雑誌広告は“見てもらうため”だけに非ず!世界の体験型雑誌広告10選
Case:World Great Magazine Advertising
世界各地のユニークな雑誌広告をまとめて紹介します。
「雑誌広告は見てもらうためだけのものではない」ということに気付かせてくれる、アイディア溢れる読者体験型の事例を集めました。
ではどうぞ!
1.“くしゃくしゃに丸められて”はじめて真価を発揮する雑誌広告
プジョーのスポーツワゴン車Peugeot 207 Quicksilverのユニークな雑誌広告。
スポーツワゴン車のターゲットとして一定のマーケットが見込めるサーファーに訴求することを目的として、サーファー向け雑誌に広告を出稿。
一見すると車体が写っている普通の広告に見えますが、この広告ページには、『この広告ページを切り離して、くしゃくしゃに丸めるとサーフボードのワックスのようになるので、あなたの大切なボードを磨くのに使ってくださいね』と記載されています。(※このページは通常の紙ではなくロウが練り込まれていました)
読むだけでなく、読者が使える実用的な広告。自分たちの愛着のある車体の写った広告を、読者に促してくしゃくしゃにさせるという点に潔さを感じます。
2.一風変わった対話型の雑誌広告 “迷路を解く”とそこには・・・
ケチャップメーカー大手ハインツが家族向け雑誌に出稿した雑誌広告。
この広告の狙いは。ハインツケチャップの容器ボトルがとても扱いやすく、このボトルを用いて料理に“ケチャップを用いた装飾”が簡単に綺麗にできるということを訴求することでした。また、同時にケチャップを使って料理に“絵”を描く楽しみを体験してもらうことも意図されています。
この雑誌広告の仕掛けは、まず読者(子供含む)が広告ページのど真ん中に描かれた迷路を入口から出口に向かって鉛筆でなぞっていき、無事出口まで迷路をなぞることに成功したらそのページをめくります。
すると、クレープバーガーの上に素敵な絵(スケッチ)が、あたかもケチャップを使って描かれているように見えるという仕掛けがほどこされています。(迷路をなぞったページの裏面に赤色で複写される細工が施されています)
『あなたのお気に入りの料理にもハインツのケチャップで好きな絵を楽しくスケッチして見てね』ということを体験を通じてコミュニケートしています。
“迷路を解く”という、もともとの訴求テーマとはかけ離れたアトラクションを顧客に提供し、顧客はその体験を通じて、あくまで結果として商品の訴求点を自然に把握するという設計となっています。このキャンペーンの発想の原点には、メッセージを「届けられる数をいかに増やすか」という発想ではなく、「届いた人にいかに納得してもらい、浸透させるか(頭に残すか)」ということがあったのではないかと想像します。
3.“叩くと膨らむ”雑誌広告
自動車メーカー大手プジョーのユニークなインタラクティブ雑誌広告。
自動車の車体正面が写った広告ページに、『ここを思いっきり叩いてください!』という丸いマークが記載されています。
このマークを読者が実際に叩いてみると、同ページが裏側から自然と盛り上がってくる仕様になっており、そのページをめくるとこの車種の『エアバッグ』の優れた性能を伝えたかったのだとわかる仕掛けになっています。
4.“ビールの栓抜き”になる雑誌広告
大手ビールメーカーカールスバーグが男性誌に出稿したプリント広告。
広告ページを引きちぎり、ページに指示されているようにまるめると“ビールの栓抜き”になるという仕掛け。ちなみにこの広告のタイトルは、「Probably the best ad in the world」(=この広告はおそらく世界で最もイケテル広告だろう)というものでした。
実用的で便利な雑誌広告ですね。
5.ニュースの“行間”を読み解く週刊誌
政治や社会情勢などを扱う人気週刊誌Newsweekのルーペが付属した雑誌広告。
見開き広告にでかでかと書かれている文章は、世界中で注目を集めた機密情報公開サイト“WikiLeaks”創設者のジュリアン・アサンジ氏のニュースについて表層的な事実だけを簡単にまとめた内容になっています(具体的には、『ジュリアン・アサンジ氏はスウェーデンにおける婦女暴行の疑いでイギリスにて拘束された。』)。
この文章の行間に、“アンダーライン”のように引かれている模様は、ページ右下にある付属のルーペを使うと実は非常に細かい文字で文章が書かれていることがわかるようになっています。それを読者が読むと、薄っぺらな事実(ニュース)だけではなく、ジュリアン・アサンジ氏のニュースの裏側に潜む事実を掘り下げ、背後関係とともにその意味を分析したうえで報道していることがわかります。
Newsweekはこのクリエイティブを通じて、自分たちの雑誌は事実のみを並べた薄っぺらいビジネス誌と違い、徹底的な取材の元、ニュースの“行間”を読み解き、深い分析を元に紙面を構成しているということを伝えようとしています。
6. コカ・コーラ、クルクルと丸めることで真価を発揮する雑誌広告
コカ・コーラがブラジルで放送しているオンラインラジオ「Coca-Cola FM」の開局1周年を記念して、ティーン向けエンタメ雑誌に出稿したユニークな雑誌広告。
