“世界初”の性格分析 資生堂uno「あせり層」に向けた緻密なコンテンツ設計
Case: 資生堂uno「uno SOCIAL BARBER」
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は、資生堂の男性用化粧品ブランド『uno(ウーノ)』のwebコンテンツ「uno SOCIAL BARBER」を取り上げます。FacebookやTwitter に接続し、過去の投稿から29パターンの性格タイプに分類する新性格分析コンテンツです。ディープラーニングを用いた独自の性格分析アルゴリズムで、興味関心を抽出、心理傾向を推定します。分析結果から性格タイプを割り出し、一層大人に近付くためのアドバイス、大人のスタイリングを提案します。
ブランド全面リニューアルに伴い、制作された今回のwebコンテンツ。ブランドリニューアルに踏み切った経緯から、「uno SOCIAL BARBER」制作秘話まで、unoブランドマネージャーの山ノ井千草さんにお話を伺いました。
エゴグラム分析にSNSの投稿を結び付ける“世界初”の試み
―「uno SOCIAL BARBER」のアイデアはどのようにして生まれたのですか。
unoでは10代~20代の若者男性をターゲットとしています。彼らにとって親和性の高いメディアであるFacebookやTwitterなどのSNSを通じてターゲットが自分事化してとらえてくれるものを作ろうと考えたんです。
unoは今年の3月のブランドリニューアルに伴い、10代20代の若者を大人へと引き上げ、背中を押し、「大人への進化」をサポートするブランドへと生まれ変わりました。SNSでの発言や態度は、意外と現実の自分とは異なるという事実や、自分の知らない一面を浮き彫りにすることで、“大人な自分”になるきっかけを提供したいという思いのもと、制作が始まりました。
―SNSの発言に紐づけられた性格分析によって、SNSの世界ではどう見られているのか、自分でも知らない自分を知ることが「大人への進化」につながっているのですね。
そうなんです。自分の中にある大人な一面に気付かせてあげることが、unoのメッセージである「大人への進化」につながると考えました。自分を知ることが大人への第一歩だというメッセージを込めて、今回の性格分析コンテンツを制作しました。
―「世界初」と謳っていますが、どういった点が世界初なのでしょうか。
他の性格分析コンテンツで、エゴグラム分析やディープラーニングを使っているものはあると思いますが、今回の「uno SOCIAL BARBER」では、そこにSNSでの投稿を結び付けているという点が新しい試みとなります。心理傾向とSNSの投稿を関連付けるため、複数のモニターを対象に『新版TEGⅡ』(東京大学医学部心療内科TEG研究会編)によるエゴグラムアンケート調査を実施し、同時にSNS投稿の取得も行いました。このモニターから得られたエゴグラムのアンケート調査結果とSNSの投稿をディープラーニングを用いて分析しています。
一瞬のバズよりも、ブランドメッセージを伝えるコンテンツを目指して
―今回のコンテンツ制作にあたり、苦労された点はどのようなところですか。
性格分析を行うコンテンツはこれまでにもたくさんありました。私たちは、これまでの性格分析コンテンツのように一過性の話題を生むものではなく、さらに自分事化できるもの、ブランドの価値やメッセージがしっかりと届くコンテンツを目指しました。ただ単におもしろいもの、一瞬のバズを起こすものではなく、そのコンテンツがブランドの価値に結び付くものでなければなりません。unoが悩める若者の背中を後押しし、彼らがなりたい大人の男に引き上げていくブランドであること、そして、彼らの「大人への進化」をサポートすることで、一歩大人へとレベルアップする自信を届けたいと考えていました。
―ブランドのメッセージを伝えるため、工夫された点を教えてください。
まず気を付けたのは、他で見られるようなライトな性格分析コンテンツにしないという点です。最新の研究をもとに、独自に開発したシステムによって、説得力のある分析をしているということがブランド価値につながると考えました。
自分事化して見せるため、分析途中の動画にも細部にまでこだわりました。SNSでの自分の発言が髪の先から表れ、子どもっぽい側面は切り取られます。最終的には、ポジティブで大人な側面が残り、スタイリングされ、大人への一歩を踏み出すのにふさわしい理想の髪型に仕上がるというストーリーになっています。実際に分析をしていただくと、その人が何かしら記憶している過去のSNSでの発言などが動画の中に登場するんです。
