テーマは商品愛とおもてなし「おうちで商店街」が提案する新しいお買い物体験|前編
楽天グループ株式会社と株式会社電通は、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」において、没入体験が楽しめるデジタル商店街「おうちで商店街 Powered by Rakuten」を、2024年10月7日(月)の「デジタルの日」に合わせて公開しました。
「おうちで商店街」は、特設サイト上でスクロールすると、各店舗の店長やおすすめ商品の情報を見ることができ、実際に商店街を歩いているような没入感のあるお買い物体験を楽しめるというもの。その新しいお買い物体験に関心が集まり、開催中は多くのユーザーが特設サイトを訪れたといいます。
そんな施策の企画はどうやって生まれ、実施へと至ったのか、楽天グループ株式会社の秦さんと西本さんに、お話をお伺いしました。
企画のスタートからの試行錯誤の過程についてを中心とした今回の前編と、施策の背景にあった想いや今後の展望について深掘りした後編でお届けします。
まずは自己紹介と今回のプロジェクトでのお立場や役割をお聞かせください。
秦 楽天市場事業のアカウントイノベーションオフィス(AIO)において、コンサルティング部門の責任者を務めております。主に、全国展開する大手企業のブランドであるナショナルブランドの支援を行っております。また、大手代理店様とも連携し、新たなビジネスモデルの創出にも積極的に取り組んでおります。
今回の施策はその一環で、電通さんとのいろいろなディスカッションの中で、話が進んだ企画でした。電通の皆さんには企画段階からさまざまなアイデアをいただき、また実際の没入体験が楽しめるデジタル商店街を作り込むところまでを担っていただきました。
その中で、私の役割としては全体の座組の意思決定や、社内外との調整などを行なっていました。
西本 私は秦の下で、アカウントイノベーションオフィスのビジネスクリエィティブのマネージャーを担当しています。ナショナルブランドさんをはじめとするクライアントに向けて、日々さまざまな提案を行い、新しい企画なども提案しています。
今回の施策では、秦が各所調整して戦略立てたものを実際に形にしていくところを担っていました。具体的には電通さんとの定期的な打ち合わせや、今回出店してくださった店舗さんとの日々のやりとりです。
電通さんとの話から生まれたという今回の施策は、企画の背景にどんなことがあったのでしょうか。
秦 そもそも楽天は、というところのお話からさせてください。弊社は企業理念として「イノベーションを通じて人々と社会をエンパワーメントする」ことを掲げています。1997年にショッピングモールの楽天市場を開設し、基盤はeコマース事業(以下、EC)です。
これまでも、楽天市場としてオンラインはもちろんのこと、「食いしんぼう祭」などのオフラインイベントもさまざまな形で実施しています。お客様にとって「楽しいお買い物体験」を提供するということを常々やってきた背景には、「Shopping is Entertainment !」というスローガンを掲げているということもあります。
そんな中で、電通さんから企画の提案を何度かいただくうちに電通さんと話すうちに新たな顧客体験が創出できるのではないかというアイデアが生まれ、これまでにチャレンジしたことのない企画でもあったので、「やってみよう」と。それが、商店街を実際にオンライン上で表現していくという今回の企画です。
ただ、これを実現するためには、開発などのさまざまな部署を巻き込んでいく必要があり、楽天だけでは成しえないところを、電通さんにパートナーに入ってもらうなどあって実現に向けて取りまとめていきました。
店舗ごとの個性を感じさせる表現が目を引くおうちで商店街
実際に公開されたサイトを拝見した時に、お店の方の顔が見えるというのがとても印象的でした。没入感というキーワードもありましたが、本当に商店街を訪れているような経験ができるところが、今回の施策の大きなポイントだと感じます。どんなところを目がけて施策を形づくられたのでしょうか?
