2012年世界の卓越したダイレクトマーケティング10選
Case:2012 World Direct Marketing
2012年の世界のユニークなダイレクトマーケティングをまとめて紹介します。
ターゲットの琴線をダイレクトに揺さぶる卓越した施策の数々をご覧ください。
1.ビールの売上が2倍に!“シャイボーイ”のインサイトを捉えたバーのダイレクトマーケティング
シンガポールで最も人気のあるバー・チェーン Harry’s Barが仕掛けたダイレクトマーケティング。当施策の背景として、シンガポールの若者は異性に積極的に声をかけることができない、いわゆる“シャイボーイ”が多く、そんなシャイな男性でもバーで見かけた気になる女性と気軽に“会話”ができるようになればと発案された企画です。その名も ‘Bottle Message’。
このバーではビールを注文した男性客にQRコードが描かれたタグ付きのビール(瓶)を提供します。男性客はバーの中で気になる女性がいた際、とりあえず匿名で気軽に声をかけたかったら、当企画専用のHarry’s Barメッセージアプリをダウンロードして、その後でタグについているQRコードを読み取り、そのアプリで女性へのメッセージをタイプします。その後で、男性にもう1本ビールを購入してもらい、その新しいビールに自身のビールについていたタグをひっくり返してかけてもらいます。(※ここら辺の説明も全てタグに明示されています)
そのタグ付きの新しいボトルを店員に頼んで、「僕からあちらのお客さんへ」的な感じで意中の女性の元に持っていってもらい、受け取った女性がタグを読み、QRコードをスキャンすると、先ほどの男性のメッセージが読めて、気軽に会話がスタートできるという仕組み。
施策の結果、メッセージ付のビールを受け取った女性たちは大いに驚き、大好評だったそうです。さらにこの取り組みを通じて同チェーン店のビールの売上はなんと2倍になりました。
こういうお客さんが喜ぶ仕組みを創出して、お店の売上(実利)にも繋げるのは素晴らしいですね。ターゲットインサイトを捉えた素敵な取り組みでした。
2.QRコードがクッキーに!電子書籍ストアの地球環境に優しいダイレクトマーケティング
香港の電子書籍ストア Four Directionsによるダイレクトマーケティング。紙を使用しない電子書籍だけに、オフラインでの宣伝活動においても、チラシやポスターなどで紙を使用しない地球環境に優しい手法を企画。市内の人気カフェの協力を得て、コーヒー等飲み物を注文したお客さんにQRコードが表面に描かれたクッキーをもれなく提供しました。こちらのQRコード部分は砂糖を使ってできており、下のバタークッキーと一緒に食べることができます。
QRコードをスキャンすると、電子書籍が1冊無料で読めるようになっており、そういった点から“Eat What You Read”がコンセプトになっています。
こちらの施策は、1週間で8,000枚のQRコードクッキーを配布、その結果、サイト訪問者は45%、売上は12%も増加しました。ちなみにプロモーションの総予算は、わずか4万香港ドル(約41万円)だったそうです。
カフェでふっと一息つく時間に、『電子書籍のトライアル』をこんなユニークな形で提案されるのはいいですね。エコフレンドリーなイメージを訴求するブランディング施策としても面白い試み。
3.フランスのクリーニングサービス、“海外の住宅ならでは”の小粋なDM
クリーニングサービス会社Decompressingの新規顧客獲得のためのユニークなチラシ。同社のサービスは、洗濯ものを自宅までピックアップしに来てくれて、洗濯し、綺麗にアイロンがけした上で、自宅まで届けてくれるという一気通貫のサービスがウリです。
そのサービスの魅力を伝えるために見込み客の自宅玄関ドアの隙間から挿入したチラシには、シワシワで汚れたワイシャツが描かれています。見込み客が手にとってみると、始めに目に入ったワイシャツの下側のシワシワな感じとはうってかわって、ワイシャツの襟元は真っ白で綺麗にアイロンがけがされているように描かれています。
「汚れてシワシワだったワイシャツも、真っ白にして、ノリもきかせてご自宅まで配送しますよ!」ということを訴えるクリエイティブ。
遊び心もあって、よく考えられたチラシですね。海外の住宅の作りならでは、と言えそうです。
4.窓ガラス清掃業者の“思わず封筒を開けたくなる”機転の利いたダイレクトメール
オランダの窓ガラス清掃業者「Logchies Junior」の新規開拓用ダイレクトメール。窓付封筒の窓の部分を清掃員が綺麗に磨いているように見えるというデザイン。
「建物の窓」と「封筒の窓」をかけるという発想。ダイレクトメールの中身ではなく、中身を覆う封筒に目を付けた点がユニークですね。思わず封筒を空けてしまいたくなるデザインでした。
5.インドネシアの公文学習塾が子どもたちに配布したカレンダーが素敵すぎると話題に!
