来店促進とファン育成につなげるために。媒体によって新商品情報の配信時期を工夫する銀座コージーコーナーの広報戦略
Case: 来店促進とファン育成につなげる銀座コージーコーナーのPR活動
あなたの会社にとって、プレスリリースを配信する一番の目的は何でしょうか。「多くの人に新商品を知ってもらう」「自社サイトへの流入を増やす」「主催イベントの事前登録につなげる」など、企業ごと、配信するリリースごとに一番の目的は違っているはずです。
「いちばん身近なスイーツショップ」であり続けることを目指し、全国各地に約450店舗を展開する株式会社銀座コージーコーナーの場合、新商品情報をリリース配信する一番の目的は、ファン育成のためにまずは「来店者数を増やす」こと。そのために複数のツールを使い分け、ツールごとに最適なタイミングで情報発信するように心掛けているそうです。
同社は具体的に、どのような工夫をすることで店舗への来訪者数を増やそうとしているのでしょうか。広報宣伝部 広報担当の林真紀氏に話を聞いてきました。
来店促進につなげるため、案件に応じプレスリリースの発表時期を工夫
――普段取り組んでいる広報活動について教えてください。
広報宣伝部では、年間70~80本ほどのプレスリリースを配信しています。例えば旬のフルーツを使った商品など、季節ごとの新作を紹介する商品広報のプレスリリースが中心ですが、企業としての取り組みを発表する企業広報のプレスリリースもあります。
商品広報の場合、一番の目的としているのは、お客様に新商品やキャンペーンの情報を伝え、それをきっかけに来店を促進することです。
というのも、オンラインショップなどいくつか例外となるケースはありますが、銀座コージーコーナーブランドの商品をお買い求めいただくには、基本的にはお客様に当社店舗まで足を運んでいただく必要があります。
そのため、広報活動をする際には、すべての情報をそのまま流すのではなく、さまざまな商品やキャンペーンの中から、「どんな情報がお客様に喜ばれるのか」「どういう切り口ならメディアの方に興味を持ってもらえ、記事化が進むのか」という意識を常に持つようにしています。
――来店につなげるため、どのような工夫をしているのでしょうか。
ターゲットとするメディアの種類や、商品特性に応じて、リリースの配信時期を工夫しています。例えば、クリスマスやバレンタインのように、お客様が早くから情報収集し、時間をかけて選ばれるようなものは早めに。逆に、ニュースを見てすぐに欲しいと思っていただけるような話題性のあるもの・季節感のあるものなどは、SNSの拡散による来店促進も考慮して、発売数日前に配信するようにしています。
本来であれば、発売1カ月前~数日前というタイミングでは遅いのかもしれません。雑誌などの紙メディアにも新商品情報を載せてもらいたいのなら、発売の2~3カ月前には情報を公開しておきたいところです。
しかし、それだけ早く情報を出すと、ニュース記事などで取り上げてもらえたとしても、発売時には印象が薄れているかもしれません。例えばスーパーやコンビニエンスストアで売っている商品なら、日常生活の中で何気なく目にしたとき、「あのとき、話題になっていたお菓子だな。そう言えば、食べてみたかった」と思い出して手に取ってもらえますが、当社の場合はそうもいきません。「店舗へ買いに行きたい」と思っていただける話題化のピークを発売日直前にもってこないと、なかなか来店促進にはつながらないのです。
そうした事情もあって、新商品情報をリリース配信する上で、当社にとって最適だと考えたのが前述のタイミングです。発売までの期間中にWebメディアを中心に記事として取り上げていただくことで認知を広め、発売当日には会員向けメールマガジンで再び通知して、「あの新商品は今日発売するのか。買いに行ってみようかな」と思っていただけるように工夫しているのです。
小麦と卵と乳を使わないケーキを開発。草の根広報で着実に認知を拡大
――大半が商品広報とのことでしたが、他にはどのようなプレスリリースを配信しているのでしょうか。
