【Part 1】第56回スーパーボウル広告まとめ

アメリカンフットボール(以下、アメフト)の優勝決定戦である第56回スーパーボウル(以下、スーパーボウル)が、2月13日に開催されました。スーパーボウルとは、プロアメフトリーグNFLに参加している32ものチームの内、レギュラーシーズンとプレーオフを勝ち抜いた上位2チームがその年の頂点の座を賭けて競う、規模、経済効果ともに世界最大級のスポーツイベントです。

毎年視聴率が40%を超えるスーパーボウルは、多くの企業が渾身の広告を出稿する場としても知られ、その広告枠は30秒で650万ドル(約7億5000万円)と言われています。

今回はアメリカ全土に放映されたCMのなかから、オフィシャル素材があるものをアルファベット順に10ずつ分け、合計6記事に分けてご紹介いたします。

「Mind Reader」(Amazon)

AmazonのバーチャルAIアシスタント・Alexaが、持ち主の思考を読み取ることで本来は隠しておきたい本音を暴いてしまうCM。スカーレット・ヨハンソンとコリン・ジョストのカップルが「Alexa、今日はスーパーボウルだよ」と語りかけると、自動で部屋を暗くして、ロゼワインを冷やし始めるところから動画ははじまります。

通常であればテレビの電源が付くだけのはずが、2人が求めていることを読み取るかのように先回りするAlexa。「もしかして、わたしたちの思考を読み取っている……?」と困惑した表情を浮かべながら見つめ合う2人。

その後もさまざまな場面で持ち主たちが思考を読まれてしまう様子が描かれ、友人たちを自宅に招いて食事会を開いているシーンでは「この料理最高だね、自分で作ったのかい?」と問われたスカーレットが笑顔で「そう、これはわたしの”ガミー”のレシピなの」と答えますが、すかさずAlexaが「彼女が言う”ガミー”とは、近くのスーパーのことを指しています」と本音を伝えます。スーパーで買っただけの既製品だということを隠すため、とっさに作り上げた”ガミー”という適当な単語を、Alexaの暴露によってばれてしまいました。

持ち主たちの思考を読み真実を伝えていくAlexaの勢いはここで止まることなく「ちなみに皆さんが今食べている牡蠣は、5時間ほど車の中に置きっぱなしにされていました」ということまでも暴露。これを聞いた食事会の参加者たちは、全員口の中に入っていた牡蠣を吐き出してしまいます。

実際には存在しない機能ですが、それをエンタメとして表現することで、ユーモアのある内容になっています。

「Thursday Night Football is Open」(Amazon)

映画やドラマ、スポーツなどさまざまなコンテンツを配信するAmazonの動画配信サービスAmazon Prime Videoは、スーパーボウルが終わってしまっても、シーズンオフを経たらまたNFLの全試合を観ることができるというアピールポイントを訴求したCMを公開。

「スーパーボウルが終わったら、現実世界に戻らないといけない。責任や締切が常に迫ってくる、ひどい現実世界に。次のシーズンまで何の楽しみもない……。けど、またアメフトのシーズンがはじまれば、毎週木曜日にはAmazon Prime Videoで全試合を観ることができる!」というナレーションで、年に一度の大イベントが終わってしまった後の世界に漂う悲壮感を演出。

スーパーボウルが終わってしまったとしても、次のシーズンがはじまった時には全試合をAmazon Prime Videoで楽しむことができるという希望をスーパーボウルファンに与えました。

「The Lord of the Rings: The Rings of Power」(Amazon)

Amazon Prime Videoは、9月2日に独占配信される「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの前日譚”The Rings of Power”のトレーラーも公開。世界的なヒット作となった人気シリーズの本編に至るまでの経緯を描いた作品は公開前から多くの注目を浴びているため、その期待をさらに高める目的であえてアメリカ中の人が観るスーパーボウルに合わせてトレーラーを流しました。

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの代名詞とも言える美麗なCGを駆使した壮大なストーリーの一部を事前に見せることで、ファンのみならず映画好き、ドラマ好きの層にも幅広くアプローチしました。

「Colosseum Tailgate」(Avocados From Mexico)

栄養満点で旨味もたっぷり含んだメキシコ産アボカドのPRを行うAvocados From Mexicoは、古代ローマ人がアボカドの存在を知っていたらきっともっと平和な文化を築けていただろうという空想を描いたCMを公開しました。

古代ローマ人がもしアボカドのおいしさを知っていたら、きっと彼らは毎日パーティーを開いていたはずだということをストレートに描きつつ、アボカドと相性が良いシーザーサラダと同じ名前を持つ当時の執政官・カエサルでさえもその魅力に虜になっていたであろうという様子を表現しています。

「Zeus & Hera」(BMW USA)

アメリカでBMW車のマーケティングと販売を行うBMW USAは、自社が展開する電気自動車(以下EV)の進化をアピールしたCMを公開しました。アーノルド・シュワルツェネッガー扮するギリシャ神話の最高神ゼウスが、神として現役を引退した後も多くの人間から助けを求められる様子を描いています。

雷を司る最高神ゼウスが、現役引退とともにオリンポスを去り、カリフォルニアに隠居するところから動画ははじまります。平和な日々が続くかと思っていた矢先に、隣人から電動工具を直してくれないかと頼まれます。電気を自由自在に操れるゼウスの力は日常生活において利用価値が高く、その後も多くの一般市民から助けを求められてしまいます。