世界46カ国で1600万人もの子供たちの学習を支える公文がインドネシアの子供たちに退屈な算数の勉強を楽しんでもらおうと考え、制作したプロモーショングッズ。同社では1日1日の着実な学習こそが子どもたちのポテンシャルを最大限発揮する為の最も有効な方法だと考えており、今回のグッズでもその考えを踏襲した作品となっています。カレンダーの名前は『2000+12カレンダー』。
こちらは日めくりカレンダーで、毎日のカレンダーに算数の問題(計算式)が1問掲載されています。そして問題の回答が“その当日の日にち“になるという仕掛けになっています。
上の画像でいうと、この男の子が今計算を解いている日は「2月13日」となります。
カレンダーをめくるたび毎日出題される計算式には、単純な足し算だけでなく、引き算、掛け算、割り算がランダムで出題されるようになっていて、子どもたちが着実に算数の力をつけられるような仕様になっています。
このカレンダーはジャカルタ市内の5,6歳の子どもがいる家庭に配布されたそうで、その結果、受講の申し込みが著しく増加したそうです。ブランディングも考慮されたユニークなプロモーショングッズ。
親御さんたちが受講を申し込む気持ちもわかりますね。
6.エリザベス女王即位60周年を祝う「パントーン」のユニークDM
日本ではソフトバンクモバイルのカラフルな機種でも知られる世界的な色見本帳パントーンが、エリザベス女王の即位60周年をお祝いするために製作した特別なDM。エリザベス女王と言えば、華やかでカラフルな衣装が常に国民の注目を集め、多くの市民からファッションのお手本にされる存在でもありますが、同社はそんな女王が持つイメージをいかして、カラーガイドブックの見本帳に女王の姿をかたどった台紙を起用しました。
女王が身につけている衣装の色がカラーイメージになっている色見本帳。ご覧の通り全部広げてみると圧巻です。
『女王陛下と同様我々パントーンも皆さんのカラーコーディネートを今後も支えていきます!』ということも伝えたいのかもしれませんね。国民から絶大な支持を受けているエリザベス女王のイメージを生かした目をみはる取組み。
7.受け取った人の3人に2人がクーポンを使用!! 口臭ケア用品の“スメル・プロモーション”
口臭ケア用品リステリンが香港で仕掛けたストリート・プロモーション(サンプリング)。香港の街角で『美女が息を吹きかける姿』が描かれたパラパラ漫画仕様のフリップブックを市民に配布。このフリップブックの各ページには玉ねぎの臭いがついていて、受け取った市民がパラパラとページをめくると、玉ねぎのきつい匂いが、あたかも美女の口からしてくるように錯覚するという仕掛けが施されています。
『こんなに美しい女性でも、ひどい口臭だと一気に興ざめしてしまうでしょ』、『皆さんも自分では気づいていないだけで、口臭ケアをおろそかにすると、人を不快にしてしまいますよ』とコミュニケートし、気づきを与える取組み。
このフリップブックにはリステリンのサンプル商品と交換できるクーポンが付いていて、なんと66%もの人が利用したそうです。いい香りを客引き・マーケティングに活用する手法はよくありますが、不快な香りを通じて、ターゲットに体験を促すための『気づき』を与える演出が巧みだと思いました。
8.インドの高級チョコ店のハッピー・サプライズ名刺
インド デリーの高級チョコレートチェーン店Choko laのユニークな名刺。高級チョコを包んだ包装用紙が名刺になっているという代物。
チョコを食べた後、ずっと甘い香りが漂う素敵な名刺に早変わりします。くしゃくしゃにしてそのまま捨ててしまう人もいるかもしれませんが、楽しい驚きで心に残りそうですよね。
9.アディダス・ショップ店員専用の“靴ひも名刺”
スポーツブランドのアディダスが“直営店の店員とお客さんとのより良好な関係構築を図る”目的で制作した、『靴ひも型』の名刺。こちらの靴ひもにはブランドロゴとともに店員の名前・電話番号・店舗住所が記されています。靴ひも型の名刺にすることで、靴ひもと同様に、『あなたのそばに常にいますよ』というメッセージを発信しようとしているのかもしれません。
10.世界で最も小さな広告代理店による強烈な印象を与えるトランスフォーム型名刺
アメリカ ニューヨークに、「世界で最も小さな広告代理店」と売り出している「Clark&Kent」という会社があります。彼らのオフィスは驚くべきことにNYにある公衆電話ボックスですが、名刺も普通とは違います。
彼らの名刺はパッと見は普通の名刺ですが、手に持ってサイドから圧力を加えると変形して電話ボックスの形になるという仕掛けが施されています。
同社のオリジナリティが名刺からも十二分に伝わるのはいいですよね!社名クラーク・ケントの由来である「スーパーマン」並みのパフォーマンスを発揮しますよ!と訴えているのかもしれません。
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*すべての広告人に捧ぐ!『2012年 世界の凄いプロモーション12選』(Markezineへの寄稿)
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