無印良品の商品で“TOKYO”を表現!台北、NYでのインスタレーションが実現するまで

Case: 良品計画×&TOKYO「MUJI 10,000 shapes of TOKYO」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、東京観光財団による東京ブランド推進キャンペーン『&TOKYO』と株式会社良品計画によるコラボレーションプロジェクト『MUJI 10,000 shapes of TOKYO』を取り上げます。

世界一の観光都市を標榜する「TOKYO」のPRを目的に、東京都と無印良品がタッグを組んで行われた本企画は、東京タワーをはじめとする東京の建物や街並みを、400品目10,000点にもおよぶ無印良品の商品で表現し、海外都市でインスタレーションを行うというもの。3月5日~13日に台北、同19日~4月24日にニューヨークで開催され、それぞれに大きな反響を集めました。

本プロジェクトを担当した、dot by dot inc. Creative Director / COO 谷口恭介さん、同Planner 藤原愼哉さんに、企画が実現するまでの話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美
世界共通のブランディングを実現する無印良品で、“スマート東京”をPR

―まずは本企画のきっかけをお聞かせください。

藤原:東京都は、2020年のオリンピック開催を視野に、2015年10月から『&TOKYO』のキャッチコピーのもと、世界に向けて東京ブランドを発信する活動をスタートしています。東京のライフスタイルや、東京のカルチャーによって育まれたブランドを通し、“スマートな東京”をPRしていくとのことで、そのイメージを国内外において高いレベルで実現している良品計画さんに、白羽の矢が立ったのが発端です。

当社への打診は、去年の7月ごろ。元々お付き合いのあった良品計画さんから声をかけていただきました。

―良品計画社とのコラボレーションにより東京観光財団が打ち出したいイメージとは、具体的にどのようなものでしょうか。もう少し詳しく教えていただけますか。

藤原:まず、無印良品というブランドを選択する意識がとても日本的なんですよね。たとえば収納用品なら、まず大きな箱があり、その中に中箱が入って、さらに小箱が入る、といった具合にとても機能的にデザインされています。このことが海外の人には驚きらしく、世界中にたくさんの無印良品ファンがいる所以でもあります。さらに言うと、海外、特に欧米はもともと家のサイズが大きいので収納という意識自体があまりなく、ガレージにどさっとまとめて置くような文化です。つまりは、きれいに小分けする必要が無いんですね。

一方、日本は限られたスペースに、いかに多くのものを収納するのか、また外から見えたときにどれだけ美しくまとまっているのか、という視点で整理整頓をする習慣が根付いています。その過程として、いらないものは処分し、いるものはきちんと片付けるといった作業があるわけですが、そうした必要最低限なものだけで生活していく日本のスタイルが、海外では禅的なものとして伝わっているみたいで。

実際に無印良品も、“コンパクトライフ”というものを提唱していますし、東京観光財団さんは、そんな無印良品のイメージを東京のPRにトレースできれば、と考えたようです。

―今回のインスタレーションが決定するまでの流れをお聞かせください。

藤原:コラボレーションに至った経緯もあり、当初は、“コンパクトな収納を実現するプロジェクト”に焦点を絞って企画を立てていたのですが、良品計画さんから「プロダクトプロモーションは意識していない」という声が挙がり、であれば無印良品の商品を使って東京を表現するという大枠で検討しようということになりました。

また、都の窓口である東京観光財団さんから、「北米とアジア圏の店舗でイベントや展示を行うアウトプットにしてほしい」とオーダーがありましたので、お店の構造を活用した企画を考えるなか、ニューヨーク・「MUJI TIMES SQUARE」店のガラス壁を活用する案が出てきました。外に向けて商品をディスプレイし、離れて見ると東京の街並みに見えるという、いわゆるモザイクアートのような企画です。