企業としての取り組みを発表する企業広報のプレスリリースです。
銀座コージーコーナーのスイーツを家族や仲間の集まりの中心において、楽しいひとときを過ごしてほしい。そして、たくさんの人に笑顔を広げていきたい。当社はそんなビジョンを描き、新商品の発売やフェアだけでなく、スイーツを通じてファミリーで笑顔になっていただけるような、さまざまな取り組みをしています。
一例を挙げると、2009年から毎年開催している「夢のクリスマスケーキコンテスト」があります。これは、小学生以下のお子様から「こんなクリスマスケーキがあったらいいな」という思いを込めたイラストを募集し、グランプリに輝いた作品は本物のクリスマスケーキにしてプレゼント。さらに、商品化もするという企画です。年々規模を拡大し、2014年度には全国から1万671作品もの応募が集まりました。以前は社内審査のみでしたが、グランプリを選ぶ際、一般のお客様からの投票を受け付ける試みも2014年度から始めており、幅広いお客様に楽しく参加していただけるように、進化していっています。
一生懸命にイラストを描くお子様の笑顔が、ご家族の笑顔につながる。また、夢の詰まったイラストを目にしたお客様も笑顔になる。さらに、商品化したクリスマスケーキの売上は、お子様の笑顔につながる活動に寄付をしています。2014、2015年度は、東北で幼稚園児向けのイベントを開催し、ご来場の皆様にご好評いただきました。
こうした形で、企業理念を具現化し、たくさんの方に笑顔が広がる活動を企画・運営することも、広報宣伝部の大切な業務になります。
――銀座コージーコーナーのスイーツでたくさんの人に笑顔を広げていきたい。そのビジョンを実現する取り組みについて、他の例も伺えませんか?
年々、食品アレルギーをお持ちの方が増えているようですが、ケーキの主原料である小麦や卵、乳にアレルギーをお持ちの方がいらっしゃるご家庭では、クリスマスやお誕生日、お祝いごとにも、ケーキは我慢せざるをえません。スイーツを通じて“すべての人を”笑顔にしたい、その思いから、創業65年を迎えた2013年、「小麦と卵と乳を使わないデコレーションケーキ」を開発・発売しました。
実はそのケーキの企画に携わった社員も、自身の子どもに卵と乳のアレルギーがあり、家族みんなでケーキを食べたことがありませんでした。何とか自分の子どもにも、安心して食べさせられるおいしいケーキをつくりたい。そんな思いもあって、熟練のパティシエとタッグを組み開発に着手。小麦と卵と乳の代わりに米粉と大豆粉と豆乳クリームを使い、素材選びから製法、自信を持って「おいしい」といえる味にまでこだわり抜いて、完成するまでにおよそ100種類以上の仕込みを行いました。
それだけの思いを込めて、苦労して開発したケーキですから、広報担当者として1人でも多くの人に知ってほしい。ですが、ターゲットとなるお客様は、普段あまり店頭にいらっしゃることはありませんので、ポスターなどの店頭販促物に頼るだけの広報活動ではうまく伝わりません。そのため、リリースの配信やオフィシャルサイトでの情報発信に加えて、例えば、他の情報について問い合わせてくれた記者と雑談する機会があれば「こんなケーキをつくりました」と紹介させていただいたり、学会などで医療関係者の方に試食していただいたりと、草の根での活動を続けています。
まだまだこれからですが、こうした地道な活動の成果が実り、発売直後と比べて多くのお客様に認知が広がって、ご注文は確実に増えてきています。「息子にとって、生まれて初めてのケーキ。家族みんなでうれし泣きしながら食べました」といったお手紙をいただくと、本当にうれしいですね。
ケーキを囲む楽しさを1人でも多くの方に知っていただけるように、これからもこうした活動を続けていきたいと思っています。
『システム連携でプレスリリースページ制作の手間を削減』
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