秦 いちばんやりたいと考えていたことは、人の気配を感じられるお買い物体験をオンラインで表現することでした。ECでのお買い物は、どうしても無機質になってしまうところがあります。
楽天市場には5万店以上ある店舗さんが集まっていて、店舗さんそれぞれのページのデザインや表現があります。自由にサイトで表現できる仕様になっていることも大事ですが、誰かからモノを買う体験をオンラインでも実現・再現していく、もっとリアルに近づけた形で実現していくこと、そこをいちばん目指しました。
そのような事をイメージしながら、実際に商店街を散策しているかのように、店長さんやお店の方と触れ合っておすすめの商品を紹介してくれるということを表現したかったんです。通常の縦スクロールのページでは表現できないものを実現できたのがいちばんやりたかったこと、良かったことですね。
実現のために、外部やいろいろな部署の力を借りたとのお話がありましたが、今回の施策でそういうところはご苦労されたのでしょうか。
秦 そうですね。実施に至るまでに我々の部署だけではなくて、楽天市場の編成部署や開発部署、いろいろな部署と連携しながら進めてきました。そういった意味では、内部も外部も含めて関係者が多岐に渡った施策になりました。
商店街とオンライン、デジタルとアナログの融合を表現したところに今回の施策のポイントがあったように思うのですが、そのあたりはどの程度意識されていたのでしょうか。
西本 試行錯誤したところは大きく二つあると思っています。一つは、楽天市場の店舗さんの多様性をどう表現していくかということ。もう一つは、商店街というものをどうEC上で表現していくかということでした。
商店街って、いろんなお店や人が集っていて楽しいところですよね。そんな商店街を実際に歩いているような没入感というのを、一見すると対極にあるような合理的に物を購入するECで、どう再現していくか。この二つがいちばん試行錯誤した大きなポイントとなりました。
そもそもの「楽天市場」という名前自体が、さまざまな商品やサービスが取引される場所として、織田信長時代の「楽市楽座」に、明るく前向きな「楽天」というイメージをあわせることによって生まれたものです。そして、楽天グループ株式会社という社名も、この「楽天市場」に由来しています。
創業から一貫して、インターネットを強力なツールとしてイノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントすることをコンセプトとしています。ECの力を使って、昔からある商店街の魅力をどうエンパワーメントしていくかが今回の施策の根底にもあります。
それを考えていく中で、「店舗さんの顔、多様性が見えるといいよね」という意見が出てきたんですね。実際のサイトで紹介されている商品も、それぞれの店舗さんが良いと思う物を選んで撮影していただきました。「こんな感じで撮ってください」という、最低限のガイドラインはお渡ししましたが、結果としてはどれも個性あふれるものになりました。
また、同時に表示される「かけ声」も、同じくそれぞれの店舗さんに記入してもらった文言を電通さんが、店舗や商品のイメージに合うようにフォントや見せ方などのクリエイティブを通じてアレンジしています。ここもまた、店舗さんの魅力を出していくという共通の思いを持ちながら表現して、形にできた部分ではないかと思います。
右から秦 俊輔さん、西本佑介さん
なるほど! 伺って初めて気がつきましたが、そういう細やかな表現がより現実の商店街に近い仮想空間を実現されていたのですね。
秦 もう一つの大事にしたことは、「目的買いではない」ことを表現することかなと思います。もちろん商店街へ目的を持ってお買い物に行くこともありますが、一方で何となく商店街をぶらっと歩きながら、たまたまお店や店主さんに出会って、商品を買うという楽しみもありますよね。
この商店街ならではの楽しみは、楽天市場も非常に大事にしています。お買い物マラソンや楽天スーパーSALEといったイベントも、まさにそれを狙って開催しています。いろいろな店舗さんに出会ってもらって、結果的に買い回っていただくことを意識しています。今回の施策でも、商店街を歩き回るきっかけを作ることを大事にしています。
今回の「おうちで商店街」も、目的を持って入ってくる人だけではないと思います。なぜなら、参加している店舗さんを大々的に宣伝していないからです。おうちで商店街というものがあるらしいぞ、というところから入ってきてもらって、実際に没入感を楽しみながら歩いていくと、知らないお店との出会いもあるでしょうし、購入経験はあってもお店の人の顔や言葉に触れたのは初めてということもあったと思います。
