日本では決してお目にかかれない!? 2012年世界のキワドイ広告13選
Case:2012 World Crazy Promotion
先日Markezineで「2012年世界の凄いプロモーション12選」を寄稿しましたが、今日は少し趣向を変えて、今年世界各地で実施された“日本では自主規制で到底お目にかかれないような”キワドイ広告やプロモーション事例を13件まとめて紹介します。
いろんな意味で「世界の広さ」を痛感させられるケースの数々を是非以下からご覧ください!
ではどうぞ!
1.飛行機離陸前に『別の意味での安全』をレクチャーするDurexのドッキリプロモーション
コンドーム世界最大手ブランド「Durex」が航空機内で実施したアンビエントプロモーション。
普通飛行機に乗ると、離陸前にキャビンアテンダントが緊急時の対処法など「安全のための説明」を行ってくれますが、今回のプロモーションでは、その説明の途中で突然、コンドームの装着方法を実例を交えて説明するという企画。綺麗なキャビンアテンダントが突起状のものに、コンドームを装着する様子をあたかも、「安全のための説明」を行うのと同じテンションでたんたんと進めていくのがポイント。
最後にアナウンスで「これ、Durexのドッキリプロモーションだったんだよ」、ネタばらししてようやく乗客に笑みがもれたようです。航空機内での「安全」と、別の意味での「安全」(望まない妊娠や性病から身を守る)をかけるという発想の企画。
2.エレベーターを舞台にした液晶モニタの恐怖プロモーション
家電メーカーLGによる、同社の液晶モニタが極めて高画質であることを訴求するためのサプライズプロモーション。
ビルのエレベーターの床にLGの液晶モニタ9枚をしきつめて、その各モニタには『エレベーターの地面と同様の映像』をはじめ流しておきます。そんな細工が施されているとは露知らず、一般人がエレベーターに乗り込んでエレベーターが動き始めると、地面のパネルが一枚一枚バラバラとはがれ落ちていくように見せるという仕掛けが施されています。
乗客にとっては、かなり心臓に悪そうな気もしますが、液晶モニタの画質の美しさを訴求する“切り口”として新しさを感じます。日本だと相当クレームがありそうですが、実行力が凄いですね。
3.ボルボの超絶凄いバイラル動画が海外で“ファンタスティック”と話題沸騰!
ボルボの新型トラックのPR用バイラル動画。
クロアチアの閉鎖された高速道路で、猛スピードで並走するボルボ・トラックの間に張られたロープの上を、ハイライナー(綱渡り)世界記録保持者が“迫りくるトンネルに入るまでに”渡りきる、という企画。紆余曲折ありながらも無事成功しますが、ハラハラドキドキ感がハンパないです。
この企画は、トラックの操縦性能の高さを証明することが狙いですが、そのためだけに、こんなアクロバティックなスタントを実施するのは、まさに“Crazy”といったところでしょうか。日本だと怒られそうです。
4.わずか数日で新規会員数が35%増加!! フィットネスジムの“ビフォー・アフター”プロモーション
[国名:ケニア/企業名:Power Vibe Studio]
ケニアにある痩身専用のフィットネスジム Power Vibe Studioのアンビエントプロモーション。
ダイエット系の広告でよくある「Before-After」を雑誌等の媒体で掲載するのではなく、実世界において太った女性と痩せた女性2名を起用し、「Before-After」を表現するという企画。採用した2名は体型以外、顔立ちがかなり似通っている点がポイント。それぞれ「Before」(太った女性)と「After」(痩せた女性)という文字が大きく背中部分にプリントされたTシャツとレギンス、スニーカーを着用してもらい、繁華街を練り歩いてもらうことで、フィットネスジムの痩身効果を訴求するという企画です。
こちらは、各種メディアでフリーパブを獲得するとともに、数日で新規会員数は35%も増加したそうです。日本でやったら“消費者をあざむいている!けしからん!”なんて言われかねないケースですよね。
