開発者自らファンと交流し、密なコミュニケーションを目指す「INFOBAR xv」の販促戦略に迫る

Case: KDDI『INFOBAR xv』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、9月4日より予約が開始された「INFOBAR xv(エックスブイ)」のプロモーション戦略について取り上げます。国内外の著名なプロダクトデザイナーと手を組み、数々の“デザインケータイ”を作り上げてきたKDDIの「au Design project」から今年秋に発売予定。INFOBAR発売15周年を記念し、バータイプのフィーチャーフォンとして発売されます。INFOBARは、「NISHIKIGOI」 に代表されるユニークなカラーリングとデザインによって、2003年の初代INFOBAR発売から15年経った今でも根強い人気のあるデザインケータイです。

クラウドファンディングやTwitterでの情報発信など、ファンとのコミュニケーションを重要視したプロモーションの取り組みについてKDDI株式会社 商品企画本部 砂原哲さん、美田惇平さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか
開発をしている自分たちの手ですべての企画を仕掛けていく

―「INFOBAR xv」のプロモーションとして、ユーザーとのどのようなコミュニケーションを目指していますか?

砂原:INFOBARは2003年の10月に発売し、今年で15周年を迎えます。INFOBAR の15周年記念モデルとして、ファンの人たちと一緒に企画を作り上げていきたいという思いから「INFOBAR xv」プロジェクトは始まりました。そのため、「INFOBAR xv」については、通常のモデルよりも早い発売の約半年前の7月12日に発表し、発売までの期間をファンと一緒に盛り上げていくことを目指しています。
外部の広告代理店などに依頼することなく、自分たちの手で企画を立ち上げ、開発をしている僕たち自身がファンの方々と直接コミュニケーションを取る。僕たちがファンの代表みたいなポジションで仕掛けていくことを大切にしています。

―発表後、クラウドファンディングも立ち上げたそうですね。

砂原:応援していただく場として、3,240円から支援できるクラウドファンディングを始めました。映画のエンドロールに支援者の名前を載せるように、プロダクトの中に支援者の名前をクレジットします。隠しコマンドによってクレジットが表示される仕組みです。リターンとしてオリジナルピンバッジ、「INFOBAR xv」専用ケースなども用意しました。

―どれくらいの方々に支援いただいたのでしょうか?

美田:全部で3,539人の方に支援いただきました。お金を集めるのが目的ではなく、できるだけたくさんの方に参加してもらうのが目的でした。

―他にはどんな施策を行いましたか。

砂原:「au Design project」15周年を記念して立ち上げたスペシャルサイトでは、開発の情報を開示し、開発状況を伝える記事を出しています。先日は塗装についての記事を出しました。普通は公開しないような内容でも、今回のプロジェクトではファンが喜ぶものであれば表に出しています。

美田:今回のプロジェクトでは、従来のマスコミュニケーションのように一方的にお伝えして、ファンを放置するようなことはしたくないと思い、その都度、見せられるものは見せていき、きめ細やかなコミュニケーションを目指しています。

熱狂的なファンが集結するINFOBARファンミーティング

―Twitterでも積極的に情報発信をしていますね。

美田:お知らせだけではなく、お客さんとのコミュニケーションの場にしたいと思い、僕が「au Design project」のアカウント(@adp_au )を運営しています。関連ワードで検索をしてすべて目を通し、いいねやリツイートをしています。「支援しましたよ」「予約しましたよ」というメンションにはお礼を伝えたり、質問にはできる限り丁寧に答えています。お客さんのことをしっかり見ていると伝えたい、少しでも興味を持ってくれている人にはファンの仲間に入ってもらいたいという思いでコミュニケーションを取っています。

―web上だけではなく、オフラインでのイベントなどもあるのでしょうか。

美田:「INFOBAR xv」の展示に合わせて新宿、京都、名古屋でファンミーティングを行いました。熱いファンの方々が集まり、とても盛り上がりました。

―どんな方が集まったのですか?

砂原:初代INFOBARから愛着を持ってくれている熱狂的なファンの方々です。初代発売のときに中学生や高校生だった20代後半から30代前半の方々、当時20代で、現在30代後半から40代の方々などが集まってくれました。
中には、壊れてもネットオークションなどで探し出して10年以上前の機種を使い続けている方、INFOBARのぬいぐるみを作ってくれた方、INFOBARカラーの衣装を着た女性3人組もいました。プロダクトとしてだけでなく、コンテンツとしても楽しんでくれているのを感じました。

美田:ファンミーティングのために大分県からわざわざ東京に来てくださった方、INFOBARのコレクターの方もいました。初めてファンミーティングを開催したことで、熱狂的なファンの存在を再確認できました。

砂原:ファンの方にとっても、自分と同じ気持ちの人たちがいるんだと確認できる場になったと思います。

―ファンミーティングではどんなことをしたのですか?

美田:開発の裏話をお伝えしたり、写真撮影NGの開発時の写真やスケッチなどをお見せしたりしました。参加者のみなさんが歴代のINFOBARを持ってきていたので、機種を見ながら思い出を語ったりもしました。
ファンミーティングが終わった後、Twitterで検索をして、ファン同士で相互フォローをする動きもあるなど、想像以上に熱いイベントとなりました。

ファンの声を拾い上げ、「INFOBAR xv」プロジェクトがスタート

―INFOBARはファンの方々の強い思いに支えられてきたんですね。

砂原:昨年7月に開催した展覧会「ケータイの形態学展」では、約4,000人のお客さんにお越しいただき、その後実施したクラウドファンディング「au×TRANSFORMERS PROJECT」でも、3,000人以上の方に支援していただきました。他にも、「au Design project」の15周年記念サイトのコメントページで「新しいINFOBARを出して欲しい」というような応援メッセージをたくさんいただきました。

美田:昨年の3月には、「auおもいでケータイグランプリ」を開催し、auの携帯の中で思い出に残っている携帯についてユーザーに投票をしてもらいました。総投票数75,000という中、1位に初代INFOBAR、2位にINFOBAR2という支持をいただきました。
15周年記念サイトでも、「INFOBARをガラケーで復活させてください」という声がたくさん寄せられ、その声を受け止めて、展覧会が終わった去年の秋頃から、初代INFOBARを現代に復活させたらどうなるかという検討からプロジェクトがスタートしました。

砂原:通常、端末の開発や宣伝広告はメーカーが行うのですが、「au Design project」については、au主導で製品化を進める特殊なスタイルを取っています。スマートフォン時代になってからは、グローバルで展開する機種が増えてきたため、生産台数の少ないデザインケータイの製品化は、なかなか難しい状況にあります。
そういった中、プロジェクトを進めるためには、ファンの方々に味方になってもらう必要がありました。大切なのは、「ファンの方々に向けて作る」という意識を社内外に知らしめることでした。「ケータイの形態学展」や「auおもいでケータイグランプリ」によって、こんなにファンの方がいるんだと社内へ伝えることができ、プロジェクトが動き出したんです。

―今後の展開について教えてください。

砂原:10月31日から11月12日まで「新・ケータイ INFOBAR展」を東京ミッドタウンで実施します。発売前の「INFOBAR xv」の実機に触れられるほか、歴代のINFOBARの展示も予定しています。
今は「INFOBAR xv」の開発で手一杯ですが、発売後も引き続きお客さんの声に応えていきたいと思っています。

(写真左から)
KDDI株式会社 商品企画本部 砂原哲さん、美田惇平さん

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