ただ、日本でいう消防法のような問題やビルオーナーの許可が下りないなどの理由から実現が難しいことが分かりました。そうこうしているうちに、無印良品の北米における旗艦店となる「MUJI Fifth Avenue」店が10月にオープンすることになり、PR的にもインパクトが大きいからと、こちらの店舗で実施する方向になっていったので、11月に現地調査へ出かけ、改めて企画を検討しました。その結果、壁面ではなく立体で展開することが決まり、こうして素案が出来上がっていきました。

―企画を提案した段階で、全容も固まりつつあったのですか。

藤原:その時点では、まだ漠然としていましたね。というのも、「東京のイメージってなんだろう」という疑問が、誰もの頭にもたげていたんですよ。海外の人が見たときに、「東京だね」と思ってもらえる象徴めいたものがまだ確立できていなくて。なので案として、浮世絵風のもの、タイポで『TOKYO』と書いたもの、東京タワーのある夜景など、色々提案しながらどのように見せていくのかをかなり考えました。

最終的に決め手となったのは、東京観光財団さんがお持ちの海外ツーリストのデータでした。「東京のなかで一番印象に残ったもの」「東京と聞いてイメージするもの」「東京で行きたい場所」など、いろいろな項目があるのですが、いずれも1位が東京タワーだったんです。また、ネットで『東京』『TOKYO』と検索して上位に出てくるのも東京タワーが最も多く、これらから東京タワーをメインにすることで、三者のコンセンサスが取れ、ようやく方向性が固まりました。

iPadで撮影した商品画像を切り取ってモックアップを作成

―実際の制作過程についてお聞かせください。ジオラマはどのように完成していったのでしょうか。

谷口:現地調査のフェーズから株式会社TASKOさんに全面的なご協力を仰ぎました。ジオラマには東京のさまざまなエリアが詰まっているのですが、配置にあたり東京の地図の上に線を引き、どのエリアをピックするのかをTASKOのKIMURAさん、北澤岳雄さんが中心になって設計し、そのうえでエリアごとにフォーカスするものを決めていきました。また、ジオラマに使う商品の選定は、実際に全商品を見るところから始めました。

無印良品に並ぶ一つひとつの商品をKIMURAさん、北澤さんがiPadで撮影したりスケッチしたりしたのですが、次にその画像を切り抜いて並べ、「PPボックスを積み上げたらビルに見えるよね」「東京タワーなら赤ペンのリフィルが骨組みのように見えるんじゃないか」といったように街らしく見えるものをデザインしていってもらいました。それを基にどういうものができるのか一旦モックアップをつくり、ある程度の目星がついたら次の東京らしい建造物を選んで、それを見ながらまた商品を組み合わせていくという作業の繰り返しです。

藤原:制作は現地視察から帰国後すぐの11月からスタートしましたが、全体像が見えたのは2月の前半あたり。現地への配送は2月20日ごろでしたので、ぎりぎりまでこの繰り返しの作業を行ってもらいました。今回は限られた時間のなかでのつくり込みが、そのままクオリティとして出る作品になりましたので、TASKOさんが、ジオラマのデザインと組み立ての繰り返しに使った時間とクラフトに対するアイディアが一番の成功のポイントになりました。

―配送も大変だったのではないでしょうか。

藤原:そうですね。はじめは、現地の店舗にある商品を使って制作できれば、と考えていたのですが、やはり商品の量も種類も日本のほうが多いですし、向こうでジオラマをつくるにも時間がかかりすぎることから、日本で組み立てたものを送ることにしました。ただ、そのまま送ると輸入扱いとなり商品代と別に関税がかかってしまうので、ATAカルネを使い、展示物として送ったものをそのまま戻すという運用を行いました。

商品をそのまま使うことで、無印良品のデザインの美しさを訴求したかった

―制作するうえでのこだわりがいくつかあったとのことですが。

藤原:はい。無印良品の商品は計算された均一なデザインのものが多く、積み上げたり、重ねたり、並べたりするだけで、まるで設計された建造物や計画された都市のように見えてきます。配置だけで表現できるというのが無印良品の商品の美しさであり、そのものであることを感じ取ってもらいたかったので、原則、商品は加工ぜず、そのまま使いました。