5.ブラジルのフットボールクラブ、ファンの『クラブ愛』を活かした未だかつてない斬新過ぎる献血キャンペーン
100年以上の歴史を誇るブラジルのプロフットボールクラブ「EC Vitoria」による、献血を促すプログラム。
「EC Vitoria」は伝統的に黒赤の横ストライプのユニフォームを着用してきましたが、今季のシーズンのはじめに突如黒白のストライプのユニフォームに変更しました。実はこのユニフォームの変更は、『ファンが献血してくれる量に応じて、黒白のストライプが一年間を通じて徐々に元のユニフォームの黒赤へと戻っていく』という企画のためのもの。ファンからある一定の献血がなされることで、上の画像③のように一段ずつストライプが赤色に戻っていくという仕掛けになっています。
ファンの『クラブ愛』を活かした斬新な献血プログラムですが、献血のために伝統のユニフォームの色を変えてしまうという企画は、なかなか実行できないですよね。
6.中年男性の“お尻の割れ目”をクリエイティブに起用した史上初のリクルーティング広告
[国名:ドイツ/団体名:The German Crafts]
ドイツの水道の配管工や暖房装置の修理工、自動車整備士など手に職を持つ職員の組合「The German Crafts」が、国内の若者を採用するために制作した求人広告。
一生懸命に水道管を修理している配管工の業務中の様子をクリエイティブに採用していますが、単純な表現ではなく、しゃがんでできた男性配管工のお尻の割れ目が、あたかもTシャツの裏側に描かれている美女の豊満なバストに見えてしまうという表現。広告タグラインは“More attractive than you think”(= 君が思っているよりもずっと魅力的だよ!)。
『配管工という一見地味で格好よくないイメージの仕事は、実のところ“こんな風に”他人からはとても魅力的に映っているんだよ!』と示唆しているようです。
7.スペインのTV局で放送禁止になった不動産情報サイトの物議を醸すCM
スペインの不動産情報サイトIdealista.comのTV-CM。
不動産情報サイトは商材の特性上、競合他社に比べて目立つことは困難を極めますが、今回のケースはターゲットとなる20,30代の注目を集めるために、意図的に羽目を外したクリエイティブになっています。動画の内容は、若い男女がカーセックスに興じている最中に(駐車違反か何かで現行犯で)警察に車に押し入られ、逮捕される瞬間の写真を次々に表示していくというもの。
男女1:1じゃないケース、同性同士や3人という写真もある点がリアリティがあります。動画でイイタイことはもちろん、『お家で“こと”に及んでいればこんな悲惨なことにはならなかったのに』、『ちゃんとしたお部屋があるって素晴らしいよ!』、『うちのサイトでいい部屋探そうよ!』ということ。
「部屋を持つことの利便性」を示唆するためだけに、このクリエイティブを採用する発想がいっちゃってます。
8.「Durex」による、オバマ夫人とロムニー夫人の写真を使った“キワドイ”つぶやき
今秋4年に1度の米大統領選挙でオバマ氏が再選を果たしましたが、この選挙結果の直後にコンドームブランド最大手の「durex」が、中国版Twitterとして知られる「Weibo」の自社アカウントで行った写真付の投稿が話題を呼びました。
両手を大きく開いて笑顔を振りまくオバマ夫人の写真と、むっつりとあまり嬉しくなさそうな表情で小さな指を一本立てているロムニー夫人の写真を並べています。写真の上には、durexのロゴとともに、『(当選を果たした)オバマ氏とロムニー氏の違いは・・・』と中国語で記載されています。
写真にうつる彼女たちの仕草は、「うちの旦那の“アレ(男性器)はこれくらい”なの」と表現しており、そのサイズに満足したような表情のオバマ夫人と、不満顔のロムニー夫人を比較しています。そして「“これ”こそが当選したオバマ氏と落選したロムニー氏の違いなんだ」と、durexがジョークでフォロワーとコミュニケーションを図った企画。
9.世界初の舐められるエレベーターがロンドンに上陸!
