カンヌライオンズ2021「Health」グランプリ受賞作品まとめ

6月21日〜25日にオンラインにて開催された「Cannes Lions 2021」。健康や医療を中心とした社会課題の解決に貢献した作品に贈られる「Health」部門において、個々人の健康の向上を表現した作品を評価する「Health & Wellness Lions」、NPOの事例の中から社会課題の解決を図った作品を評価する「Lions Health and United Nations Foundation Grand Prix for Good」、規制が厳しい医療・医薬品業界の中で卓越したクリエイティビティを発揮した作品を評価する「Pharma Lions」の3つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Health & Wellness Lions

「#STEALOURSTAFF」(Beco)

昨今90%もの企業がダイバーシティを掲げるなかで、障害者雇用に積極的な企業はわずか4%ほどにとどまっているなか、イギリスの石鹸ブランドBecoは、従業員の約80%がなにかしらの障害と戦う人たちで構成されているそうです。そこで、彼らがこの社会課題に真っ向から挑んだのが「#StealOurStaff(わたしたちの従業員を盗んでみろ)」。

自社の従業員の顔写真と職務経歴書を実際に販売する商品パッケージにプリントすることで、彼らの強みを訴求。さらに、大手メーカーに対して名指しで従業員の引き抜きを促すメッセージが書かれたOOHを主要都市に展開しました。

「ほら、採用しちゃいなよ、Nike。Just do it」や「Carlsbergの皆さんへ。(おそらく)世界最高レベルの従業員を引き抜いてごらん」「Gilletteのみなさん、最高の部下を引き抜きませんか?」というキャッチコピーが書かれたOOHは、ダイバーシティをうたう企業であっても対応が遅れがちな障害者雇用の積極的な促進を狙っています。

「#WOMBSTORIES」(Bodyform)

「Craft」部門の「Film Craft」でもグランプリを獲ったスウェーデン発・女性向け衛生ブランドLibresse。イギリスでのブランド名Bodyformで展開された同一キャンペーン「#WOMBSTORIES」が、「Health & Wellness」でもグランプリに選ばれました。日々女性が直面する苦難を描いた作品は多くの人々の共感を呼び、公開後に1億回も再生された動画の影響もあり市場シェアは8.1%も増加しました。

Lions Health and United Nations Foundation Grand Prix for Good

「ADDRESSPOLLUTION.ORG」(Central Office of Public Interest)

イギリスのクリエイティブ業界におけるNPO団体・Central Office of Public Interestが実施した、同国主要都市における建物がどれだけ空気を汚染しているかを可視化したキャンペーン「AddressPollution.org」。King’s College Londonから提供されたデータをもとに、住所ごとにどれくらい空気を汚染しているかと、それがどのような健康被害を引き起こすかを測定し、基準値を上回った建物に対して危険性をプロジェクションマッピングで投影しました。

ヨーロッパの中でも住居コストが高いと言われているロンドン市内では、ChelseaやTower Hamletsをはじめとした多くの高級住宅街で空気汚染レベルが高い建物が見つかり、不動産価値そのものに影響を及ぼす可能性すら指摘されはじめたため、このようなキャンペーンが生まれたそうです。

Pharma Lions

「SICK BEATS」(Woojer)

音響の振動を全身に伝えることで映画やゲームの没入感を上げるウェアラブルデバイスブランド・Woojerは、自社製品に使われている技術を嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)の症状緩和に活用するキャンペーン「Sick Beats」を公開しました。

嚢胞性線維症とは、特定の分泌腺が異常な分泌物を生成することで肺や消化管に損傷を与える遺伝性の病気ですが、この「Sick Beats」は、肺に溜まってしまった分泌液を音楽の振動を利用して排出を促す効果があるとのことです。

直接的な治療にはつながらなくても、音楽を聴いているだけで症状の緩和が可能になるという技術的な着眼点と、クリエイティブとしての親和性が評価されたことでグランプリを獲得したそうです。

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