―一人ひとりにカスタマイズされた動画であるにもかかわらず、とてもなめらかな動きで非常にクオリティの高い仕上がりでした。
unoはスタイリングを提案するブランドですので、動画の中で髪の毛やスタイリングに落としていくということを意識しました。最終的に自分の髪型がはまるときの動画も、平面的な映像ではなく、立体的に360度ヘアスタイルが見られるようになっています。ここは非常にクオリティにこだわって制作した点です。電通様と制作会社のPARTY様にご協力いただき、実現しました。
成長意欲の高い「あせり層」が新たなターゲット
―そもそも、今回unoのブランドリニューアルに踏み切ったのにはどういった背景があったのでしょうか。
今回のブランドリニューアルには、近年の男性化粧品市場の活発化が背景にあります。unoは2009年の「フォグバー」発売後は新しい製品を出すこともなく、CMなどのブランドとしてのコミュニケーションをほとんど行ってきませんでした。市場の活発化の中、unoに大きなチャンスが来ていると考え、新たな時代に合わせたコミュニケーションを展開していくことを決めました。
―ブランドリニューアルにあたり、どのような層をターゲットとして定めたのですか。
リニューアル前までは、10代から40代の男性という広い層をターゲットとしていたのですが、今回のリニューアルで10代から20代の男性にターゲットを絞り込みました。現在の10代20代は「ゆとり世代」「さとり世代」といわれている層です。調査を行うと、おもしろいことが分かりました。
彼らの中にも、「ゆとり世代だとか、悟り世代だとかいわれている場合ではない」「このままではいけない」「引っ張ってくれる人がいれば、僕だって頑張れるのに」といったような考えを持ち、非常に成長意欲の高い層が一定数いることが分かりました。
例えば、就職活動ではたくさんのセミナーやインターンシップ、OB・OG訪問に参加したり、大きな不安からとりあえず資格を取るために励むような方たちのことです。彼らは、大人になりたいけれど、何をしたらいいか分からなくて模索しているんです。今回のリニューアルでそういった成長意欲のあるあせり層に届くコミュニケーションをすることで、一歩大人へとレベルアップする自信を届けることを目指しました。
男性のSNSへのシェア率を高めることに成功
―リリース後のターゲットの反応はいかがでしたか。
通常、こういった性格分析コンテンツをシェアするのは女性が多く、男性は分析をし、シェアせずに終わるという方がほとんどなのですが、今回の企画では、男性のシェア率が非常に高いという結果が出ています。FacebookとTwitter両方で診断されている方も多いです。
このコンテンツがオープンした4月26日から6月16日までのレポートによると、UU数は約26万人、PV数は1200万PVを超え、トータルで119,903人の方に体験いただいています。シェア率は18%と高水準です。
―とても多くの方に体験いただいていますが、今回のコンテンツが購入に結び付いている実感はありますか。
性格分析をしていただき、最終的にはブランドサイトに誘導する仕組みになっているので、ブランドを知っていただくきっかけになったのではないかと思います。unoでは、他のブランドよりもブランドサイトを認知されて購入に結び付いた方が多いというデータが出ているので、今回の施策が効いているのではないかと考えています。
―今後のブランドの展望、新たに仕掛けたいプロモーションなどについて教えてください。
現在のunoは、ヘアスタイリングのブランドというイメージが非常に強いと思います。しかし、今後は、スタイリングだけではなく、男性化粧品市場をけん引していくブランドにランクアップさせることを目指しています。
コミュニケーションの媒体としては、テレビCMだけではなく、デジタル領域でのキャンペーンを今後も行っていきたいと考えています。今注目しているのは、AIです。人工知能を使ったキャンペーンは今後検討していきたいですね。
男性の化粧品市場は、女性の化粧品市場と異なり、製品の展開を増やしていくことには限界があります。そういったときに重要なのは、やはりブランド価値です。今回の「uno SOCIAL BARBER」でブランドメッセージを伝えることをゴールとしたように、今後も、第二ステップ、第三ステップとブランド価値の向上を目指し、ブランドを育てていきたいですね。
株式会社エフティ資生堂 パーソナルケアマーケティング部
unoブランドマネージャー 山ノ井千草さん
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