[国名:イギリス/企業名:McVitie’s Jaffa Cakes]
イギリスの有名な菓子メーカー「McVitie’s Jaffa Cakes」によるエレベーターを舞台にしたアンビエント広告。
ハードな仕事に取り組むオフィスワーカーにお菓子を訴求することを狙って、オフィスビルのエレベーターの内装全面にクッキーを貼り付けてしまうという試み。こちらには1325個の同社クッキーが使われているそうで、乗客はエレベーターに乗りながら、上の写真のようにお菓子を自由に舐めることができるそうです。ちなみにこのエレベーターの中には「お菓子の監視員」が常駐していて、乗客が壁面のお菓子のどれかを一旦なめると、“衛生的な観点から”そのお菓子を取り外していくようになっているそうです。
かなりバカバカしい企画。衛生面でやっちゃダメでしょ!と思ってしまうケース。
10.ギリシャ観光局、「経済危機」のマイナスイメージを逆手に取った観光客誘致キャンペーン
昨年から今年にかけて、「ギリシャ経済危機」というニュースが世界中で大きく話題になりましたが、ギリシャの政府観光局はそんな経済危機というマイナスイメージを逆手にとった観光客誘致キャンペーンを展開していました。
ギリシャの観光資源である古代彫刻・海・太陽の素晴らしさをアピールする為に、(経済は危機に陥っているけど)これらの観光資源は、「Not in crisis.」(危機に陥っていません)と表現する広告を制作。
『皆さんがご存じの通り、我々ギリシャは経済危機に陥っていますが、ギリシャの素晴らしい観光資源である古代彫刻・海・太陽は経済危機からは独立した存在であり、何も問題はありません。是非この素晴らしいギリシャを体験しに来て下さい!』、というメッセージを発信しているようです。何とも逞しいですよねww
11.HIV予防広告「あなたの見知らぬ大勢の男性が“ここに”チェックインしたことがあります。」
Hiv/Aids団体によるHIVの予防を促すプリント広告。
ランジェリー姿の女性の開かれた股間に、Facebookのチェックインマークが据えられているというクリエイティブ。この写真の右隣には、“Matti Virtanen and 19 others were here.”(Mattiさんとその他19人の男性がここにチェックインしたことがあります)とも記載があります。このクリエイティブを通じて、『今まさにあなたの眼前にいる女性には、こんな過去(= あなたの見知らぬ男性との数多くの性交経験)があるかもしれませんよ!だからコンドームをつけて自衛しましょうね』と示唆しています。
メッセージの中の“19 others”となっているところが、『あなたの知らない誰か』という微妙なニュアンスを上手に演出しています。まさにそれこそが“HIVにかかるリスク”ですからね。
「HIV予防」という重苦しく、かつ、様々な広告表現で言い尽くされてきたテーマを、流行りのSNSのチェックインマークで表現することで、若者にとっての自分事として捉えさせようと働きかけたメッセージ&クリエイティブに感心します。
12.アダルト専用ドメイン「.xxx」の告知広告
アダルト専用ドメイン「.xxx」をポルノサイト運営業者に告知し、ドメインの移設をうながすための広告。
いかつい引っ越し業者の男性がランジェリー姿の美女と激しいSEXを繰り広げているように見えるクリエイティブ。こちらの広告タグラインは、“Porn is moving to .XXX Adult Domain.” (ポルノ[サイト]は今まさに続々と、アダルト専用ドメイン「.xxx」に引っ越し中です)というもの。
『ポルノサイトのドメイン移設』と『SEX中の引っ越し業者』を見事にかけた表現に仕上がっています。
13.BMW と Audiのビルボードバトル “ついに決着!?”
高級車ブランドBMWとaudiがビバリーヒルズで実施した、ライバル同士による広告合戦。
はじめに、audiが「Your move,BMW.」(あなたの番ですよ)という看板広告を設置してBMWを挑発。それに応えて、BMWはその看板の隣に断然大きな看板で3シリーズの車体とともに「Checkmate(王手!)」と応戦。
それに対して、audiは、更なる巨大看板に「Your pawn is no match for our king.」(あなたのポーンでは我々のキングの敵ではない)というメッセージとともにAudiの最新スポーツカーシリーズR8を掲載。BMWはここで終わらず、audiの巨大看板に紐をつけて、その先に気球船を浮かばせます。そしてその船体には「Game Over」の文字とともに、F1用マシンを掲載しました。(AudiはF1に参戦していないのでそのあてつけ)。
日本では見られない比較広告の応酬。ウィットに富んだやり取りが愉快で、やってる本人達がこのバトルを一番楽しんでいる様子さえ伝わってきました。
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