タクシーを使った世界のプロモーション8選+α
Case: Cab Promotions
世界各地の街中を日夜走るタクシー。今や多くの国々で各種公共交通機関と並び、「庶民の足」として利用されています。
今回はそんなタクシーを活用したユニークなプロモーション事例をまとめてご紹介します。「移動手段」としてのタクシーが、“広告として機能する”一風変わったケースの数々をご覧ください。
1.俳優がタクシージャック!セルビアの劇場が仕掛けたゲリラプロモーション
[企業名:Yugoslav Drama Theater]
セルビア共和国の首都ベオグラードにある「ユーゴスラビア・ドラマ・シアター」という大劇場が実施した、タクシーを活用したユニークな集客プロモーション。
何も知らない乗客を乗せてタクシーが目的地に向かって走り出すと同時に、運転手はなんともドラマチックなストーリーを語り始めます。仕方なく耳を傾けていた乗客も、次第にストーリーに引き込まれていき、ついつい身を乗り出したり、質問をしたりと、すっかり運転手の話に夢中になってしまいます。
それもそのはず、運転手はただの運転手ではなく、ユーゴスラビア・ドラマ・シアターで演じるプロの俳優だったのです。目的地に到着すると、種明かし。運転手が語ったストーリーはシェークスピアの「オセロ」の一部であったことが明かされ、『続きは劇場で!』と劇場に誘うというドッキリプロモーションでした。
乗車賃は免除された他、劇場への招待券をプレゼントされた本企画では、「オセロ」を語ったドライバーの他にも、「罪と罰」を聞かせるドライバーと「ベニスの商人」を独演するドライバーバージョンもあったそうです。
2.“ウグイス嬢”を務めればタクシー代は無料に!選挙カーならぬ“宣伝タクシー”が登場
Newcastle “Cabvertising” from Co.MISSION on Vimeo.
[企業名:Newcastle]
英国の正統派エールブランド・Newcastleが、新商品“Cabbie”の発売にあたり、夜のロサンゼルスで一風変わったプロモーションを仕掛けました。
用意したのは、新商品“Cabbie”のブランドロゴにも採用されている一台のタクシー。屋根に巨大スピーカーが取り付けられていることを除けば、れっきとした英国のブラックキャブです。通常のタクシー同様、夜のLA市内を走り、飲酒後の帰宅客を拾いますが、“運賃の支払い方法”が異なります。
乗車中、後部座席にあるマイクを使って絶え間なく新商品の宣伝をすると、タクシー代は“無料”に、宣伝を拒めば即刻“乗車拒否”されるという仕掛けでした。
この試みにほろ酔い気分の乗客は皆ノリノリ。積極的に宣伝文句を読み上げたり、宣伝ソングを歌ったりして、巨大スピーカーから流れ出す大きな声は、夜の街で大きな注目を集めたそうです。
“飲酒後にタクシーに乗った乗客の声で新しいビールを宣伝してもらおう”というプロモーション。「CABVERTISING」と名付けられた今回の企画には67件の苦情が寄せられたそうですが、夜のLAに“Cabbie”の名が広く知れ渡ったことだけは間違いありませんね!?
3.楽しく運動しよう!ペダルを漕げば漕ぐほど運賃が割引になるタクシー
[企業名:Coca-Cola]
統計によるとチリ人のおよそ70%の人が、一日をほとんど座った状態で過ごしているといいます。移動も車やタクシーが主な手段。これでは健康に良いわけがありません。そんなチリ人の習慣に着目したコカ・コーラは、人々にもっと運動をしてもらうべく、「Taxi of Movement」と題したキャンペーンを打ち出しました。
道路沿いでタクシーを呼び止めた男性。止まったタクシーの内部を見て、少し驚いている様子です。それもそのはず、乗り込んだタクシーには、なぜか後部座席に自転車のペダルのような装置が付いています。ドライバーのおじさんが乗客にペダルを漕ぐように促しています。
お客さんは始めこそ戸惑っていましたが、皆さんノリノリで漕いでいます。というのも、“ペダルを漕げば漕ぐほどタクシーの運賃が割引される”という仕組みになっているからです。様々な企画を通じて“Happinessのシェア”を体現しているコカ・コーラですが、当施策は“健康=幸せ”という、今までとは少し違った切り口でのキャンペーンでした。
4.スペイン自動車メーカー、『ブレーキのたびに運賃が下がるタクシー』でテクノロジーを訴求
[企業名:SEAT]
スペイン自動車メーカー「セアト」による、同社の車体に備えられている最先端テクノロジーである『ブレーキング時のエネルギーを回収・蓄積して再利用するシステム』を訴求するための一風変わったプロモーション。
「セアト」に一部細工をし、タクシーに改造して、デュッセルドルフの街中を一般のお客さんを乗せて走行します。このタクシー、何がユニークかというと“運賃メーターの金額がブレーキの度に下がる”のです。
タクシーの運賃は走行するほど上がっていくものだと信じ込んでいる乗客は、この不可思議な料金メーターに様々な反応を浮かべます。ただ困惑する人、メーターが故障しているんじゃないかと尋ねる人、「(ドライバーに)これじゃ、働く意味ないんじゃないの!」と言っちゃう人、ドッキリカメラがどこかに仕込まれてるんじゃないかと疑心暗鬼になる人などなど。
目的地に着いて、『運賃が2ユーロ(にまで下がった)』と聞いたお客さんは驚きながらもラッキーだったと答える人が続出したようです。“ブレーキするたびにエネルギーを再利用できる”テクノロジーを示唆するために、“ブレーキの度に運賃が下がるサプライジングなタクシーを走行させる”という主旨の企画。ブレーキでエネルギーが増えたので、その分運賃減らしますよ、というニュアンスでしょうか。
