多かったです。歴史があるからこそ動かせない、変えることに対してさまざまな制約があるなかで「ちょっとした工夫だけでこんなに見え方が変わることもあるんだ」と社内で言われましたし、社外の知り合いとの会話の中でも出てきた感想です。
そして、まだ小さい取り組みだけど尖っていて、これからの変化の兆しや可能性を感じるね、といったことも言われました。まだまだ小さい点として世の中に投げかけただけですが、この先の展開にすごく可能性や期待を感じてもらえているという手応えは感じています。
柿﨑 そうですね。「アパレルなどのグッズを普通に欲しい」という意見が一番多いですね(笑)
山口 そうですね(笑)
左から柿﨑さん、高松さん、山口さん <写真:筆者撮影>
持っていると自慢できそうな人気ぶりですね。1月にはプロバスケットボールの試合会場での配布も実施されたとのことですが、その反応はいかがでしたか?
高松 1月にプロバスケットボールの試合会場で観客の皆さんに配りました。2万人ぐらいの来場者があるなかで、かなりの枚数を配布することができました。手に取った方からは「かわいい」「かっこいい」といった声を多くいただき、それを聞いて「私も欲しい」と周りからまた集まってくるような非常に良い反応でした。
今後もそういった配布は続けていかれる予定でしょうか?
高松 現在検討している今後の新しい展開も踏まえながら、判断していくことになるかと思います。
ちなみに、今回SNSでの発信にInstagramを選定したのは、どういった経緯があったのでしょうか?
山口 ビジュアルをしっかりと出していきたいということが主な理由です。日本郵政グループはこのように変わっていきたいという意思や方向性を表明する目的はありつつも、それを言葉で語るよりは、向かおうとする姿勢をビジュアル、目で見える形で示して、そこに共感してもらいたいという考えがあったんですね。それを踏まえたときにInstagramはビジュアルで訴求するSNSですから、すごく相性が良いと思って選定しました。
たしかに、流れていくというよりはストック型という印象があります。そのことで、一連の流れがすごく見えると思いました。そういった特性を考慮して、情報の出し方なども工夫をされていたのでしょうか?
山口 その通りです。ビジュアルの作り方なども意識していました。
柿﨑 すごく意識しています。今回はデザインでコミュニケーションを図っているので、“正しい情報を伝える”よりも“素敵な世界観を共有する”ことを大事にしたかったんです。
ターゲット層へのアプローチも含めてInstagramを選びましたが、今回の施策ではMOVIE、STICKER、SNS CAMPAIGN、APPARELと4つの施策が続いていくので、その施策の順番や、フィード投稿の残し方もかなり設計して作っています。
プロフィール画面(メイングリッド)をいちばん最初に見にきたときに、素敵な世界観がまず伝わることを心がけています。また、キャンペーン情報のお知らせ投稿以外はテキストがない投稿がほとんどです。ハッシュタグだけつけていますが、テキストによる“説明”ではなく“世界観を共有”するところに特化して運用しています。
細部まで見せ方にこだわり抜いたInstagram
当初の目的であった動画やリーチしたいターゲット層に届きやすいというところで、たしかにInstagramは相性がいいということ、そしてすごくていねいに作り込まれているなと感じました。
柿﨑 運用上は営業チームに頑張ってもらっています。デザイン面については、さっきのスピード感とクオリティーの話で、スタッフ間では毎日のように丁々発止のやりとりが交わされています。リファレンス(参考)にしているのが、いろいろなファッションブランドのInstagramで、その手触り感みたいなことをみんなで意識しながらやっています。
目的やターゲット層を見据えて、常に何が最善で最大効果となるかを関わる皆さんが考え尽くした結果だったのですね。先ほども少し伺いましたが、今後の展望などもそれぞれ教えてください。
高松 グループ全社員で40万人近くいるので、この施策がまだ知られていない部分もあり、社内での認知も広げていく必要があると感じています。
赤い〒マークはもともとは郵政3事業全体のものですが、会社が分かれてしまって以降は、郵便局や手紙・はがきという郵便事業のイメージが強化されてしまっています。ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険にも、もう一度グループ全体のマークとして認識してもらうことも今回の施策の出発点にはありましたので、そこにつながる新たな施策が今後展開できないか、は個人的にすごく考えていきたい部分です。
山口 赤い〒マークの持つあたたかさ、ぬくもりや優しさは、そもそも絶対的な価値があるもので、それを塗り替える必要はないと思うんです。ですから、新たなアクションマークの認知拡大とともに、「共感」をすごく考えたいなと思っています。
このアクションマークを見た人、触れた人、関わった人たちが、日本郵政グループの「変わっていこう、スタイルを変えていこう、社会を変えていこう」という挑戦の意識に対して、いいよねと知ってもらうだけではなく、自分たちの気持ちと近いなという「共感」の気持ちを感じてもらえることを大事にしたいんです。認知のもう一歩先、「共感」をこれからしっかり作っていくっていうことが、今後の施策の中で取り組めたらいいなと思っています。
柿﨑 こちらの「挑戦を届ける」というシートは、日本郵政の皆さんと議論するために作った内部議論用の資料です。左側が今までの日本郵政グループを表しています。日本郵便は手紙や荷物を届ける、ゆうちょ銀行は安心安全を届けて、かんぽ生命は未来への備えを届けることが役割です。今回の新しいアクションマークに関しては「挑戦を届ける」ことを意識しています。今回の施策に関わってみて、「届ける」ということは日本郵政グループのコア価値なんだと再認識しました。
そして「挑戦」も、とても大事なコンセプトです。若い世代から共感を得ているブランドは、どこも挑戦をしているんですよね。例えば、エナジードリンクのブランドは挑戦が、もうむき出しになっているじゃないですか。また、少年マンガが若い子たちから支持され続けているのは、基本的に挑戦を描いているからだと思っています。
ブランドに「挑戦」をインストールする。そもそもあるはずの挑戦の意識をより引き出していく。きちんと顕在化させることで、日本郵政グループの社内の方々にも挑戦のマインドを思い出してもらい強化していく、もっと引き出して世の中に伝えていく、ということが僕たちのミッションではないかと思っています。
ですから、アパレルを作ったことなどは、ブランドのいわば入口を提示したに過ぎません。これから先も、「挑戦」を一緒に作っていけたら、今後もっともっと良くなっていくのではないかと思っています。
(後編・了)
4月16日(水)に公開された前編では、企画の始動から試行錯誤の変遷をお伺いしています。
前編はこちら
<インタビュイープロフィール>
高松 寛(たかまつ・ひろし):日本郵政株式会社の広報宣伝部マネジャー。商標、コーポレートアイデンティティ(CI)関連の管理やブランディングも担当。
山口 綱士(やまぐち・つなし):HAKUHODO DESIGN 代表取締役共同CEO 戦略CD/コンサルタント。経営戦略・事業開発支援からブランディングまで幅広い領域でのコンサルティングを提供。ACC賞グランプリ、Spikes Asiaゴールドなど受賞。
柿﨑 裕生(かきざき・ゆうせい):HAKUHODO DESIGN 執行役員 チーフアートディレクター。デザインでブランドのビジョンを描き、実装する仕事を得意としている。東京ADC賞、ACC 賞グランプリ、D&AD、カンヌ国際広告祭、グッドデザイン賞など受賞多数。
・※関連リリース:日本郵政グループの進化・成長、新価値創出のため「〒マーク」は次のステージへ 新たなアクションマーク誕生 「#NEXTJP」始動
(取材・文/見野歩)
その他のインタビュー記事についてはこちら
https://predge.jp/search/post?othres=31
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