「新しい概念がつくる市場を健全に育てたい」“DSPの雄”フリークアウトのBtoB広報戦略

Case: インターネット広告の効果を最大化するDSP「FreakOut」のPR活動

BtoB向けの商材を扱う企業なら、マーケティング担当者や情報システム部門の責任者、人事採用の決裁権者など、ターゲットとなる相手は明確です。業界専門誌など、特定のメディアだけを重要視して、広報・広告活動に取り組んでいる企業も多いのではないでしょうか。

ところが、インターネット広告の効果を最大化するDSP「FreakOut」を手掛けるマーケティングテクノロジー企業の株式会社フリークアウトは、ターゲットになるマーケティング担当者だけでなく、より幅広い層を狙った広報活動を展開。ビジネス誌などにも注目してもらえるように斬新なデザインのオフィスに移転するなど、フリークアウトのことを取り上げる記事が次々に誌面を飾っています。

ただ、マーケティング担当者以外のところで知名度を上げても直接的に業績向上に結び付くわけではありません。それでも同社がより広い層を意識して広報活動を重視するのはなぜか、そしてどんな点に力を入れて広報活動を展開しているのか、同社取締役COOの佐藤裕介氏にお話を伺いました。

新しい概念、新しい市場を健全に成長させるため、正確な情報発信を重視

――BtoB企業の場合、自社事業と関係のある専門媒体とだけ関係を築ければいい、と広報活動にあまり注力しないケースもあります。貴社はPR TIMESを使って幅広い層に向けてプレスリリースを配信していますが、そのような戦略を採る理由を教えてください。

取締役COO 佐藤裕介氏

われわれは、これまで市場になかった新しい概念のものをテクノロジーによって生み出す事業を手掛けています。当社のように新しい概念のものを市場に持ち込む場合、まずは「この商品を導入することで、自社の課題を解決できるかもしれない」と、マーケティング担当者だけでなく企業幹部や関連部署の方々にも、理解していただく必要があります。

そのために大切なのは、新しい概念について正確に伝えることです。例えば「DSP」という言葉の定義や、DSPの持つ機能が実現することについて、広報活動を通じてわれわれの考えを伝えていく必要があります。

というのも、広告関連の業界では新しい概念のものが登場すると、すぐに多数の企業が参入してきます。参入企業がそれぞれの解釈で新しい概念について説明するようになると、まずは興味を持ってくれる企業を増やそうと「こんなことができます」「あんなこともできます」と誇大な表現や誤解を招く表現などを使ってでも新しい概念をアピールしようと努めます。そんな状態が続くと、どれが真実か分からないほど、ノイズになる情報が氾濫してしまうのです。

ただでさえ、テクノロジーは高度で複雑なものになり、お客様が中身まで詳細に理解することが難しくなってきています。理解できない上に、正確でない情報があふれていては、不信感を抱くお客様が増えてきてもおかしくありません。最終的には、市場が健全に成長しなくなる恐れだってあります。

そこで当社は創業間もない時期から、正確な情報を発信していこうと広報活動に力を入れてきました。現在もプレスリリースを配信する際は、テクノロジーのことも分かる代表取締役CEOの本田と私が必ず目を通して、「正確な情報になっているか」とチェックするようにしています。

――「正確な情報を発信していく」取り組みを続けたことで、どのような成果を得られたと感じていますか?

われわれが飾らない言葉で、正確な情報を届けようとしたことで、当社の顧客かどうか、DSPの導入を検討しているか否かに関係なく、「フリークアウトの言っていることは信頼できそうだから、広告関連のテクノロジーを勉強するため、話を1度聞いてみようか」と考えていただける企業が増えているように感じます。

そんな理由から当社主催のセミナーに参加いただいて、その後に「もっと詳しく話を聞いて勉強したいから、飲みに行こうよ」と誘われることも増えましたね(笑)。

遠回りはしたけれども、正確な情報発信を積み重ねてきたことで、信頼を得られるようになったと思います。「DSPとしてFreakOutを検討したい」と問い合わせいただける件数も着実に増えてきましたね。

取材対応時から採用への影響を意識。エンジニア視点でのメッセージを心掛ける

――2014年1月にオフィス移転されました。「すごくオシャレなオフィスだ」と評判で、ビジネス系のメディアや個人ブログなどでも取り上げられています。

オフィス移転については、社内向けと社外向けとでそれぞれ狙いがあります。

社外向けで意識したのは、主に当社への転職を検討してくださっている方々です。彼らに「目立ちにくいBtoB企業ではあるけれど、この業界を変えていく新しい概念の商品を生み出していくんだ」というわれわれのメッセージを伝えたいと考え、オフィスのデザインを考えました。その狙いどおり、「とにかく堅実そうな印象を持っていたけど、オフィスに来てみてイメージが変わりました」と仰っていただけるようになってきました。

また、オフィスのことを糸口にして、マーケティング関連の専門誌だけでなく、ビジネス誌にも取り上げていただけるようになりました。われわれの仲間になってほしい人材は、広告業界以外のところにもたくさんいます。そうした人材に当社のことを知っていただく上で、斬新なオフィスデザインにしたことは役に立っていますね。

――広報時に、採用を意識して気を配っていることもあるのでしょうか。

ずっと意識しているのは、「営業部主体の会社ではなく、エンジニア主体の会社だ」というメッセージを発信することです。メディア取材を受けるときは、基本的に本田か私が対応し、どちらもエンジニアの視点から語るように心掛けています。

われわれのような事業をしていると、優秀なエンジニアを採用できるかどうかで競争力が大きく変わってきます。優秀なエンジニアほど、エンジニア主体の会社でないと「この会社で働きたい」と思ってくれません。

特に「広告業界=営業部主体」という先入観を持っているエンジニアもまだ多いです。エンジニアから見て、あまりいい印象を持ってもらえていませんから、そうした先入観を覆すためにも、かなり意識してエンジニア視点で語るようにしています。

広報と人事をオーバーラップ。企業のカルチャーを1つの部署でつくっていく

――市場を健全に育てるための正確なメッセージ発信、採用を目的としたエンジニア視点での情報発信と、貴社にとって広報活動は企業の根幹部分に関わる重要な業務のように感じます。

そうですね。当社には企業のカルチャーをつくっていく「カルチャー・ディベロップメント」という部署があり、広報業務はそちらの部署で担当しています。

広報業務や社内制度設計・人材採用といった人事業務は、企業のカルチャーを形作って外部に向けて発信していく仕事です。その意味で、われわれの中では、広報と人事の仕事を明確に分けてはいません。企業のカルチャーについて一番しっかりと考えているカルチャー・ディベロップメントの社員たちが、人事制度の設計も広報活動も、業務範囲をオーバーラップさせながら取り組んでいます。

『見込み顧客をつかまえるため、PR TIMESを使って“網”を張り巡らせる』
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