少し難解なテクノロジーをターゲットに理解してもらうために、“感情に訴えて腹落ちさせよう”という試みですね。
5.コンドームブランドのバレンタインキャンペーン、『リア充限定の無料タクシー』がマンハッタンを疾走
[企業名:Trojan]
バレンタインデーに絡めてコンドームブランド・Trojanがニューヨークで実施したタクシーを使ったキャンペーン。性感染症の予防、“Safe Sex”を市民に呼びかけることを狙いとした施策で、タクシーの屋根に「Trojanの超巨大なコンドーム」を乗せた状態でマンハッタンを走行し、カップルと旅行者は無料で利用できるという企画。
カップルがこのタクシーに乗車すると、乗車中に“Safe Sex”に関するクイズが出題され、クイズの正解率が高かった乗客にはコンドーム1年分が贈呈されるという賞品も用意されています。タクシーの屋根に巨大なコンドームが乗っかている様は圧巻ですね。
6.“世界最安値のタクシー乗り場”とTwitterを連動させた電気自動車のPR
[企業名:Nissan]
日産の電気自動車LEAFがロンドン市内で実施したアンビエントプロモーション。電気自動車LEAFの通常売り出している“エコロジーでクール”という側面ではなく、経済面でのメリット(燃費効率の良さ)を訴求するためのアイディアです。
事実、LEAFを1台満タンにするのにかかる料金は2£未満で、一般的なガソリン自動車の6分の1の燃費性能だと豪語しています。同社はそんな燃費効率の良さを訴求するために、ロンドン市内に『世界で一番安いタクシー乗り場』を設置しました。
これは通常のタクシーの6分の1の料金で市民が利用できるサービスで、市民は『#6xcheaper』というハッシュタグをつけて、行き先をTwitterでツイートするだけでこのタクシーを利用することができるという仕掛け。
電気自動車にありがちなエコロジーや新しさだけではなびかないけど、「安さ・経済性」には反応する層にフォーカスしたユニークなプロモーションです。
7.ロンドンタクシーにタダで乗れる!? ハイネケンがプロデュースする一味違った夜遊びツアー
[企業名:Heineken]
大手ビールブランドのハイネケンがプロデュースする、ちょっとエキサイティングなロンドンの夜遊び体験プロジェクト。
ユーザーはハイネケンがリリースしたアプリをダウンロードし、ロンドン市内のバーに行きます。アプリを通じてビールをオーダーすると、抽選でハイネケンがプロデュースする“ロンドンタクシーに乗ってホットなクラブやバーに次々と連れて行ってもらえる権利”が当たるというものです。
幸運にも当選した人は、ロンドンタクシーをハイネケンのキャンペーン用に改造した「Star Cab」に乘って、ハイネケンがおススメする夜遊びスポットツアーをエンジョイすることができるというものでした。
これはハイネケンが打ち出している「Open Your City」というキャンペーンの一環で、人々に『いつも行く決まったお店ではなく、今まで知らなかった新しい場所に行くことで、これまでに経験したことのないようなスペシャルな体験をしてもらおう』という想いが込められています。
8.「“お肉”が2倍になるから、街の“楽しい”も2倍にしよう」イタズラのようなマックのアンビエント広告
[企業名:Mcdonald’s]
インドで実施されたマクドナルドのアンビエント広告。彼らが「通常と同一価格で“ハンバーガーのパテ(肉)を2枚に”」というキャンペーンを告知するために実施したアイデアです。
キャンペーンのバズを“ダブル”にするためのアイデア。それは…街中のものをダブルにするということでした。例えばタクシーを二段重ねに。バイクタクシーも二段重ねに。
おまけに告知コピーを記載した“二人乗り”の自転車も走らせたのです。街に様々な“ダブル”をしかけることで、「肉がダブルになること」を告知するというマクドナルドらしい、楽しさとイタズラ心のあるアンビエント広告でした。
(おまけ)ビッグデータの粋な活用例! タクシー会社の膨大なデータが生み出す“リアルな観光情報”
[企業名:Taxi Stockholm]
スウェーデン・ストックホルムで営業するタクシー会社Taxi Stockholmは、同社のタクシーが街中を年間800万回も走行するという利点を活かして斬新な試みを実施しています。
GPSによって収集されたデータに基づき、ストックホルム市民が行き先に指定した場所を地図上に表示。人々が降車した回数に合わせてエリアを色分けし、地元の人がよく行く場所が一目で分かるようにしたのです。
さらに『過去1年間のデータ/直近1ヶ月のデータ』、『平日/週末』、『昼間/夜間』、と表示を変えることができるので、『直近1ヶ月で週末の夜、人々がよく訪れた人気のエリア』といった具合に、的を絞ったリアルな情報を得ることができます。
その他にも『上流階級』や『トレンドに敏感な層』、『中間層』といった区分けでもエリアを表示することができるのもユニークな点。気になるエリアがあれば拡大し、その近辺にあるお店やレストランの情報を知ることができるという仕組みになっていて、非常によく作り込まれています。
“地元に精通したタクシー会社”という最大の強みを活かした施策。今流行のビッグデータを利用者目線に立ってサービスへと昇華させた素敵な取組みだと思います。
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