引退したはずがなおも人助けから逃げることができずにいるゼウスに息抜きをしてもらうため、妻のヘラはBMWのEVを購入。電気を使った最新の発明品に気分を良くしたゼウスが満面の笑みを浮かべながら走り去っていくシーンで動画は幕を下ろします。

「Idris Says Things」(Booking.com)

大手宿泊予約サービスBooking.comは、自らのサービス名がシンプルで味気ない理由は、得意領域である「宿を予約する」ということと真摯に向き合っているからだというメッセージを込めたCMを公開しています。

イギリス出身の人気俳優イドリス・エルバが「わたしたちBooking.comは、セクシーさもなければ、斬新さやかっこよさを持ち合わせているわけでもない。だって、自分たちの名前をBooking.comにするくらいだぜ?」と語るところから動画ははじまります。

「でもその代わり、最高な旅行先を予約するのだけは得意なんだ。本当に、めちゃくちゃ得意なんだ。名前をつけるのは下手だけどね」という皮肉を自らに向けて言うCMは、Booking.comの愚直なまでの旅行と向き合うスタンスを明示しつつ、思わず笑顔になってしまうユーモアを散りばめることで印象に残るよう工夫されています。

「Land of Loud Flavors」(Bud Light)

総合アルコールブランドBud Lightは、フルーツフレーバーをベースにしたアルコール飲料ハードセルツァー(セルツァー)のCMを公開しました。元来薄い味付けがされがちなセルツァーにおいて、Bud Lightであれば強烈なフルーツの香りを楽しむことができるということをアピールしています。

ハウスパーティーでBud Lightのセルツァーを手に取った3人の若者を映すところから動画ははじまります。いざ飲もうとした瞬間、冷蔵庫の中から突如として現れた謎の2人組にセルツァーが入ったバケツごと奪われてしまいます。後を追いかけて冷蔵庫の中に飛び込むと、そこは”Land of Loud Flavors(強烈な味と香りの国)”というメルヘンチックな世界でした。

盗人たちを追いかけていると、Land of Loud Flavorsの国王らしき人物の元へと辿り着きます。その正体は世界的なレストラン経営者でもあり、テレビパーソナリティーとしても活躍する大物シェフのガイ・フィエリ。Bud Lightのセルツァーを一口飲むとそのあまりのおいしさに驚きの表情を浮かべる国王。すぐさま国中に放送を流し「Bud Lightこそが真の強烈な味を体現している!」と高らかに宣言します。

「Zero in the Way of Possibility」(Bud Light)

Bud Lightは、新しく発売した糖質ゼロのビール飲料Bud Light NEXTのCMも公開。”Zero in the Way of Possibility(できないことなんてない)”というタイトルが付けられたCMは、あらゆる状況から物理的にはあり得ない方法で脱出する若者たちの様子を最新のCG技術を駆使しながら表現しています。

退屈なホームパーティーから抜け出すために、壁を突き破って野原へと駆け出す若者たちや、進展の見込めないデートから逃げるために地割れを起こし、地中の奥底へと飛び込む女性、無人のコンサートホールで練習をしていたかと思いきや突然バーチャル世界へと移動し、美しい夜景の中でライブを行う女性の姿が描かれています。

「糖質がゼロである」というメッセージを「不可能なことはない」という広告的表現に転換することでさまざまな架空の設定を表現することができており、カットの移り変わりやCGの使い方に工夫を加えることで映像作品としても見応えのある内容になっています。

「A Clydesdale’s Journey」(Budweiser)

アメリカを代表するビールブランドBudweiserは、あらゆる領域の不可能に日々挑戦する人々の背中を押すべく、一頭の馬が脚を怪我をしてから立ち直るまでを描いたCMを公開しました。

荒野を疾走する一頭の馬を映すところからはじまる動画で、爽快感溢れる映像が続くかと思いきや、少し高めの柵を飛び越えるためにジャンプした馬は着地に失敗し、その場で脚に大怪我を負ってしまいます。

すべての様子を見ていた犬は心配した様子で駆け寄り、オーナーらしき男性は落胆した表情を浮かべます。馬にとって脚の怪我とは、命に関わるケースも多く、治療が成功しない限りもう二度と立ち上がることができなくなってしまう危険性があるためです。

一時は再起不能かと思われた馬ですが、見事怪我に打ち勝ちまた荒野を走り回ることができるように。”IN THE HOME OF THE BRAVE, DOWN NEVER MEANS OUT(勇気ある者たちにとって、ダウンするということは諦めることではない)”というメッセージとともに幕を下ろす動画からは、スーパーボウルに相応しいメッセージングで試合中の両チームの選手たちを鼓舞する姿勢も伺えます。

「Sit Down Dinner」(Caesars Sportsbook)

合法スポーツ賭博やカジノを運営し、スーパーボウルの公式賭博パートナーでもあるCaesars Sportsbookは、アメフト界を代表する往年の選手たちが1つの食卓を囲み語り合う様子を描いたCMを公開しました。

同ブランドのマスコットも担いつつ、CMでは主人公を演じるCaesarが食卓を見渡しながら会話を繰り広げる様子を映すところから動画ははじまります。料理を褒めながらポツポツと会話に参加していく元アメフト選手たち。一見穏やかな雰囲気が漂っているように見えますが、伝説的な元クオーターバックのペイトン・マニングがジョークを言うと「うちでジョークを言っていいのは俺だけだ」と静止されてしまいます。

元々はライバル同士だったアメフト選手たちが1つの食卓を囲むという少し気まずい状況であっても、スーパーボウルの賭博であれば自由に参加できるというサービスの狙いを描いています。

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