谷口:あとは、ご覧になった方がシェアしやすいようにという意図もあるのですが、エリアごとに撮影ポイントをしっかりつくることで、どこを切り取っても画になるよう構図を意識した制作を行っています。

[ニューヨークにて]

―インスタレーション先として、台北、ニューヨークを選ばれた理由を教えてください。

藤原:まず、台湾ですが、無印良品にとってビジネスの拠点という観点でいえば、中国が日本に次ぐ商圏にあたるのですが、台湾は無印良品というブランドの培われかたが、スタッフの意識を含めて日本同様に浸透しているんですね。たとえば、昔の広告クリエイティブをちゃんと管理していたり、スタッフが日本語を勉強していたり。

そういったブランドを深く理解しようという姿勢や精神が無印良品ブランドを発信していく場としてベストではないかという結論になりました。もちろん親日であり、日本を訪れる観光客が多いからという側面もあります。また、ニューヨークは、北米を管理する『MUJI U.S.A LTD.』の拠点がニューヨークということもあり、自ずと決まっていきました。

[台北にて]

―インスタレーションの実施にあたり、PR活動はされたのでしょうか。

藤原:今回は、海外向けのプロモーションなので、外国メディアを中心にムービーとプレスキットをつくって配信しました。30媒体くらいに取り上げていただいたのですが、大きなデザイン系メディアをはじめ、いくつかのキーメディアに掲載されたことで、そこから一気に拡散していきました。ムービーの再生回数が公開1週間で50万に達するなど、反響は顕著に出てきました。

台北は自作マップ。ニューヨークはキャンペーン開催。インスタレーションをそれぞれがバックアップ

―開期中の台北、ニューヨークそれぞれの様子はいかがでしたか。

谷口:台湾の店舗は、目の前の通路を1日70万人くらいが通る非常に良い立地ということもあり、ものすごく好評でした。さらには、スタッフがナビゲータとしてジオラマ付近に常駐し、自作のマップまで用意してくれていたので、そこからコミュニケーションが生まれたりと、すごく賑やかでしたね。ジオラマを見ながら、お父さんが子どもに説明する姿もありました。

また、ニューヨークでは、インスタレーションに合わせて、Instagramでキャンペーンを開催しました。『#mujitokyo』のハッシュタグをつけてシェアすると、東京のマップがプリントされたハンカチがもらえるというものですが、2000件以上の投稿が見られました。

両開催とも足を止めてじっくり見ていく方が多く、なかには日本フリークなのか2~3時間滞在する方もいらっしゃいましたね。ディティールにこだわったつくり込みをしていますので、見る方に発見という感動や驚きを提供できたことが何よりでした。ちなみに、ニューヨークでは、ジオラマに折り鶴を置いていかれた方がいて印象に残っています。創作意欲が駆り立てられたのでしょうかね。クラフトの楽しみを提案できたような気持ちになり、うれしかったです。

[ニューヨークにて]

―手応えとしては、いかがでしょうか。

藤原:東京観光財団さんも、当初パートナー企業とどんな協業に結び付くのかイメージが追い付いていない部分があったようでしたので、その反動もあり完成物のクオリティから受けた感動は大きかったみたいです。また、数字的な部分を検証しても、掲載メディア数をはじめ、ハッシュタグの数、SNSのシェア数、映像のビュー数など、手応えは十分です。実際にご覧になった方の感想をSNS等から見ていても反響をひしひしと感じています。

(左奥から順に)株式会社良品計画 風間公太さん、株式会社良品計画 川名常海さん、dot by dot inc. 谷口恭介さん、株式会社TASKO 坂田亮一さん、株式会社TASKO 加藤小雪さん、株式会社TASKO 佐々木香菜さん、株式会社TASKO KIMURAさん、dot by dot inc. 藤原愼哉さん、株式会社TASKO 北澤岳雄さん、株式会社TASKO 二村俊和さん、株式会社良品計画 鎌田健史さん

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