ページの説明の通りに雑誌をクルクルと丸めていくと、あっという間にiPhone用のスピーカーに早変わりするという代物。iPhoneを差し込むことで、(電気を使った本物のスピーカーとまではいきませんが)丸められた雑誌のホーン効果により音量を増幅でき、「Coca-Cola FM」で流れる音楽を楽しめるという仕掛けです。
丸めてスピーカーの形にした際に、コカ・コーラのブランドイメージが強調されるデザインになっている点も特長。
広告ページで何かを訴求すること以上に、読者に『使って遊んでもらう』・『使って楽しんでもらう』ということを意図した制作された雑誌広告。この自由な発想が素敵ですよね。
7.接着剤の広告『“折り紙”を折るようにあなたの大切なものを簡単に修復できます』
ロシアの接着剤ブランドSekunda Glueによるユニークな雑誌広告。
広告の狙いは、「大切な家庭用品を接着剤を使って修復する作業をほとんど体験したことのない消費者に、その作業がとても簡単であること」を伝えることでした。
同社はデザイン誌やインテリア雑誌に、“バラバラに割れたように見える”中華製の花瓶が描かれた広告を出稿。そこには袋とじのような形で右側に1ペ―ジ付録がついていて、そのページの折りたたまれた部分には、このページを『折り紙』のように折りたたみ、紙製の花瓶を作るための説明書が記載されています。
読者は説明書通りにページを折っていくことで、“バラバラに割れたように見える”中華製の花瓶を簡単に復元するという疑似体験ができるようになっています。この際、Sekunda Glueのイメージが用紙の適切なところに印刷されているため、でき上った際にあたかも接着剤を使って花瓶を復元しているような錯覚を与える効果があります。
Sekunda Glueを使うことで、折り紙を折るように簡単に破損した大切なものを修復することができるんですよと示唆しています。
8.ワンちゃんの里親を募るインタラクティブな雑誌広告
虐待されている動物を保護する非営利団体「ASPCA」(アメリカ動物虐待防止協会)による、ワンちゃんの里親を募る雑誌広告。
ワンちゃんの喉元には注射器が突きつけられているとともに、『毎日1万匹ものワンちゃんが安楽死させられています』というメッセージが刻まれています。そしてこの部分がページ右端から引いて切り取れるように点線になっています。
この部分を切り取り線にそってペリペリとめくると、切り取った部分の裏側がワンちゃんの首輪になり、「Adopt today(今日犬を引き取りましょう)」というテキストともに、「ASPCA」のホームページのURLが現れてくるという仕掛けになっています。『ワンちゃんを安楽死から救うにはあなたの協力が必要なんです』ということを訴える雑誌広告。切り取り線があると何となくめくりたくなる読者の心理をついた仕掛けですね。
9.“燃やして始めて真価を発揮する”ビールブランドの雑誌広告
バーベキュー(BBQ)は、ビールブランドにとって顧客との接点を持つ有意義な機会の一つ。そんな機会を上手に活かそうと、ブラジルのSkol360が手掛けた一風変わった雑誌広告。
こちらの雑誌広告は、BBQで誰もが簡単に火がつけられるように、炭の配置などが記載された説明書のような内容の広告になっています。更にこの広告ページ自体が[ファブリックフィルムとパラフィン]という火が点火しやすい素材で作られており、説明を読んだ後は、ページを引きちぎって丸めて火を付けると、丁度いい具合に火を起こせるという仕掛けになっています。
自分たちの大切な広告を読者にひきちぎらせて、燃やさせるという発想が大胆不敵で面白いです。読むだけではない、『使える』実用的な雑誌広告ですね。
10.Volkswagen、レスポンス率9%を記録した雑誌のリサイクルを促すマガジンプロモーション
フォルクスワーゲンの環境に優しい低燃費エンジン技術「ブルーモーションテクノロジー」の雑誌広告。
世界中で発行されている雑誌の内、77%が捨てられ再利用されていないそう(ハーバード大調べ)で、そんな『雑誌の地球環境に優しくない現状』を逆手に取った施策を企画。プロジェクト名は、『ブルーモーション・ラベル』。
同社は雑誌内に普通のプリント広告を出稿する代わりに1枚のカードを挟みます。このカードを手にとって見てみると、リサイクルセンター行きの宛名シールになっています。(このシールをブルーモーション・ラベルと名付けています)
読者がこの雑誌を読み終えたら、雑誌の表紙にこのシールを貼ってもらい、ポストに投函してリサイクル行為を促すという仕組みです。
ケープタウンやヨハネスブルクなどの各都市で展開し、レスポンス率は初期配布分だけで9%、プロジェクト全期間を通じてみると5%を記録したそうです。雑誌に出稿する大半のプリント広告が実際に紙の無駄遣いになってるという現状から、今回のリサイクルを促す宛名ラベルプロジェクトを企画。
「ブルーモーションテクノロジー」の想いを、体験を通じてターゲットの頭にしみ込ませる面白いプロモーションですね。
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