そういった目的買いじゃないところで、お買い物をもっと楽しんでもらうといったところが、商店街の良さでもあり、それをオンラインでやっていく、かねてより楽天市場が意識してやっているものの、表現の仕方を変えることで新しいチャレンジになったなと思います。
多彩な出店により商店街らしさが感じられる一面も
実際に商店街に行くとなると、移動や時間をつくるというハードルもありますが、オンラインの良さは自分の好きな時間と場所からアクセスできることですよね。おうちで商店街も進めば進むほど、さまざまな店舗との出会いが待っているところは、すごく商店街の良さやぬくもりを感じられました。参加された店舗は30とのことですが、どのように選定されていったのでしょうか。
西本 ある程度の統一性と、店舗さんの多様性をどのようにバランス良く詰め込むかを大事にしました。多様性という点では、参加店舗さんにゆだねたところ、想像以上のものが返ってきました。商品・素材・写真、こういうイメージのものをくださいというと、我々では作れないようなものが続々と寄せられました。そういったところは本当にありがたかったところです。
どのように商店街を表現するかには統一性が欠かせませんが、そのために地域性と商材軸を取り入れました。やはりどこかの地域だけにしてはいけないので、北は北海道から南は沖縄までの店舗さんにお声がけするということと、商材特性です。
最初はわかりやすい食べ物にしようと思っていました。たしかに食べ物は商店街のメインですが、実際にはそれだけじゃないですよね。街にあるクリーニング屋さん、文房具屋さんやはんこ屋さんとか、そういう商店街に実際にあるような店舗さんにも、多様性の視点をもちながら、かつバランスを見ながらお声がけさせていただきました。
お声がけをした際の店舗さんの反応はどんな感じだったのでしょうか。前例のない新しいもの、というところで企画を伝えるのも難しいところがあったのかなと。
西本 たしかに、最初はよくわかってもらってなかった店舗さんもいらっしゃったと思います(笑)。
秦 (笑)。そうなんですが、こういう新しいチャレンジをやろうと思うんですよって話をした時に、「ものすごくおもしろそうですね!」と言ってくださった店舗さんはとても多かったです。店舗さんも思いを持って楽天市場に出店しているというところで、楽天の新たなチャレンジをかなりポジティブに受け止めてくださってるんだなと感じます。
人から物を買うところを大事に表現していきたいという点が、まさに共感してもらえるポイントだったなと思います。そこを理解いただいて以降は、、基本的には店舗さんの参画はスムーズに進んでいった印象があります。
新しい挑戦ではあるものの、これまでの関係値から協力が得られやすかったということなんですね。
西本 今回とくにお力添えいただいたのが、伊勢崎町商店街の川本屋さんです。リアルな商店街のシャッターにQRコードを貼っていただきました。
最初にコンセプトをお話しした時にも「すごくいいね」ととても前向きにご協力いただいたので、店舗さんの中でも楽天が新しいことに挑戦するという時に「応援する」「すごくいいと思うよ」という非常にありがたいご協力体制が築けたなというのを実感しました。
シャッターを活用したQRコード掲出の様子
(前編・了)
1月8日(水)12時に公開する後編では、さらに今回の施策を通じて実感した手応えや気づきを、今後の展望とともにお届けします。
後編はこちら
<インタビュイープロフィール>
秦 俊輔(はた・しゅんすけ):楽天グループ株式会社 アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャー。今回のプロジェクトの責任者として参画。
西本 佑介(にしもと・ゆうすけ):楽天グループ株式会社 アカウントイノベーションオフィス ビジネスクリエーション課 ヴァイスシニアマネージャー。今回のプロジェクトでは、楽天市場の責任者として参画。
・※関連リリース:楽天と電通、没入体験が楽しめるデジタル商店街「おうちで商店街 Powered by Rakuten」を「デジタルの日」に合わせて期間限定で公開
(取材・文/見野歩)
その他のインタビュー記事についてはこちら
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